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【17】大鏡の修復

舞台は、日本のような日本では無いファンタジー世界です。


藍姫(あいひめ)様、大丈夫ですか?お顔色があまりよろしくない。どこかでお休みしましょう」


珀黎(はくれい)が藍姫に優しく声を掛ける。


「私は大丈夫です。それに私、大鏡を直さないと…」


藍姫は大広間の奥、香綺(かあや)が座っていた玉座の隣にある布が掛けられたものを手で指し示した。



藍姫が布を取ると、大きく亀裂の入った玻璃製の大鏡が現れた。


「これは、藍姫様が儀式のときに割ってしまったとお話していた大鏡ですか?」


珀黎は10歳のときに両目を失明していた為、儀式のことも藍姫からの話でしか知らなかった。


「はい。烏…、濡羽(ぬれば)さんが私には治癒能力があるので、もしかしたら大鏡の修復も可能なのでは、と聞いたら可能性は大いにあると仰ったので」


珀黎が横で、後ろでは烏鬼(うき)たち四葩(よひら)と貴族たちが固唾を飲んで藍姫を見守っている。



藍姫は大鏡に手を翳し、静かに目を閉じて魔力を込め始めた。



胸に光る勾玉が藍姫の魔力に反応して白く輝きを増した。


藍姫の薄紫色の魔力は大鏡を包み込むと、ふわりと光り、珀黎の傷を治したときと同じように膜を張り、シャラシャラと音を立てて光の粒子となり消えていった。


そのあとに残ったのは、シャンデリアの光を受けて輝く、美しい大鏡の姿だった。



元の状態に戻った大鏡を、貴族たちは歓声と共に驚きの表情で見つめていた。


「おぉ!藍姫様が大鏡を直された!まさか、本当に直せるとは…」


「修復師たちがどんなに魔力を込めても、何ひとつ変化が無かったというのに。やはり、藍姫様は姫巫女様としての強大な魔力をお持ちということか…」


八仙花神社(はっせんかじんじゃ)の使者たちが、直々に正統なる姫巫女様として選ばれたと言っているんだから、もはや覆しようも無いだろう」



後ろがガヤガヤと騒がしい中、藍姫はふぅと安堵の息をついた。


いくら魔力が膨大でほぼ無尽蔵に使えると言っても、神の力を融合させるとなるとそれなりに体力も使う。


少しふらついた藍姫を珀黎が咄嗟に抱きとめた。


いつの間にか烏鬼たちが周りに集まり、心配そうに藍姫を覗き込んだ。



「申し訳ありません、藍姫様。お疲れのところ、ご無理をさせてしまって…」


狐鬼(こき)が申し訳なさそうに眉を下げて詫びる。


「いいえ、私は大丈夫です。大鏡は私が壊してしまったものですので、いつか必ず直さなくてはと思っていましたもの。綺麗に直せて良かったです」



この大鏡は初代の姫巫女が選ばれたときに、八仙花神社から王家へ贈られたものだ。


蒼天宮邸(そうてんのみやてい)を守るように特別な魔力が込められている。



「これはかなりの強力な魔力が込められた代物だぜ。藍姫様ほどの魔力の持ち主だからこそ綺麗に直すことが出来たんだ。とんでもねぇことだぜ、本当に」


蛇鬼(じゃき)が何度もうんうんと頷き、藍姫を絶賛した。




「さて、この場はそろそろお開きにしましょう。藍姫様方には、こちらでお帰りの手配をします。それまで、隣のお部屋でしばしご休憩下さい」


珀黎は使用人を呼ぶとテキパキと指示を出した。


藍姫たちが珀黎の用意した部屋でしばらく休息を取っていると、馬車の手配が整ったと使用人が呼びに来た。



珀黎も見送りの為に外へ出てきて、別れ際に藍姫の手を取った。


「身の回りのことが色々と片付いたら、必ずあなたをお迎えに上がります。それまでどうか待っていて下さい」


珀黎の灰色がかった深い緑の瞳で見つめられ、藍姫は自分の顔が赤くなるのを鏡を見なくても自覚した。


「…はい、お待ちしております。珀黎様のご無事を、ずっとお祈りしております」


珀黎は幸せそうに微笑むと、藍姫の手の甲に口付けをして、藍姫たちの乗った馬車を見送った。




その後、ずっと病床に臥していた国王が亡くなったと知らせが八仙花神社にも入った。


そして、大きくの国民や貴族たちから祝福され、珀黎が新たな国王に即位した。


藍姫たちが蒼天宮邸を去った少しあとに、王妃であった香綺が処刑され、瑛龍(えいりゅう)は追放された。



宗弦(そうけん)杏花(きょうか)花琳(かりん)に関しては、まだ慎重に処遇を決めている為、3人ともまだ牢屋に入っている。


読んで頂きありがとうございます!


篠宮家のメンツはどうなるのか、今後お楽しみ頂けたら幸いです。

次回もお楽しみ下さい!

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