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二十七、怒り  ~ベルトラン視点~







「過酷な訓練を乗り越え、見事修了の栄誉を得た諸君を誇りに思う。これからも、国のため、その実力を遺憾なく発揮していってほしい」


 魔法騎士の特別訓練終了時、王太子セリオは自ら赴き、訓練を無事修了した者、即ち訓練に合格し、伯爵の地位を得たものを讃えていた。


「そして、なかでも優秀であったベルトラン・カルビノに、遊撃の地位を与える」


 王太子セリオがそう告げた時、周りからは大きな拍手があがり、ベルトランも会釈でそれに応えはするものの、セリオが瞬きで告げて来る内容に、怪訝な思いが拭えずにいた。




 『この先、何があっても逆らうな。流れのままに行け』とは、どういうことだ?


 


 この場の誰も知り得ない、瞬きでの合図。


 ベルトランが高位貴族であり、王太子セリオと近しい存在であるがために理解できるそれを、今ここで王太子セリオが使う、その意味とは何なのか、ベルトランは計りかねてて、ひとり首を捻る。


 先ほどまで、無事に修了したこと、そして首位はベルトランであったことを教官から発表されたことで、気分がとても高揚していた。


 それはもう、周りも驚くほど。


 そして『ロブレス侯爵令嬢に会いたい、今すぐ会いに行きたい、というのは、物凄く理解できるが、風呂には入ってから行けよ!?』と、フィデルに止められるほど、翼でも生えたかという勢いでフィロメナを訪なうつもりでいたベルトランは、ここに来て、不穏な何かを感じ取る。




 誰かが危害を加えて来る可能性があるが、抵抗するなということか?


 しかし、俺に直接接触することなく、こんな形で伝えるということは、王太子の声が聞こえる範囲、王太子の行動を見ることが出来る範囲に、相手方の者が居るということだろうな。


 それにしても、俺に手を出して、何の得があるんだ?


 まさか、マリルー王女か?




 その名に思い至った瞬間、不穏だった思いは不快さへと変化した。


 しかしそれなら、王太子セリオが、このような形で伝えて来るのも納得できると、ベルトランはため息を吐きたくなる。




 『何があっても逆らうな』か。


 はあ。


 漸く、フィロメナに会えると思ったのに。


 ・・・まさか、秘密裡にマリルー王女と婚姻させるつもりではないよな!?




 そんなことであれば、即座に反旗を翻すと、ベルトランは己の瞼を動かした。










「悪いな、カルビノ公爵子息。だが、目立つお前が悪いんだよ。第二騎士団でおとなしくしていればいいものを、近衛に移動して、そのうえ特別訓練を見事な成績で修了するなんて。はっ。反吐が出る」




 近衛では見ない顔だが。


 誰だ?




 王太子セリオが『マリルーと婚姻など考えていない!むしろ、そうならないためだ!』と合図をして来たことで安堵したベルトランは、散会と同時に接近して来た近衛の制服を来た男に、大人しく拉致された。


 しかし、どう考えても近衛では見たことが無いと、考え込む。


「何だ、その顔。ああ、俺が近衛の制服を着ているのが不思議なのか。俺はな、本当なら近衛の、しかも団長になれる男だったんだよ。それを、あいつが横取りしやがった。近衛になれるのは、俺だった筈なのに」


「・・・『筈だった』つまりは、近衛ではないということか」


 ならば俺を拉致するため、王城内を歩いていても不審がられないために近衛の制服を着用しているのかと納得したベルトランに、男が眦を吊り上げた。


「俺は優秀だったんだ!だが、あの男のせいで士官学校の主席を逃して」


「次席でも、充分近衛の資格はあるだろう」


 確かに、近衛になるためには、貴族位があることと、士官学校を優秀な成績で卒業していることが必須ではあるが、何も主席である必要は無い。


 何なら、次席でも三席でもなくても近衛にはなれるし、優秀者が揃った年などは通常より多く採用されることもあると、ベルトランは士官学校時代に聞いた。


「俺は!本当に優秀だったんだ。親にも、間違いなく近衛になれると言われていたし、陛下たちだって・・・・・!」


「ならば、近衛になれた筈だろう。ましてや、団長になれるほどだったのなら、落ちる筈もない」


 この男のことなどどうでもいいが、ここで下手に怒らせてもまずいかと、流すように言いながら、ベルトランは男が連れて行こうとしている場所を推察する。




 こちらは、南の塔か。


 騎士を収監するための場所とは、愚弄してくれる。




「お前を失墜させて、あの男に責任を取らせる。くくっ。俺を貶めたあいつが、どんな吠え面をかくのか、楽しみだ」


 楽し気に笑った男は、音を立てて鍵を閉めると、揚々とその場から去って行った。


「賑やかな男だ。で、つまり。団長を貶めたいがために、俺を嵌めるということか?意味が分からん」


 ともかく、暫く大人しくしているかと椅子に座ったベルトランは、ほどなくして、一羽の鳥が窓に止まるのを見た。


「王太子か」


 王太子が使役しているその鳥の脚に結わえられた手紙を、ため息と共に読んだベルトランは、瞬時に怒りをその顔に宿す。


「フィロメナに、何をするつもりだって?」


 そこに書かれた、国王と王妃、そしてマリルーの計画。


「フィロメナ・・・・・!」


 既に進みつつあるが、必ずロブレス侯爵令嬢は守る、歯がゆいだろうが、暫く大人しく待機していてくれと書かれたそれに、ベルトランは生まれて初めて感じるほどの強い焦燥に駆られ、怒りの拳を震わせた。


 

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