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08.決定の裏側

今回は雷人の視点です。

色々と設定が多くなってきますので読みにくいかもしれません。

ブクマ&評価ありがとうございます!

「主様ー。あの人間さぁ。主様の苦労も知らないでよくあんなこと言えたよねぇ。オイラ思わずあの人間食べようと思っちゃった。」


 うるさくしてしまい話が進まないと雷人に怒られ先ほどは黙っていた蒼藤は少々大きめの尻尾をパタパタと振りながら雷人に聞いた。


「貴方先ほどみのりさんに私には敬語を使えと言っていたのに自分はいいんですか。」


「えー?そんなこと言ったけー?」


 それを聞くと雷人は溜息をついた。蒼藤には少々人間に厳しいところがある。地獄にいる者としては正解なんだろうが地獄には少ないが人間(亡者)も働いているので問題を起こすこともしばしばあった。


「今日はみのりさんには色々とありすぎましたし、明日からでも働いて貰いたいですからね。」


「ふーん。主様は人間にちょっと甘いんじゃない?まあ、主様がいいなオイラは何も言わないけど。」


 そう言うと蒼藤は消えた。


 人間に甘い、ね……。

 

 いつもあまり表情を変えない雷人は少し寂しそうな顔をした。


【みのりが気絶しているときに起きた事】


「ですから、閻魔大王とイザナミ様。本田みのりという人間はここで保護するべきです。これ以上被害を出しては地獄は混乱する一方です。」


 とある会議室のような場所で地獄のトップである閻魔大王と黄泉の国(地獄ができる前の死者の国)の女王である伊邪那美命に雷人は言った。


「それでもねえ。いくら前例があっても生者があの世(こっち)にいるのはまずいよぉ。しかも()()()の私にはわからないけど君たちにとって彼女って美味しそうなんでしょ?それだとここのほうが危険じゃない?」


 立派なひげの持ち主の閻魔大王はまるで子供に言い聞かせるように雷人に言った。地獄のトップとして大丈夫なのかと思うのだが……。


「そうじゃぞ(いかづち)。お主も多忙の身、ずっとあの娘にくっついている訳にもいかんじゃろう。いくら生者には手を出さない決まりがあってもあんな美味しそうな魂などお主が目を離したすきにパクりじゃ。そうすればお主も生者を守らなかった者として魂を食べた者と一緒に最悪死刑、いや死ぬほうがましな拷問を死ぬまでじゃな。」


 そう言うと伊邪那美命は扇で口元を隠しながら笑った。

 雷人もそうだがあの世で生まれた者もいつかは死ぬ。鬼は個体差があるが体も年をとるので老いで死ぬ。しかし、雷人は体は20代くらいで年をとるのが止まっいるので心臓を刺されるなどの致命傷を得ない限り死ぬ事も無い。しかも致命傷では無い限り大抵の傷はすぐに治る。腕や足ですら切断れても後から生えてくる。それは長く神に仕える為の体質の様なものだった。

 拷問では致命傷など与えられない。雷人にとって死ぬまでの拷問などこの世が終わるまで苦しめと言うものである。


 そんなこと百も承知だ。それでも……。


「それでも。あの人間を守りたいのです。」


「妾にはあの娘にそんなに価値があるとは思えないのう。あるとしても、問題になっておる怪異をおびき寄せる(おとり)や餌くらいになるくらいじゃのう。」


 その言葉を聞いた瞬間、雷人は目を見開き殺気を放ちはじめた。


「じょ、女王!それは言い過ぎです!雷人くんも落ち着いて!」


「おお怖い。(いかずち)や、実の祖母に殺気を放つものではないぞ。」


 今ここで問題を起こせばみのり(あの人間)を守れない。そう思い雷人は殺気を放つのを止めた。


「すみません。でしたら私の剣術の教え子の元で働かせるのはどうでしょう。あの者も人間、それに腕は確かですし本田みのりと同じ女性なので心配無いでしょう。」


「あー、閻魔殿にあるあの甘味処にいる桜くんか。確かにその子だったら大丈夫か。女王、雷人くんも覚悟の上でこう言っているのですから。」 


「………しかないのう、可愛い孫の頼みじゃ。今回だけじゃぞ。」


「ありがとうございます。何かありましたら全て私が責任を負います。」


 そう言い雷人は部屋を出て行った。 


「まったく。(いかずち)は本当に人間に甘いのう。地獄で働いているのが不思議なくらいじゃ。」


「よっぽど本田みのりという人間が気に入ったのでしょうか。あそこまで必死な雷人くんは初めてです。」


「人間に恨みなんて無い筈がないのにのう。人間達に何をされたか忘れるほど馬鹿ではないだろうに。」

閻魔大王は初の亡者という説があるので元人間とさせていただきました。

いちいち伊邪那美命と書くのは面倒なので次からはイザナミと表記させていただきます。

また、雷人がなぜイザナミの孫なのか後の話でわかるようにするつもりです。


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