07.地獄で働く………?
『そういえば、雷人さんって人間なんですか?鬼ではなさそうですけど…。』
雷人さんから貰った着物に着替え終えてからふと思ったことを聞いてみた。それにしてもこれ高そうだな……。
「多少人間の血は入ってますが人間ではないです。鬼でもないですね。神と人間の間と言えば良いのでしょうか。少々説明し難い種族ですね。」
神と人間の間……。姿とか人だけど確かに容姿が人間離れしているしこれで人間ですって言われても信じられない。
「あ、言い忘れてました。貴女には少々働いてもらいますよ。」
ん?何と仰いました?私が働く?
「おや?聞こえませんでしたか?」
『いいえ、聞こえましたけど……。え?何でですか?』
「生者の貴女をあの世で保護するという代わりに貴女に働いてもらうと決まったんです。」
『え!そんなの聞いてないですよ!』
「貴女が気絶しているときに閻魔大王や伊邪那美命様と話し合ったんですよ。」
『なんで!?本人に同意無しで決定するとかあり得ないじゃないですか!』
地獄で働くってことはさっき等活地獄って所で見たように人に拷問するんでしょ?いくら地獄でもそれは非情すぎる!
「…………………勝手に物事を決めたのは謝ります。しかし、しばらくここにいるんですからずっと部屋にいるとかは無理でしょう。それに私にも仕事はあるのでずっと一緒にいることはできません。」
『そのことがなんで働くことと関係あるんですか!』
「地獄でも犯罪はあるので貴女を守るためです。私の代わりを探しても人手不足なのでいないんですよ。なので私が信頼する者の所にいて欲しいのです。しかし、なにもせずにいるだけなのは迷惑がかかるので働けと言うことです。」
雷人さんが言いたいのはよくわかる。雷人さんって絶対上のほうの役職とかついてそうだし、さっき徹夜とか言ってたから忙しいのは馬鹿な私でもわかる。それでも……。
『それでも。私には拷問なんて出来ません。』
「…………。私の言葉が足りませんでしたね。大丈夫ですよ。人間に拷問なんてさせません。」
『え!地獄での仕事ってことは拷問でしょ!』
「あの世でも生活はあるので拷問以外の仕事もありますよ。それに人間に人間を拷問させるなどそこまで非情ではないです。貴女には閻魔殿にある甘味処で働いてもらいます。私の知り合いが経営しているので信頼出来ますしね。」
『そ、そうなんですか………。あー、よかった……。』
「今日は色々あって疲れたでしょう。もう休んで貰って結構ですよ。」
言われると確かに色々ありすぎて凄く疲れた気がする。あ、でもその前に聞かなくちゃいけないことが
『その、私はどこに住めばいいのでしょうか?』
「女子寮があるのでそちらに住んで貰います。女性が周りにいた方が貴女も気が楽でしょうし、私の知り合いも多いので安心ですからね。今日はここに泊まってください。」
『わ、わかりました。私がこの部屋を使ってことは雷人さんは今日は家に帰るんですよね?』
「いえ、まだ仕事が残っているのでそちらに戻ります。」
部屋にある時計を見ると10時過ぎてる…。きっと夜の10時だよね?それでも仕事が残っているって…。
「明日は閻魔大王と貴女が働く所に挨拶をしに行きます。7時頃に戻って来ますので。それではお休みなさい。」
『すぐ寝るようだったら私着物に着替える必要なかったのでは…。』
思ったことが声に出てそれが聞こえたらしく雷人さんはこっちを見ると……。
「あ、うっかりしてました。やっぱり3徹目だと頭が働かなくていけませんね。」
コツンとイケメンのお茶目ポーズ……。じゃなくて!
『3徹目って!雷人さん寝てください!』
「大丈夫ですよ。それではまた明日。」
そう言うと雷人さんは部屋を出て行った。それはもう呼び止める暇もないほど早く。