箸休め ~桜小路恭介と暖炉
「今年も桜小路先生宅から煙突掃除の依頼がそろそろ来る頃です。先生宅に行くと、美味しい和菓子と
楽しいお話が聞けるので、依頼が来るのが待ち遠しいのですが…」
「お父さん、煙突から何か音が聞こえるんだけど…」
執筆中は声をかけない約束なのに、碧衣が神妙な顔でやってきた。
「音?」
防鳥ネットが付けられてるから鳥が入り込むことはないはずである。穴でも開いたのか?
碧衣が言うのだから間違いないだろう。それに、仕事中に部屋に来るくらいだから緊急を要するんだろう。
取り敢えず見る。
うん、確かに音がするなぁ。
鳥じゃないか?
「いつもの煙突掃除屋さんに電話しようと思うんだけど、お父さんは電話番号分かる?」
「お母さんに聞かないと分からないなぁ。どこかに領収書とかないか?」
「お母さん、今日はお友達と映画を観に行ってるのよね。・・・今は上映中だわ」
「あの煙突屋ってなんて名前だった?」
「私は知らないよ」
そう言ってる間もガサガサ聞こえて来る。
「お父さん、暖炉から何か怖いものが出てきたらいやよ。ヘビとか…」
「よし、お父さんがちょっと覗いてみるよ」
懐中電灯で照らすと、いきなりバサーッと鳥が暖炉から飛び出してきた。
「「ぎゃあああああああ!」」
煤まみれになった真っ黒の雀が、叫びながら逃げ回る父と碧衣と一緒にリビング中を飛び回る。
碧衣がガラス窓を開けると、煤を部屋に撒き散らした雀が去っていく。
* * *
「ただいまー。・・・・・・なにこれ?」
煤まみれになった壁を見て呆然とする母。
「お母さん、おかえりなさい。映画面白かった?」
「ええ、でも、こんなことになってるなら、遠山さんと御飯食べて帰らなくて良かったわ」
「遠山さんって?」
「ほら、毎年ウチの煙突掃除してくれるお店の奥様よ」




