夕顔の
その滑らかな白さを
見ていたときに、
これほど美しいものを
見られるなんて、
自分は幸せだなと、
確か口にした。
銭湯に行った帰りに、
いつも寄っていた、
お好み焼き屋の
縁台に腰掛けて、
冷たいひやしあめを
飲んだとき。
夏の夕方だった。
日差しは峠を越えて、
北向きの店先には、
大きな夕顔の花が
二つ、咲いていた。
真っ白な花だった。
夕顔、好きなんやと、
目を細めていた。
綺麗ね、私も好きやわ。
朝顔より大きくなるの。
種類にもよるのかな。
広げた掌を重ねていた。
その掌に繋がる腕や
首筋を視界に入れていた。
北国生まれだからか。
あの時、ほんとうは、
その肌としての白さに、
触れたくなっていた。
恋をしていたから、
美しいと思えたのか、
美しいから魅了され、
恋しくなっていたのか、
若くない今頃になって、
心に抽象画が掛かる。
神田川という歌を
まだ多くの人が知り、
夜中の公衆電話で
不埒な約束を交わし、
将来を考えることも
ないままに暮らした。
昨日のことのようで、
いつの間に、今日に
なってていたんだろう。
夕顔の種を今年も撒く。
一人の庭、お隣との間に。
滑らかな白を描く。




