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1 スキル覚醒

 朝、目覚めてパジャマから学生服に着替え、階下に降りる。リビングでは両親が朝食を食べていた。


「おはよう」と声をかける。


「おはよう。今日は誕生日だな。おめでとう」とコーヒーを飲みながらパパが言った。


「学校から帰ったら誕生日パーティーをやりましょう」とママがにこやかに言った。


「ありがとう」


 今日は僕の15歳の誕生日なのだ。テーブルに腰かけて両親と一緒に朝食を食べようとした。そのとき、自分の手の甲におかしなものがついていることに気づいた。


「あれ? これはなんだろう? スイッチみたいだぞ」


 それは二つのスイッチだった。ひとつには「セーブ」もうひとつには「ロード」と書いてある。


「どうしたんだ?」とパパが言う。


「うん、手の甲にスイッチが出現したんだ」


 僕は手の甲をパパに見せる。しかしパパは首をかしげて、「スイッチなんてついてないぞ。幻覚じゃないのか?」と言った。


 どうやらこのスイッチはパパには見えてないらしい。


 試しに「セーブ」というスイッチを押してみた。しかし何も起こらなかった。あたりをきょろきょろと見まわすが、特に変化はない。


 そのとき「きゃっ!」とママが叫んだ。ねずみがママの足元を走り抜けたのだ。驚いたママは手を滑らせて、持っていたオレンジジュースのコップを床に落として割ってしまった。


「コップを落として割っちゃったわ。気に入ってたのに……」


「また新しいものを買ってやるよ。形あるものいつかは壊れるんだ」とパパがママを慰める。


「セーブ」のスイッチを押しても何の変化もなかったから、今度は「ロード」のスイッチを押してみる。かちりと音が鳴った。そのとたん、周りの景色がぐにゃりとゆがんで、立ちくらみみたいな感覚に襲われた。


 立ちくらみはすぐに収まった。周りを見回す。なんだか違和感を感じる。何が起こったんだろう?


 すると、「きゃっ!」とママが叫んだ。ねずみがママの足元を走り抜けたのだ。驚いたママは手を滑らせて、持っていたオレンジジュースのコップを床に落として割ってしまった。


 あれ? この光景はさっきも見たはずだぞ。


「コップを落として割っちゃったわ。気に入ってたのに……」


「また新しいものを買ってやるよ。形あるものいつかは壊れるんだ」とパパがママを慰める。


 ふたりの反応も、喋る言葉も、さっきと全く同じだ。このボタンと何か関係があるのか? 僕はしげしげとボタンを眺めた。


 ママは雑巾でオレンジジュースを拭いている。


「ロード」のボタンをもう一度押してみる。するとさっきと同じように視界がぐにゃりとゆがんで立ちくらみみたいなのがまた起きた。


 床にこぼれたオレンジジュースを拭いていたはずのママが、瞬時に椅子に座った状態になり、手に持ったオレンジジュースを口に運ぼうとしている。


 その時、「きゃっ!」と叫んでママの手からコップが落下した。ママの足元をねずみが走り抜けたのだ。僕は素早く反応して、オレンジジュースのコップをキャッチした。


「おお! ナイスキャッチだぞ!」


「すごい反射神経ね。このコップ、お気に入りだから割れなくてよかったわ」


 両親が僕の動きに驚いている。


 僕は手の甲についているボタンの機能がわかってきた。これは、時間をまき戻すことができるボタンなのだ。


「セーブ」を押してから「ロード」のボタンを押すと、「セーブ」を押した時点に巻き戻るみたいだ。これはすごいスキルを手に入れたぞ。


 朝食を食べ終えてから僕は家を出て学校へ向かった。


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