パーティとしての目標
ドワーフの名前は、ドムといった。実は、巷では有名な天才剣士だった。かなりの数のパーティが、オファーをしていたようだが、全部断っていたらしい。なんで、僕たちの仲間になったのか。気まぐれか。緩そうだからか。思い通りになりそうだからか。などと愚推しながら、3カ月が過ぎた。
タルキたちは、ギルドのスタッフさんとも仲良くなり、ランクの上の仕事を得るようになっていた。無論、モンスターと戦うようにもなっていた。やはり、夜の森にはかなりの確率で出現した。相手はウォーウルフ、オーク、コボルド、ゴブリンだったりした。しかし、ほとんどの場合、ドムが一撃で倒した。逆に危なそうな時は、霊感のようなものが察知し、その場を離れた。この判断に、ドムは反対したことはなかった。彼も、この能力を信じてくれているようだった。このおかげかどうかは、解らないが、誰もケガすらしたことがなかった。
(違うか。ドムが強すぎるだけか。。)
ある日、ギルドのカフェテリアで、3人集まって、僕とレイアは、コーヒー、ドムは白の液体(にごり酒か?)を飲んでいた。
突如、ドワーフ剣士はまじめな顔で(いつもそうだが)、言った。
ドム「冒険者としての目標を決めませんか。パーティは複数人で行動しますが、互いを理解してない場合、背中を任せられない。。つまり、目標(利害関係)が一致すれば、信頼できる。」
タルキ「それは、その通りだと思います。」
ドム「私は知っています。タルキさんが、私たちが安全かつ、報酬が高い仕事を選んでいることを。そのことを知っています。だから、当然、信頼しています。ただ、それでも、目標があったほうがいいと思うんです。暗黙では疑いの余地が残りますが、利害関係も一致すれば、疑いの余地すらなくなります。わかりますか?」
タルキ「ドムさん。。わかります。」
タルキは、告白を始めた。
「僕、子供のころからそうなんです。危険がある選択肢が解ってしまうんです。信じてもらえるかわかりませんが。」
・・・。
レイア「私、信じるよ。私にもある。」
今度は、レイアが告白を始める。
「私の中には、神様がいる。それはクレリックだから当然なんだけど。ただ、それは、普通とは違う。なんていうか、身近過ぎるの。怖いくらいの大きなエネルギーを感じる。そして、それは、あまりに強すぎて、何かの使命があるんじゃないか、って思う。でも、何をしていいかわからなくて、ずっと悩んでた。」
(初めて聞いた話だ。。)
レイア「この存在は何なのか、何故、私の中にいるのか、そして、私は何をするべきなのか、それを知りたい。タルキについていこうと思ったのは、この存在が、そうしろと言ったような気がするからなの。」
(そう、だったんだ。好きとかじゃなかったのね(笑))
ドム「なるほど。私もタルキさんには、非常に惹かれました。なんとも言えない希望を感じました。」
(希望、セーフですかね。こっちが、好きは、勘弁してだけど(笑))
タルキ「みんな、僕に何かを感じてくれたんですね。知りませんでした。また、僕にもわかりませんが、私の中にも人を救いたいといっている、何かの存在がいるようです。」
タルキ「目標は、名声(有名になる)ですね!」
タルキ「危険のない仕事を無難にこなし、徐々に名声を得てはいますが、このペースでは、我々の生涯は、やはり、その日暮らし程度で終わります。名声を得るというのは、影響力を大きくするということです。影響力が大きければ、たくさんの人を幸せにできます。さらに、情報力も増えます。つまり、僕やレイアの中にいる存在についてもわかるかもしれない。そして、ドムさんも有名になれば、弟子を希望する者が道場に並ぶでしょう。」
ドム「ありがとうございます。同意です。本来、人(ドワーフも含む)は、名誉欲が強いのです。これに素直にならないと、”気力”がなくなり、種としても弱くなります。そのことをドワーフはよく知っています。しかし、人間は、名誉欲を否定する傾向があります。それは、間違っています。名誉欲は恥ずかしいことではありません。」
タルキ「決まりですね。名声を得るぞ!今後、仕事を選ぶ優先順を変えます。今後はもっと危険な仕事が増えるでしょう。そして、ギリギリの判断を選択することになりますが、覚悟は良いでしょうか。」
三人にあった、今まで、”もやっとしたも”のがあったことが再認識できた。
それは、ドムの一言から解消されたのであった。
(つづく)