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3話 衝撃の悲報!! 祐介すでに死亡!?

1話、2話同様、一部キャラクターの言動のずれが酷いので

 近日中に大幅に書き直します。


 過ぎさる今はもり、やがて過去へと姿を変える。

 もる過去へと思いをせても、二度と今には戻らない。

 だから。


「そんな・・・。 こんな事って・・・」


 だからサヤ子は、泣いていた。

 崩れ落ちて、泣いていた。

美人教師の涙の理由わけは、とある一つの確信だった。

 そう、確信。

 顔を見た時、声を聴く時、腕にすがりついた時、彼女の心に刻まれていった、漠然ばくぜんとした違和感たちが、その一言で確信へと変わったのだ。

 僕自身を犠牲にした、という去り際に残した、彼のその一言で・・・・・。


「ううっ・・・祐介君、もう既に死んでいるのね・・・」 

「「な、なんだとォ!!?」」


 声を重ねた、馬鹿づら二人は、武装公安、余瀬よぜと丸井だ。

 皆口祐介、既に死亡という、受け入れがたいサヤ子の言葉。

 ついに、いてもたっても居られなくなった2人は、彼女のもとへと猛然と近寄る。


「と、とりあえず七瀬氏の身柄を確保!!」


「七瀬さん、詳しく話を聞かせてもらいましょうか」


「いえ、詳しくはわかりません。 

 私ていどの頭の良さでは、まったく理解が及ばないのです・・・」


「そ、それはマズいな・・・」


 余瀬よぜが口にしたマズいという言葉には、2つの意味が込められていた。


 一つは、今後の対策が、完全できなくなったという事である。

 明らかに、目の前で起きてる事と、彼女の言ってる事が噛み合わないのだ。

 これでは、対処のしようがない。

 彼女の言葉を、嘘だと否定するのは簡単だが、自分と同じく東大卒の彼女が、そうそう嘘をつくとは思えない。

 それに、皆口祐介と会話したときに、違和感を感じたのは、自分も同じだったのだ。


 もう一つは、東大主席の彼女が『理解できない』という事だった。

 これは、彼女と同レベルの頭脳や肩書を持つ余瀬よぜや丸井にも、彼の言動が理解できない事を意味してしまうのだ。

 つまり実質的に、3人の頭が皆口祐介の考えに遠く及ばず、彼の頭脳に2度も完全敗北したことに、なってしまう。

 これはまずい。 特に、サヤ子が理解できないのは非常にまずい・・・・・。

 苦々(にがにが)しい顔で、考え込んでしまう余瀬よぜ

 ぶるぶる怒りに身を震わせる、隣の丸井も気持ちは同じだ。

 渦巻く怒りに身を任せ、舌打ちかました丸井のデブは、サヤ子に激しく吠えてかかった。


「そ、それなら・・・・・。 それならアレは、何なんだ!!」



 シュン! シュン! シュン!! ヒュヒュンヒュン!!  グオオオオオオォ!!


 丸井が指さすその先には、次々に飛来してくる、400前後の火炎瓶や出刃包丁でばぼうちょうを、紙一重でけ続ける少年の姿があった。

 そして、この『ける』という単純な行為も、少年にかかれば半端ではない。 

 つまりは、極限スリルを無意識的に熱望する少年は、瞳を閉じながら、一切の無駄のない、かろやかなダンスステップで避け続けているのだ。

 少年の名は、皆口祐介。

 既に死んだと噂されている、前代未聞の天才少年である。


 スタタッターン! グイ! タターン! ズタタン!! 

 

 祐介のいきなステップにより、殺意と狂気が吹きすさむ、緊迫した戦場は、世界的ダンスグループのパフォーマンス会場のような、きらびやかな空間へと変容してゆく。


「僕は、あまりにも強すぎるんだよ・・・」 


 そう悲し気につぶやき、高速で飛来する出刃包丁の一本を、詩集シェイクスピアで音もなく白刃取りする祐介。

 そして、暴力的なしおりを挟んだ詩集シェイクスピアを空へとほうると、ゆっくりと手のひらを自分の顔の前に持っていき、自らの顔を隠す。


「なんだァ!?」

「何かヤベぇぞ!」


 顔を隠した手の、中指と薬指だけを器用に動かし、相手から自分の目だけ見えるような形を作る祐介。


「「!!?」」


 明らかな挑発行為だった。

 だがしかし、絵になった。

 叩きつけられた、火炎瓶の炎が地面にいろどりをえることで、さらに幻想的になっていくS市の戦場で、ささやかな英単語を口にする祐介の姿は、ハリウッドスター顔負けなのだ。

 これは、見る者の誰しもが、そう思ってしまう厳然たる事実である。


「かっけぇ・・・」


「ただのアホだろ、ぶっ殺してやる!!」


 ドドバシュウ!!!


「「ウワーッ!!」」


 キレた雑兵、見とれた雑兵、まとめて吹き飛ぶ二人の叫びが、空を切り裂き、虚空へ消えた。

 祐介に、ちょいと近づくその瞬間に、謎の壁が、彼ら二人をバイクごと、はるか彼方かなたへ弾き飛ばしたのだ。


「なんだ今のは!?」


「やべぇ!!」


「皆の衆!! 正面からは、近づくな!! このまま遠くから仕留めろォ!!」


 煉獄同盟は、知るよしもないが、謎の壁の正体を紐解くカギは、上空の金ヘリと、祐介のダンスステップにあった。


 空気力学には、ダウンウォッシュというものがある。

 これは、ヘリやジャンボジェットの飛空を発端ほったんとした、下向きに起きる突風の事だ。

 凄まじい強風を地面にたたきつける、このダウンウォッシュ効果を、祐介はたくみに利用し、煉獄の2人をバイクごと弾き飛ばしたのである。


 しかし、ダウンウォッシュの強風は、横には吹かず、バイクを飛ばす威力もない。


 これらの問題を瞬時に、そして同時に解決したのが、彼のダンスステップだった。

 群れなすバイクの強烈な振動を、自身のステップがもたらす微量の振動で寸分狂わず誘導し、正確に放出したのだ。

 地軸の強大な振動に震えた空気が、強風を正確に操作したのである。


 だが、無色、無音の風の動きを、彼は、どう判別したのか。


 ここで出てくるのが、詩集シェイクスピアである。

 つまり祐介は、放り投げた詩集シェイクスピアの対空状態の動きで、風の流れを正確に読み取っていたのだ。

 そして的確な挑発で、見事に攻撃対象を風の吹く方向へと直進させていた。

 CO2や地面すら、彼の計算と知恵にかかれば、もはや万能物質なのである!


 だが、祐介が宣告したタイムリミットまで、あと10分30秒しかない。


「クソォ!! これだけ徹底的に集中攻撃をしかけているのに、まるでカスりもしねぇ!!」


「ひるむんじゃねぇ!! 体力が尽きるまで、追い込みかけんぞォ!!」


「正面からはダメだァ!! もうアレを使うしかねぇ!! 行くぞォ!!」


「よォし!! 任せろォ!」


 行くぞ! というミイラ男の合図に呼応し、任せろと吠えたのは、先ほど祐介に馬鹿にされた煉獄同盟・副隊長、隻眼、片足の男だ。

 さらに隻眼の男は、巨大な木刀を天高く放り投げ、大声で「アレ」の名を叫ぶ。


煉獄同盟れんごくどうめい三段式さんだんしき半月はんげつ戦法せんぽう『流れ』の準備をしろォ!!」


 「「「「ゥオオォォオオオオオオォオオォォ!!」」」」 

 

 隻眼の男の合図を聞くや否や、後方待機していた200台のバイクが、祐介の両サイドを一瞬で駆け抜ける。

 仲間たちが『流れ』を発動させると瞬時にさとった、投擲とうてき中のミイラ男たちは、攻撃をやめ、クルクルとバク転し後方へさがっていく。

 それに驚いたのは、上空で待機している金ヘリの搭乗者たちだった。


「ホワッ!! オイ! なにがどうなっておる!! もちろん、ワシが50億ドルも賭けておる煉獄同盟が勝つんだよなぁ!?」


 手足が生えたダルマのような、醜悪しゅうあくきわまる人間もどきが、金ヘリ機内きないで荒れ狂う。

 スーツやブーツ、時計に指輪、さらには差し歯に至るまで、金、金、金の金づくめ。

 そんな金色こんじきの悪趣味で身を固めた、怒りの暴れダルマとは、悪徳不動産王N氏の事だ。


「ひとまず、お、落ち着いてださい!! ヘリが墜落してしまいます!」


「落ち着けぇ!? ボケッ!! 賭けに負ければ、墜落するのは、ヘリではすまん!! 

  多額の負債を抱えてしまう、ワシの人生が墜落してしまうのだぞ!!」


 慌てて制止してきた、同乗している専属のボディガードへ向け、半狂乱で怒鳴るN氏。

 さらにヒートアップするN氏の怒りを見て、いよいよアレの出番か、と専属ボディガードは、ポケットの中から宝石箱を取り出した。

 それを見るや否や、もの凄い勢いで、宝石箱に飛びつくN氏。

 指輪ケースほどの大きさしかない、金ぴかの宝箱からは、大小さまざまな干し肉がお目見えした。

 その干し肉を、夢中でがっつくN氏!

 この干し肉こそ、鬼畜サイコの極地きょくちする、N氏ならではの、醜悪なる珍味。

 その名も、人肉じんにくジャーキーである。


「うォォ!! なんという旨さ!! 

 いつ食べても債務者さいむしゃの人肉は、格別よのォ!! ワーッハッハ!!」

 

 不動産王という肩書のほかに、ヤクザの組長、闇金社長といった顔も持つN氏。

 彼は、彼が事業で餌食えじきにした被害者の肉を加工し、その肉を、塩に変えた彼らの涙で味付けをして、むさぼり食らうのが趣味だったのだ。

 悲しみの干し肉により、あっと言うまに落ち着きを取り戻したN氏に向けて、専属ボディーガードが状況説明を始めた。


「N様、どうやら『流れ』とは、背後という死角から

  流れるように襲撃するという、恐ろしい戦法のようですね」


「なるほどのォ!! これでは、っくき皆口は、ひとたまりも、あるまいて! 

 ウワーッハッハ!!」


 だが次の瞬間、そんな予想を、煉獄の戦術は、軽く飛び越えた。


 ドドドドォバァ!!! バッキバキ!! バッキィイイイイイイ!!

 ボボボボッ!! ドガガガーン!!


「なにィ!!!」


 衝撃の光景を目の当たりにして、思わず叫んだ専属ボディーガード。 


 なんと、祐介の背後に回った大型バイクの群れは、互いに凄まじい音をまきちらしながら、衝突を重ね始めたのである。

 まるで曲芸師のように宙返りをしながら、またがるバイクを放棄する副隊長と、雑兵たち。

 そして、空中で宙返りをしながら、積みあがる黒鉄くろがねの山に次々と着地していく。


 ズワアアアアアン!!


 すべてのバイクが衝突し終わると、祐介の背後には、巨大な三日月型の壁が完成していた。

 壁の高さ、なんと驚異の30M。

 まるで総合芸術のように、緻密に折り重なる巨大バイクのオブジェクトは、彼らの凄まじい練度をうかがわせるには十分だった。

 

「そぉうら!! いっちょう上がりィ!! 微塵みじんに吹き飛べ、皆口 祐介ぇ!!」


「ド派手に飛び散れ、くそボケ野郎!!」


「『流れ』の第一準備完了ォ!! 

 右足の恨み、1000倍返しで、叩きつけてやらァ!!

 サギ丸総長、合図お願いします!!」


「僕からも、お願いするよ・・・」


「ほざけ皆口!!」


「てめぇ、なに余裕ぶってんだ!!」


 煉獄同盟・三段式さんだんしき半月はんげつ戦法せんぽう『流れ』。


 この煉獄同盟、最強戦術のルーツは、3年前に全国制覇を成し遂げ、もはや彼らが国内で戦う相手を失った時代にまでさかのぼる。

 血に飢え、戦いを渇望かつぼうする彼らが、次に選んだ標的は、史実に残された戦国時代の最強武将たちだった。

 つまり彼らは、想像上の強豪と日夜にちやイメージトレーニングに励んでいたのだが、結果的に、それが驚異の戦術へとつながった。

 『流れ』、その戦術の正体は、ノブナガの鉄砲三段撃ち、武田騎馬隊の特攻力、上杉謙信の秘儀、空禅くうぜん空雀からすずめを合体させた、最強究極奥義であった。


 後方の本陣で、ホッケーマスクの小さな穴に、キセルを器用に突き刺して、うまそうに煙をくゆらしていたサギ丸も、とうとう重い腰を上げた。

 合図が出たとあれば、流れの発動準備は、8割がた終わっている。

 となれば、うかうかしていると、待ちこがれた最高の至福である、皆口殺害を、直接楽しめなくなるからだ。


「それだけは、あっちゃならねぇ・・・・・・」


 シルクハットを、いよいよ脱ぎ捨て、両角の生えた、戦国武将のカブトをかぶるサギ丸総長。

 彼が身にまとう純白の特攻服と戦国武将のカブトは威圧感バツグンで、見るものを震え上がらせた。


「ウラァ!! 俺も出陣するぞ! おい、準備はできてるか!?」


「万全にございます・・・」


 ひざまずき、こうべを垂れる、雑兵たちは、3人がかりで持ち上げた巨大なこん棒を、恐る恐る差し出す。

 ズッシリとしたソレを、やすやすと片手でむしりとるサギ丸総長。


「よォォし!! やるぞォ!! 」


 ブブブブゥゥン!! ブン! ブン!!


「「うおああああああああああああああ!!」」


 立ち上がる瞬間に、豪快に素振りをするサギ丸のこん棒が直撃し、スーパーボールのようにね回って、地面に叩きつけられる雑兵3人。

 彼らの骨折箇所を合わせると、軽く1000は超えるだろう。


「なんてザマだよ、てめぇらは!! それでも煉獄同盟か!! 雑魚はいらん!! 死ねィ!」


「お、お許しあれ・・・・・・。 おゆウッ」


 俺たちは、かつ神輿みこしを間違えたのかもしれない。

 今更すぎる後悔を胸に、3人は、なかよくこの世に別れを告げた・・・・・・。

 そんな三人のズタボロになった亡骸なきがらを、大型バイクで弾き飛ばし、祐介のもとへと直進するサギ丸。

 瞬く間に時速200キロを超えた、彼のバイクのスピードなら、祐介へ到達するまで5秒もかからない。 


「こんな程度じゃ、済まさねぇ・・・・・・。 

 『流れ』の前に、俺の奥義をたんと食らいな皆口よォ!」


 次第に、そして確実に終わりの時へと突き進む、鮮烈なる戦い。

 

 生死不明の祐介。 自衛隊の狂犬、正宗。 公安の余瀬よぜと丸井。

 涙にぬれるサヤ子。 そしてサギ丸率いる煉獄同盟。 金ヘリ機内の悪徳N氏。

  

 引き寄せられるパズルのピースが、時代の終わりで重なり合うとき、その瞬間はおとずれる。

 祐介が宣告した時まで、残り15分30秒。

 埋まるパズルに描かれた、衝撃の結末まで、残り15分30秒。


頑張ります!

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