表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年魔女  作者: 朧
94/94

エピローグ

 桜が散ってしばらく経つ頃。

 早くも夏が軽快な足取りでやってくる気配がする、とある昼下がり。


「先生っ またあのお話聞かせてほしいです」

「どうせフィクションっすよね」

「もう、男子はロマンがないなぁ。せんせ、前の続きお願いします!」

「魔女なんているわけないっしょ」


 複数の高校生たちが、一つの机に集まって身を乗り出す。

 女子生徒は目をきらきらと輝かせる一方、男子生徒は呆れつつ耳を傾けている。溌剌とした彼らの高い声が向けられる先、静かに座っていたのは。


「どこまで話したっけ。あぁ、悪魔に襲われたあたりかな」


 少し伸びた黒髪を結び、大人びた笑みを浮かべる若い女性。

 円で芯のある眼差しを若い彼らに巡らせて、彼女は机上に広げていたノートを閉じる。右手の赤ペンをしまって、穏やかな様子で教師は一人の生徒に問う。

 質問に大きく頷かれ、彼女は語り出した。


「あの時はすぐに魔女が助けてくれたよ。刺されたところも回復させてくれたし、逃がしてもくれてね――」


 脳裏に浮かぶのは、未だ鮮明に残る少年の姿。彼女は酷く懐かしむように目を細めた。

 刺された、という言葉に合わせて首に触れる。それを見た男子生徒が声をあげた。しかし間髪入れずに隣の女子が返す。


「ねぇその話って、センセーが高一の時でしょ? 怖くなかったんですか」

「バカ言わないで、誰だって怖いに決まってるわよ! ね、泉先生」


 同意を求められ、彼女は困った表情をして首肯する。だが同時に否定の言葉を口にした。


「言うほどじゃなかったよ。私は強い魔女に守られていたから」


 どこか遠く、知らない場所にいる彼へ。

 彼女は祈りながら心中で問いかけた。


 私は元気だよ。貴方は元気かな。


 視線の先。机の隅に置かれた、不思議と光る一輪の花が見つめ返していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ