9話 忠犬サイボーグ登場!!
駄目でした。
長くなりすぎたので、分割で投稿します。
「た、助けてぇ!! 死にたくないよぉ!!」
「煉獄の皆様、どうか命だけはおた・・・・・・はっ、あそこに居るのは!!?
おい、みんな、しっかりするんだ!!
あの、お方が助けに来てくださったぞ!! もう煉獄は終わりだ!!」
泣き叫ぶ仲間たちを、希望に満ちた表情で、A隊員が励ました。
浮遊することで見渡せていたS市の片隅から、自衛隊、最後の猛者が、サギ丸の背後に迫っていたのを視認したのだ。
そう、あの時、S市の災害を目の当たりにした自衛隊で、その惨状に動じなかったのは、正宗だけではない。
ヘリを操縦し、その後、無様に気絶したA隊員たちを叩き起こした、もう一人の狂犬がいたのである。
いや、正確にいえば一人ではない。
「ククククク・・・・・・。 ワンワン!!」
正しく1匹!
揶揄でも誇張でもなく、自衛隊には正しくもう1匹の狂犬がいたのである!
「リック次郎 准士官!! わざわざのご足労ありがとうございます!!」
「おおおぉ、お犬様!! ありがとうございます!!」
胴体に巨大なアームの生える機械を背負う秋田犬リック・次郎に、次々と感謝の言葉を贈る自衛隊の面々たち。
これに面食らったのは、炎のドクロと化していた煉獄の総隊長サギ丸である。
「な、なんという惨めな有様よ!!
たかだか犬畜生にすら、頭を下げて謝辞を謡うなど!! おお自衛隊よ!!」
柄にもなく同情するサギ丸の後ろで、彼が手放していた300㎏を超す改造バイクをやすやすとアームで持ち上げるリック・次郎。
リック・次郎は、たかだか犬畜生などではなかった。
完全実力主義の自衛隊だからこそ准士官まで上りつめた日本最強の闘犬なのだ。
ヘリすらアームで操縦してしまう、その頭脳はIQにして130以上。
そしてその強さは、一般的な自衛隊50人がかりでも手も足も出ない程に屈強なのである。
「ウオオーーーーン!!」
雄たけびを上げるリック・次郎のアームから、改造バイクがサギ丸へ剛速球のように放たれた。
しかし、炎をまとうドクロの頭蓋は口元つり上げせせら笑う。
たかだか300キロの鉄の塊など『煉獄』状態の彼にとって敵ではないのだ。
ズボボボオオオォウ!!!
瞬間的に放たれた炎の矛は、バイクを貫通してリック・次郎に直撃する。
「キャオーン!!」
空中を横走りする火柱が直撃し、バイクもろとも爆発炎上するリック・次郎。
しかし、ここで終わるリック・次郎ではない。
焼け焦げる自身の体にかまう事無く、今度は拾い上げたこん棒を勢いよく投げつけたのである。
そしてサギ丸の顔は一つ。
つまり、どんなに威力があろうとも火矛も所詮は、一本なのだ。
この点に鋭く着目したリック・次郎、捨て身の2連撃だった。
「なかなかどうして、やりおるわ!! しかしなァ!!」
火矛の戻りが間に合わないサギ丸、万事休すかと思われた時。
華麗なステップで『流れ』の領域内に入り込むサギ丸。
ガッキィイイイイン!!
勢いそのまま思い切り『流れ』の反発力に弾かれたこん棒は、リック・次郎の体を抉った。
「キャキャーーン!!」
「身のほど知らずの四つ足毛玉よ!! 地獄の炎で灰となれィ!!」
ダメ押しと言わんばかりに放たれた、サギ丸渾身の追撃がリック・次郎を貫いた。
文字通り負け犬となって、火だるま状態でこん棒と吹き飛んでいくリック・次郎!
「ああああ!! リック次郎 准士官!!」
宙に浮かびながら泣き叫ぶA隊員。
領域内の全てを浮かせて無力化し、領域外の全てを弾き飛ばす『流れ』。
まさしく『無敵の盾』の通り名にふさわしい完璧なる鉄壁だった。
だが領域内にいるにもかかわらず、サギ丸や煉獄同盟の体は宙に浮いては居ない。
このからくりは、サギ丸が体内の臓器の半分を取り出し『流れ』対策用の『相対性磁石』を埋め込んでいるからに他ならなかった。
しかし、体内に収まる程度の磁石と全長30mの『流れ』では磁力のつり合いは取れない。
「ぬぬぬぬ、ぬうおおおおおお!!」
たまらず『流れ』の外へと、飛び出るサギ丸。
びりびりに破けた特攻服から覗く、サギ丸の体内から突き出る異形の磁石。
戦いが進むほどに人外そのものになっていくサギ丸の容姿!
「ひィ!!」
それを見たA隊員は、もはや絶望的となった自分の末路を想像しお漏らししてしまった。
恐らく気持ちは同じなのだろう。
A隊員の仲間たちも息を合わせるように、股間から臭い湯気を立ち上らせていた・・・・・・。
犬の身でありながら最善を尽くしたリック・次郎が弱いのではない。
最強の『煉獄』と無敵の『流れ』を使いこなす、煉獄同盟が異常な強さなのである!
「ウハハハハ!! お次は本命、皆口よ!! 」
「待ちくたびれたね」
「ほざけぇ!! オラァ!!」
オラァ!! と、叫ぶサギ丸は、翼のように両手を広げ醜悪ヅラをつき出した。
そして、つきだす顔から猛然とした勢いで祐介へと炎柱が噴き出す。
柱の太さは顔面程度にとどまるが、まっすぐ10mほど伸びてなお威力の落ちない最強の火矛が、今度は祐介を急襲する!!
最初に1話を投稿してから、やらかしすぎなくらいに、やらかしているわけですが。
もう何かを宣言するのを止めたのを、止めていたのですが、これもまた止めます。
こんなに小説を書くのが難しいとは、思いもよりませんでした。