第4話 小癪な男
マージは元々北にあるズール帝国の名高き騎士だった。上り詰められるところまで上り詰めたのだが、ある事件がきっかけで帝国を追放されることになった。
そして、帝国から見て南に位置するタールランドに忍び込み、父ルークに腕を認められて、タールランドの大臣に抜擢されたのだ。
こんなことを言うと恩着せがましいと言われるかもしれないが、少なくともマージは、行き倒れそうなところを父に助けられて感謝をしていたはずだ。それなのにも関わらず、タールランド王を裏切った。これは多分個人的な恨みではないだろう。
「間違いなく、帝国が一枚噛んでるね。」
「きっと、帝国での地位を再び保障するから、タールランドの王を暗殺せよとでも言われたのでしょうな。」
なんとも姑息な者共だ、とホスロは顔をしかめる。
「いや、多分それだけじゃないよ。」
「と言うと?」
「…………脅されてるんじゃないかな?」
「お、脅しですと!?」
一体なんのメリットがあるんだ、とホスロは言ったが、全くもってその通りだ。帝国側には脅すことによるメリットは1つもない。しかも、失敗すれば、外交政策にも影響を及ぼすだろう。それでも実行したということは、確実にうまくいきますよ~という根拠が必要になる。
今回帝国が脅した相手は、タールランドの大臣。
皮肉にも、外交大臣だ。
さっきも言ったが、脅して計画を実行に移そうとしても、もし準備している間に捕まってしまい、尋問中に帝国の名が出てきたら外交破綻にもなりかねない。
でも、脅す相手が大臣なら?
――実行犯として使う相手が大臣やその部下なら?
まちがいなく、隠蔽や隠匿魔法が使われるだろう。そして、もし捕まったとしても、大臣の権力で何もなかったことに出きるだろう。もちろん、ズール帝国に義理立てすることが前提だ。
いくら脅されているとはいえ、タールランドの騎士だ。そう簡単に仲間を売ることはないだろう。
ましてや、かつての友を。
それでも帝国に協力するのだとすれば…
「ホスロの睨んでいる通り、帝国からなにか吹き込まれているんだろうね。」
「何にせよ、大臣が帝国と結託しているという証拠を見つけなければなりませんな。」
「うん。」
そうでなければ、しらを切って逃げられてしまう。
…父の敵を、逃がすわけにはいかない。
「ホスロ、確か明日僕の成人の儀式の時に上級貴族や王族が集まるよね?」
「そうですな。講堂にたくさん集まりますぞ。」
「………そこまでに、決着をつけよう。」
身内の恥を晒すようだが、ここで証拠を突きつけて逃げられないようにするしかない。
とにかく、今は証拠を探そう。期限は、明日だ。
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