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死駅  作者: 京介
1/5

1.始

 ふと、死にたいと思った。

 日曜日の午前九時、駅のホームのことだ。

 せっかくの休日だし映画でも観に行こうか。

 そんなことを考え、自宅から三駅ほど離れたところにある映画館に向かう途中だった。

 死にたいだなんて、なぜそんなことを考えてしまったのか自分でもよく分からなかった。

 つらいこともあるし、苦しい事だってある。

 死にたいと考えたことだって無いわけじゃない。

 だが、なんで今そんなことを考えてしまったのか。

 平日のラッシュアワーであればまだ分かる。

 満員電車に詰め込まれ、もう人が入るわけがないじゃないかと思っていると次の駅で更に人が入ってくる。

 というか押し込まれてくる。

 すし詰め状態の電車内で身動きもできず、自分は今、奴隷船に乗せられているのではないかと、自嘲めいたことを考えたりすることもある。

 でも今日は日曜日で、まだ午前九時だ。

 駅に人はまばらだし電車だってきっと空いているはずだ。

 なんでいま、この瞬間に「死にたい」などと考えてしまったのか、不思議だった。

 いや、いまこの瞬間だからこそかもしれない。

 そんなことを考えた。

 仕事で忙しくしているあいだは、仕事のことで頭がいっぱいだ。

 余計なことを考える暇なんてない。

 しかし、こうして休日に駅のホームで電車をぼんやりと待っているような手持ち無沙汰な時間とか、そんなときになんとなく考え事をしてしまうのだろう。

 人間、時間があるとロクなことを考えない。

 少なくとも私の場合は忙しく動き回っているほうがいいのかもしれない。

 私は駅のホームを見回す。

 私の他には少し離れたところに女性が一人、遠く離れたところに男性が一人いるだけである。

 なんだか今日はずいぶんと空いている。

 まあ、空いていて悪いことはない。

 やがて電車が来た。

 私は深く考えることもなく、その電車に乗った。

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