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第03話 明かされる転生ポイント

前世でよく見たような絵面に、思わず困惑の声が漏れる。


「なんだこれ。」


ただ同じタイミングで目の前の女神も天を仰いだ。


「あぁ、またやってしまいました!先ほど口頭で説明した転生ポイントの話なのですが、少し前から映像を見ていただきながら説明するように手順が変わったのでした。最近変わったばかりでまだ慣れてないんですよね……すみません。」


「いえいえ。」


謝罪の言葉を口にしながら、こちらに向かってペコリと頭を下げる女神。どうやら、このチュートリアル画面を見せながら転生に関するルール説明をするようだ。

というより、女神の言っている内容が元の世界のサラリーマンと大差ないのだが……。

そんなことを思いながらも、女神に頭を下げられ恐縮な創大は、思わず顔の前で手をぶんぶんと振りながら「大丈夫ですよ。」と連呼した。


女神はありがとうございます。と言いながら再度ペコリとし、「ではこのあたりのポイントの説明は飛ばしますね。」と言いながら画面を次々飛ばしていった。

そして画面に【転生先について】と書かれた文字が出てきたところで、コホンと咳払いをした。


「改めまして……創大さんが転生していただくにあたり、いくつかの説明をさせていただきます。説明の途中でも質問は可能ですので、気になることがあれば随時質問くださいね。」


「あ、はい。」


まんま社会人の口調でそう告げる女神に、反射的に背筋が伸びる創大。

女神は一度ニコリとほほ笑むと、説明を再開した。


「さて、では転生先について説明します。転生先ですが創大さんご自身で選んでいただけます。選べる要素は大きく3つ。」


画面が切り替わり、次の文字が現れる。

①転生する星

②転生する生物

③転生時のスキル

と書いてあった。


「まず一つ目の“転生する星”についてですが、これは創大さんが次の生涯を過ごす星になります。もちろん、星によって環境は様々。地球と同じような星もあれば、更に化学が発展している星。まだ出来て間もない原始的な環境の星。さらには地球には無かった魔法が栄えている星などがあります。」


説明と同時に切り替わるディスプレイを見ながら、創大はふんふんと頷きつつ話を聞く。

最後には「魔法って本当にあったんだ。」と呟いたが、女神は大きく頷くと「ありますよ。」と言った。


「お次は“転生する生物”。これは星を選んだあとに選択していただきます。なぜなら、その星によって生息している生き物が異なるからです。」


まあ、それはそうだろう。

なんとなく予想をしていた展開に、創大はまた一度頷いた。


「最後に“転生時のスキル”ですが...これは転生者だけの特典のようなものになります。」


「特典?」


「はい。転生していただく方はその前世である程度の善行を積んでいただいてます。そのため、神からのささやかなプレゼントのようなものですね。」


そういうと創大がいまいちピンと来ていないことを察してか、女神は指を一本ずつ開きながら説明し始めた。


「例えば、『算の繋がり』というスキルがあります。このスキルの所有者は、ほぼすべての計算を暗算で行うことができます。」


「全て!?」


思わず聞き返す創大に、女神は「はい」と言いながら頷いた。


「他にも『全種共鳴』というスキルの場合は同種以外の有機物と会話ができたり、『力の鼓動』というスキルは自分が傷つけば傷つくほど力が増していくという効果を持っていたりします。」


「はえー。」


自分でも気づかないうちにそんな声が漏れていた。

確かにそれはとんでもない特典だ。いわゆる生まれ持った特殊能力を自ら選ぶことができるということだろう。

しかし、そこで創大はある疑問を抱いた。


「でも、そんな便利なスキルがあるなら全てを選びたがるはず...おそらく選ぶにあたって何か制約ありますよね?」


「察しがいいですね!その通りです!」


教師のようにビシッと創大を指さした女神は、「では、次に注意点です。」と言った。また画面が切り替わる。

そこに書いてある文字をざっと読み、創大は口元で「なるほどね。」と呟く。


「もちろんいくら前世で良い行いをした人とは言え、そこまで来世にサービスをするわけにはいきません。ある程度の節度は守ったうえで、転生をしてもらうために、最初に説明をした“転生ポイント”が活きてきます。」


その言葉を聞きながら画面に映る注意文を見る。

そこに書いてることは非常にシンプルだった。


転生先として選択できる3つの要素……つまり【星】【生物】【スキル】だが、その全ては自分が溜めた“転生ポイント”を消費して選ぶらしい。

そしてもちろん、良い環境の星は高いポイントが必要になるし、チート級のスキルもこれまた同じだ。

つまり、最高の環境で最強の生物でチートなスキル持ち!とかは夢のまた夢……ということなのだろう。


「それに、やはり恵まれ過ぎている環境というものは身を滅ぼす原因にもなります。だからこそ、このような制約を付けさせてもらっています。」


女神の補足を聞きつつ、創大は「まあ、そうでしょうね。」と頷いた。

実際、自分だってそのような環境を与えられて絶対に増長しない!と断言できるほど人間ができているわけではない。


「と、この辺りが転生先についての説明です。何か質問はありますか?」


「いえ、今のところは。」


創大の返答を聞き、嬉しそうにうんうんと頷く女神。


「では、お待ちかねです……!いよいよ創大さんには来世を過ごしていただく転生先を選んでいただきます!」


なぜか無駄に気合の入った声と動作でそう宣言する女神。それに対して冷静に「はい。」という創大。

そんな創大の反応を見て、女神は若干拍子抜けした顔をした。


「えーっと、皆さんだいたいこの瞬間、テンションが上がっていただけるのですが...。」


「あ、なんかすみません。」


「いえいえ!別に大丈夫なんですが……何か気になることでも?」


そう尋ねてくる女神に創大は答える。


「いえ、特にないです。ただ、僕が冷静なのは来世でしたいことがすでに決まってるからです。」


それを聞いた女神は少しだけ眉を寄せながら、申し訳なさそうな声で言う。


「あ、一応言っておきますが、来世の人生自体を指定することは出来ません。例えば、『化学が発展した星で名実ともにナンバーワンの科学者となり様々な新発見で世界をアッと言わせたい!』という願望があるとします。しかし、そのような人生を送れるか否かは定かではないです。その願望が叶えられそうな星や生き物、またスキルを選ぶことができたとしても、実際にそのような人生を送れるかは転生後の本人の頑張り次第になるのです。」


そんな説明をする女神に創大は軽く笑いかける。


「大丈夫です。別に人生にレールを敷きたいわけじゃありません。ただ、どのような環境であれ“自分が何をしたいか”……それがすでに僕の中では決まってるんです。」


「そうですか。……分かりました!」


そんな創大の答えに納得したのか、女神は大きく頷いた。

そして再度気合の入った声でそう言うと、ディスプレイを指さした。


「では、創大さん!ついに創大さんが所有する転生ポイントの発表です!」


そう叫ぶとなぜかニコニコしながら女神はつづけた。


「いやーこの瞬間が一番ドキドキしますよね。私も好きな瞬間です。」


それを聞いた創大はあれ?っと思い尋ねる。


「女神さんも転生する人がどれだけのポイントを所有してるのか把握してないんですか?」


「ええ、そうなんです。ポイントの数量によってこちらの言動が変わってしまっては駄目だからと、転生する方と同じタイミングで私たちも知る決まりになっているんです。」


「そうなんですか。意外と神様の世界もルールで縛られてるんですね。」


「そうですよ!でも、私はこのルール自体は嫌いじゃないです。同じタイミングでポイントを知り、その後ああでもないこうでもないと言いながら転生先を決める方をサポートする。それって意外と楽しいんです。」


そう言って優しく笑う女神をみて、創大は(マジ女神。)と思う。

まあ、それは比喩でも何でもなく、相手は言葉通り本当に女神なのだが。


「では緊張の瞬間です。創大さんの転生ポイントをディスプレイに映しますね。」


「お願いします。」


そう言って頷いた創大を見て、女神も一度頷くと「どうぞ!」と叫び、手を振った。

創大が眺める前でディスプレイの画面が切り替わる。


絆音創大 転生ポイント

【000000000000000】


一瞬(え?ゼロ?)と思った創大だったが、次の瞬間その下で数字が高速で切り替わり始めた。


(なんかよくテレビで見たような演出だな。)


そんな感想を抱きながら、若干ホッとする創大。

ここまで来てやっぱり転生できません!はさすがにショックを受けるからな、と考えながらもぼーと画面を見ていると、ついに画面上で数字がストップした。

画面にはこのような表示が出ていた。


絆音創大 転生ポイント

【53,000,000,000】


(桁が多いな。えーと、一、十、百……530億かな?一見すると、めちゃくちゃ多い数字に見えるけど、基準も分からないし、何とも言えないな。女神さんに聞いてみるか。)


自分が持つ転生ポイントを見た創大はそんな感想を抱きつつ、女神の方を振り返った。


「僕が持ってるポイント数は530億っぽいですね。これってどうなんで...え?」


女神の方を見た創大の口から思わずそんな声が漏れる。

なぜならそこにはあんぐりと口を開き、目をしばたたかせる女神がいたからだった。

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