夢の図書館
「夢の中で本を読める機械が完成したぞ!」
友人の発明家がそう言いながら僕の家を尋ねてきた。
「現代人は本を読まなさすぎる。だけど時間がないのも分かる。よーく分かる。だから私はこれを作ったんだ!」
友人は興奮気味に僕に向かってまくしたてる。その勢いに押されながらも僕はその装置に興味を惹かれた。
見た目は妙な形のものがゴテゴテついてはいるが、大まかに言えばヘルメットのような形をしている。
話を聞いてみるとどうやら寝るときに頭に着けるらしい。
「ちょっと客観的な意見を聞きたくてね。実験台になってくれ!」
友人は謝礼を払うから、と言いながらそのヘルメットを振り回す。危ないから振り回さないでくれと言いながら僕はそのヘルメットを受け取った。
最近は仕事が忙しくてあまり本を読めていなかったからちょうどいい話だった。
きちんとレポートにして提出してくれ、と言って友人は帰っていった。
その日眠るとき、僕は少しワクワクしながら頭にヘルメットを乗せた。
友人いわくこの機械には図書館並の本が入っているらしい。さて、どんな本を読もうか。
「それで、使ってみた感想はどうだい?」
一週間ほど経ち、使い心地を尋ねてきた友人に対してヘルメットを返しながら僕は答えた。
「読んだことは覚えてるんだが、内容は覚えてない」
「……まあ、夢の内容なんてそんなものだよね」
友人は肩を落とした。
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