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いつかの先に逢えるまで ~神子様との同居は期間限定?もう会えなくなるなんてイヤなんですけど!?【完結済(全104話)】  作者: 静林


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直紀 目覚め 8

 仕事関係者やクライアントには、直紀が事故で大怪我を負って入院しているとは伝えたが、それがあのニュースになった事故だとは言ってないし、先方もまさか「あれ」に巻き込まれたとは想像してないらしい。それに、長袖シャツと首にスカーフを巻けば、詳細を話す必要がないから救われる。

 あの事故の被害者だと知られれば、根掘り葉掘り聞かれるだろう。その都度、思い出さなければいけないのは苦痛である。

 幸い、橘商事の息子が犠牲になったことは世間にも知られたが、同じく犠牲になった環でさえ新聞記事に「東条環(30)」と載っただけであった。

 仕事関係で目敏くそれに気付いた人も何人かいたが、直紀の気持ちを察してくれる人たちで助かった。


 ERABLE HOTEL で、ブライダル衣装のデザイナーとホテルのイベント責任者との打ち合わせは、実際に会場となるホールを歩いて、来場者の動線を考えながら照明の位置と展示方法、ショーケースやトルソーの配置場所を確認するという最終的なものであった。それらは事故前の打ち合わせで殆ど煮詰まっていたため、今回の変更ポイントは衣装デザイナーが、空調と照明の角度を数点述べるに留まった。

 その後、ロビーラウンジでホテルのイベント責任者からの「宝飾ケースの大きさと台数、首トルソー、リングスタンドと卓上ミラーは『TO-J』さんからいただいた注文書に従って、2日前にこちらに届くよう手配済みです」との言葉に、「それで結構です」と頷く。


 ふと、隣のテーブルから視線を感じた。「なんだろう」と横を見れば、左脚にギプスを巻いた若い女性が座ってこっちを見ている。そして松葉杖をラウンジチェアにもたれかけて置いていた。

 花柄のライトグレーのオープンショルダーのワンピースに肩までの軽くウェーブした黒髪。顔を見ると薄化粧をして、ぽてっとした唇にはピンクのリップが塗られている。


ーかわいいお嬢さんだな。


 それが第1印象だった。


 ところが彼女は訝し気な眼差しで直紀を見続けているのだ。

 「なぜだろう」と考える前に、自分の左眼から一筋涙が頬を伝っていることに気付いた。そして、なぜか彼女から目を逸らすことができないのだ。

 互いに視線を合わせていたのは数秒だろう。

 すぐに直紀との視線を断ち切るように俯いてコーヒーを飲みほした女性は、松葉杖を手に持って、向かいに座っている男性に「お兄ちゃん、もう帰ろう」と急かすように促した。

 涙を流しながら直紀に見られたことを不快に感じたのだろう。不審者から逃れるように急いでそこから立ち去ろうとする。

 ところが運悪く、松葉杖の先がラウンジチェアの脚に引っ掛かり、女性がバランスを崩してしまった。


「危ない!」


 咄嗟に直紀は両手を伸ばして女性の腕を掴むと……。


『エッ!センゲツ ノ オトコミコ カ?』

『センゲツ ノ オンナミコ サマ?』


 直紀と女性の頭の中で、ほぼ同時に別の誰かの声が響いた。

 直紀に腕を掴まれたまま、その女性が目を見開いて彼の顔を見る。

 そして直紀も、女性の顔を凝視したまま固まった。

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