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EP4 幕開け

「やっと終わった〜」


 ユノは達成感とあまりの疲労感から、だらしない声を上げる。荷物の搬入はユノの予想通り苦労しなかったが、予想以上に苦労したのは部屋の掃除だった。エル一人で住むには広すぎるこの家はダイニングと彼の部屋以外物置と化しており、乱雑に放り込まれた魔道具からガラクタまでの様々な物品を選別し整理するまでに一番時間を要していた。因みにユノの部屋は二階にある。


 しかし、ユノは昨日の内に退去の手続きを終えているのでこれにて引越し完了となる。出会って一日で弟子入り、二日で同居というかなりの急展開だが、早く修行したいユノにとっては嬉しい誤算だった。


「昼できたから降りてこーい」


 一階からエルの声が聞こえてくる。家事全般はユノがやるという契約だったが、今日ばかりはエルが昼食当番だ。食卓に並んでいるのは二人前のパスタ。簡素なものだろうと予想していたユノだったが、一階に降りて目にした魚介類をメインとしたパスタは、レストランのものと比較しても遜色がないほどのものだった。


「す、すごい...」


 ユノはエルの料理スキルに感嘆を(こぼ)す。


「昔知り合いの料理人に教わってな。冷める前に早く食べるぞ」


「そうですね......いただきます」


 若干圧倒されつつ、席に着き食べ始めるユノ。


「美味しいっ...」


 ユノは哀しく呟いた。孤児院で磨いた料理スキルには自信があったユノ、だが敢え無く完全敗北である。家事を私に任せるくらいだから。とエルのレベルを低く見積もっていたのも相まってか、意気消沈している。


 ユノの落ち込み具合に驚いたのか、珍しくエルも慰める。


「いずれは料理も戦闘も俺を超えてもらうんだから、そんなに落ち込むな」


「はい......でもこの美味しさは、予想外過ぎます。本当に。今度教えてください」


「ああ」


 エルとの会話を終えると、ユノは黙々と食べ続けた。悔しさによるものか、じっくりと味わいながら食べているからか、それともそのどちらもか。どれにせよエル邸でのユノの初食事は静かに終わった。



「それで、今後の方針なんだが......」


 未だ無言だった食後の空気を破ったエルの一言に、ユノは耳を傾ける。


「一月は俺との訓練になると覚悟しておけ。魔物との戦闘は一通りの訓練が終わるまで禁止だ」


「...あの、クエストは?」


 ユノは困惑した様子で訊ねる。


 B級以上の冒険者には月ごとのノルマがあり達成しないと給料は支給されないのだ。逆に言えばノルマを達成すれば素材買取だとか討伐報酬だとかの他に結構な給料が支給される。これがB級以上の冒険者がプロと呼ばれる所以であり、冒険者という職業が子供の憧れになる理由の一つだったりする。


 エルは昨日の騒動で達成しているが、ユノはまだ今月のノルマを達成していない。ノルマの達成はB級昇格のときに散々ギルドから守れと言われることであり、それが原因の降格も頻繁に行われているが故の質問だった。


「警告一回貰うくらいで大したことはない。それが嫌なら俺の訓練を一月以内にクリアすることだな。逆も然り。全てはお前次第だ、ユノ」


 同種の警告を二度くらうと一つ降格なのだが、先程までとは対照的にユノは好戦的な笑みを浮かべた。


「私の力が師匠の想像を超えればいいということですね。受けて立ちます!」


「まあそういうことだ。あと師匠呼びはやめろ」


「早く終わったら料理、教えてくださいね」


「早く終わったら、な」


 改めて修行の難易度を思い浮かべるエル。


「師匠の想像なんて引き離すくらいの結果は出すつもりなので、ご心配なく」


 しかし自信満々に宣言したユノを見ると、どうでもよくなった。


「自信満々で結構。もう師匠呼びは治りそうにないな、こいつ」


「うーん、まあエルさんでもいいんですけどね、雰囲気から入ることも大事だと思うんですよ」


 静閑な食事中の空気は何処へやら、緩い空気の中、エルとユノの師弟同居生活は幕を上げた。



 プロローグ 了

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