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十五、俺の、可愛く聡い婚約者  ~ベルトラン視点~







「フィロメナ。俺はこの度、魔法騎士の特別訓練を受けられることになった」


 幾度も、嫌悪に顔を歪めそうになりつつマリルー王女の護衛をした甲斐あって、無事受けられることになった特別訓練。


 それを俺は、安堵の気持ちでフィロメナに報告した。


「魔法騎士の、特別訓練ですか?」


「ああ」


 ふたりで歩くロブレス侯爵家の庭には、春の花が咲き乱れ、花と共に在るフィロメナは本当に妖精のようだと、俺は、ともすれば見惚れてしまう。




 折角なら、並んで歩きたいが・・・・・。


 そうすると、確実にフィロメナを見つめ続けて前など見ず、どこかで転びかねない。




 そんなみっともない真似は出来ないと、俺は後ろのフィロメナを、ちらちらと見つめるに留めた。




 いや。


 こんな風に見つめていることがばれたら、それはそれで嫌がられるか?


 しかし、気の利いた話も出来ないしな。




「ベルトラン様が、特別訓練を望んでいらっしゃるとは知りませんでしたが、おめでとうございます」


 俺が埒も無いことを考えていると、フィロメナが、やや拗ねたような声を出す。




 すまない、フィロメナ。


 特別訓練を受けようと目標にしたはいいが、その資格が難しく、もし万が一得点が届かないなどということになれば格好がつかないと、言うことが出来なかった。


 情けなくも、俺はフィロメナ相手になると、途端に自信が無くなるからな。


 


 そもそも、特別訓練の受験資格を得たと報告するためだけに、一体どれほどの距離を歩いたのかと、俺は広い庭園の中央付近にある大きな池にかかる橋を見つめる。




 あれがあるということは、相当歩いたということ。


 はあ。


 フィロメナが、飽きた様子も無くいてくれるのが救いか。




 「ありがとう。目標としていても、受けられるかどうかは分からないからな。もし叶わない時は恥だと思って言わなかった。だが、こうして受けられることになったからには、無事、遊撃の地位を得ると約束する」


「えと・・あの・・・え?遊撃の地位、ですか?伯爵位ではなく?」


 俺の言葉に、きょとんとするフィロメナも可愛い。




 暫くは会えないからな。


 しっかりと、目に焼き付けておかねば。




 「伯爵位も貰えるが、遊撃の立場も得ることが出来る。つまり、自由に動くことが出来るというわけだ」


「そうなのですね・・・遊撃」


 遊撃、と何度も言うフィロメナは、遊撃という部隊そのものがよく分かっていないようで、俺は詳しく説明しようとするも、またも取れなかった時の不安が勝った。


 期待させて駄目でしたとは、情けなくてとても言えない。




 フィロメナ。


 遊撃の地位が手に入れば、フィロメナと共に旅が出来る。


 そのためには、特別訓練を優秀な成績で修了することが必要となるが、必ずやり遂げると誓う。




「ああ・・・それで」


 誓えるなら言えるだろうという、内心のぼやきとは別に、俺はフィロメナに言っておかなくてはならないことを思い出して、憂鬱な気持ちになる。


「ベルトラン様?」


「これは、言い難い、というか。言いたくも無いのだが・・・」


 規則は規則。


 これも、遊撃の地位を得るために必要とはいえ、俺の口からなど本当に言いたくないと、苦々しい気持ちになった。


「わたくしに、お話しなさる必要のある事柄でしたら、お願いします」


「申し訳ないが、訓練期間は、自由に外出も出来ない」


 女々しく言い淀む俺などよりずっと凛々しく言うフィロメナに、俺は重い口を開く。


 『すまない』としか言えない自分が、歯がゆい。


 本当は、もっと色々な言葉を重ねるべきだと思うのに、俺にはそれが難しい。


「お謝りになることなんて、ありませんわ。つまり、こうして我が家をお訪ねくださることも難しいということですわよね?」


「そうだ」


「因みに、わたくしの方からお会いしに行くことは可能ですか?」


 上手く言えない俺に代わり、率先して尋ねてくれるフィロメナに甘えてしまう。


「面会や娯楽は、全面禁止されている」


「そうなのですね。ご家族でも?」


「例外は無い」


「まあ」


 驚くフィロメナの表情に、俺の胸が高鳴る。


 こんなに可愛い婚約者と一年も会えないなんて、何の拷問かと思うが、これも俺がフィロメナに相応しくあるため。


「一年だ」


「はい」


「一年で、遊撃の地位を得てみせる」


 そのために、これまでフィロメナに様々な我慢をさせ、俺も、あの我儘で傲慢なマリルー王女に耐えて来たのだがら、絶対に無駄にはしない。


「ベルトラン様なら、きっとやり遂げると信じております」


 きれいな瞳で、そう言い切ってくれるフィロメナが嬉しい。


 思えば、フィロメナは、いつも俺のことを分かってくれた。


 俺が、フィロメナに相応しい地位を望んでいることも、フィロメナと出会ってから、誰といてもフィロメナを思い出してしまうことも、恥ずかしくも知られていた。


 けれどフィロメナは、そんな俺を嫌悪することなく、心を添わせてくれる。


「ありがとう。期待を裏切らないと、約束する。だから・・いや、何でもない」




 待っていてほしい。




 その言葉を、口にすることは出来なかったが。




 フィロメナ。


 俺は、必ず約束を守る。



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