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図書委員長の先輩から引き継いだあの日

作者: 小方錦龍

「小方くん、図書室の鍵は職員室のここに返却するんだよ」

俺は憧れの一学年上の直美先輩から図書室の鍵の貸し借りの方法について『引き継ぎ』を受けていた。

直美先輩は憧れの図書委員長。

一学年下の図書委員であった俺をこの一年、優しく指導してくれた。


時は少しだけ遡る。

生徒会の任期は2年生の1月から3年生の12月まで。


図書委員長は生徒会の役職の一つであるため、秋から新生徒会の立候補募集が始まった。


俺は迷わず図書委員長に立候補した。

直美先輩の後釜になっていいのは俺だけ-

本気でそう思っていた。


そして図書委員長にはもう1人立候補した男子生徒がいた。

だが、その生徒は図書委員の経験は、無い。


なぜ、あいつは立候補した?

先輩の座を引き継いでいいのは俺だけ-


その時俺は自覚した。

これは嫉妬だ。

あぁ、俺は憧れの直美先輩に恋をしているんだ。


俺の中学校における図書委員長の選定は生徒会選挙による投票ではなく、生徒会選挙で選ばれた生徒会長が任命する仕組みだった。


そうして、あの運命の日。

新生徒会長は俺に声をかけた。

「お前を図書委員長にするから、よろしくな」


その言葉は嬉しかった。

直美先輩の役割を引き継げる!


だがー

その時の俺は重要なことに気づいていなかった。

直美先輩の役割を引き継ぐということは、もう会えなくなるということを。


俺は直美先輩から図書室の鍵の返却方法を引き継いだ。

これで図書委員長としての全ての引き継ぎが終わった。

直美先輩は3年生。

高校受験が目前に控えている。

もう図書室で一緒に本を読むことはない。


校門を一緒に出た時、俺は直美先輩に声をかける。

「先輩、俺……先輩、あの……」

直美先輩は体をくるりと俺に向けた。

「なぁに?小方くん」

だが、俺は大切な言葉を言えなかった。

「いえ……俺、頑張ります」

直美先輩は微笑んだ。

「うん。頑張ってね」


それが直美先輩と交わした最後の言葉。


俺は直美先輩の後を引き継いだ図書委員長として翌年1月から活動を始めた。


直美先輩への憧れを本棚にそっと隠して―

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