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2.カメレオン令嬢、ガーデンパーティーに潜入

第三話は明日12時投稿予定です。

 呪いでカメレオンになってから三週間。今日は王城でガーデンパーティーが開かれる。公爵嫡男ならば必ずしや出席しているはず。魔法省長官の彼に会う絶好の機会だ。わたしは父と義母と異母妹の乗る馬車にくっついていった。


 この三週間で、わたしはだいぶカメレオンの体を使いこなせるようになっていた。たいていの物なら舌で捕捉(キャッチ)できるようになっていたし、自在に体色を変えられるようになっていたし、機敏に動けるようになっていた。意外に快適かも。

 そして意外なことに誰にも気付かれない。気分はすっかり女忍者。


 王城についてからは異母妹のドレスについている大きめなリボンに擬態してついていく。会場である庭園についてからは人づたいにテーブルへと移動する。

 さすが王家主催のパーティー。テーブルにならぶ食事はどれも美味しそうだし、一級品の果物が並べられている。折角パーティーに来たのだからと、つやつやに輝く宝石のようなマスカットや苺を味わう。みずみずしくて甘くて最っ高!

 本当なら豪勢な肉料理にもかぶりつきたいのだが、カメレオンには一口でおさまる大きさではないので気持ちを抑える。さすがにかぶりついてたら露見しちゃう。

 いちおう目的は忘れていない。キョロキョロと目を動かしつつ聞き耳もたてている。


 美味しそうなスイーツをときおり失敬しながら移動して、会場の会話をひろう。誰が魔法省長官なのか、今日はまずその人物を特定しておきたい。そして後日魔法省へと赴いて彼の前に姿を現すつもりでいる。

 あるテーブルの上でミニシュークリームを味わっていると、ほんの一瞬男性と目が合った。


 しかしそれも刹那。その男性は何も見なかったかのように歓談に興じている。距離もあったし気のせいだろう。

 キャロラインはほっとして、しかし気を引き締めなおして、聞き耳を立てて目的の人物を探した。


 その後別のテーブルでフロランタンを口にしたとき、やはり同じ男性がこちらを見ているような気がした。しかし近づいてくる様子はない。わたしに気付いたわけではなく、単にスイーツ好きの男性かもしれない。

 貴族男性はどちらかというとお酒やつまみを嗜むものだ。彼は隠れスイーツ好きで、美味しそうなスイーツを前に目で追ってしまってるのかもしれない。わかるわかる、その気持ち。うんうん、実際すごく美味しいのだよ。


 お腹もいっぱいになって疲れてきたけど、なかなか目的の人物が特定できない。耳には入ってくるんだけどね。ウーラス公爵の嫡男で次期当主。現在子爵位保持。名前はアレクサンダー。婚約者はいないらしい。

 恰好いいだの、あの冷たい視線がたまらないだの、目に留まりたいだの、令嬢たちの声があちらこちらで聞こえてくる。

 イケメンで高位貴族でしかも魔法省長官という役職持ち。結婚したい男ナンバーワンの見本のような男性だ。でもいまだ婚約者もいないってことは性格に難ありなのかもなどと考えていると、先程の隠れスイーツ好き男性が父に話しかけるのが目に入った。


 あら、父の知り合い?父の様子を見ていると恐縮している様子。高位貴族なのね。父は平凡中の平凡な当主でうちは弱小伯爵家なのだけど、まさか借金じゃないよね?

 父たちを注視しながらも耳からは令嬢たちのおしゃべりが入ってくる。

 その魔法省長官は背が高く、瑠璃色と王家の特徴である銀色の混じった、高魔力の証である長い髪を持ち、切れ長の目のクール美形らしい。ちょうど今、父と話しているあの男性のような…


 え、もしかしてあの人?

 確かに瑠璃色の髪が毛先にいくほどに銀色に変わっていくグラデーションは美しい。そして腰下まで届くほど長いということは魔力量がかなり多いということ。彼で間違いないだろう。

 よし、決めた!このパーティーの後彼についていこう。



 そして終宴後、彼を見失わないようにテーブル上で待機していた。退出していく貴族たちをよそに彼は誰かと話をしている。よかった、人目は少ない方がいい。

 …とは思っていたけれど、わたしがいるテーブルに向かって一直線に向かってくる。もしかしてここにあるフルーツタルトが食べたいのかしら?それともチーズケーキ?背も高くて少し威圧感があるけど、たしかに間近で見ると美形だなあ。などと悠長に魅入ってました。


「おい」


 給仕のメイド?あいにくこのテーブルの周囲には今誰もいないよ。


「おい、そこのカメレオンだ」


 んん、わたし?もしかして擬態が見破られてる?


「そうだ、そこのガトーショコラの隣で首を傾げている、トードの腕輪をつけているお前だ」


 おお、やっぱり呪いの腕輪だってわかるんだ!やった!呪いを解いてもらえる!


「お前はここで何をしている?呪具を身に付けて王城のガーデンパーティーに忍び込むとは大胆だな。

 お前の目的は何だ?今から取り調べてやる。もちろんその盗品の呪具はこちらで回収する」


 あれぇ?もしかしてわたし侵入者扱い?しかも盗人だと思われている?

 ちょっとまずいかもしれない。まずは誤解をとかないと。顔の前で両手をふってみる。


「重要参考人として魔法省棟に連行する。逃げるなよ?大人しくすることだ」


 話しながら魔法の光る縄で拘束された。

 ただの弱小伯爵令嬢なんですー!話せばわかりますー!

読んでいただきありがとうございます。

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