38.不完全な神
ヒルコの過去のようなものです。少し長めです。
不完全な神、そう初めて呼ばれたのはいつだったろう。3年たっても歩くことすら出来ない僕は捨てられた。あの時の親である神々の顔は今でも覚えている。思い出すだけで腸が煮えくり返るような思いだった。僕だってちゃんと愛情を注いで貰いたかった。
流れ着いた場所では僕は神として祀られた。当然だ僕は正真正銘の神なんだから。そして僕はいくつかの場所にわかれ色々な場所に祀られた。僕はそのうちの1人でしかない。ある日、僕はあまりの寂しさに耐えきれず1人の人間を喰った。少しだけ寂しさが紛れたような気がした。そしたら人間に封印された。本霊の僕に助けを求めたが人を喰った僕はいらないと言われた。
それから長い間僕は考えた。どうして僕はこんな目にあっているのだろう。どうしてこの醜い体で生まれたと言うだけで皆んな嫌うのだろう。確かに人を喰ったのは悪いことだけど寂しいと感じてしまったのは誰も構ってくれないからじゃないか。
「だったら僕を独りぼっちにした他の神々が悪いのでは?」
そう考えがある日浮かんだ。そうだ、そうに違いない。この体に生まれたのも、封印されたのも全部他の神々が悪いんだ。
ある日声が聞こえた。人間の形をしているけど人間ではない、でも神ですらないものが僕が封印された社の前にいた。
「お前は復讐をしたいか?」
神である僕にお前とは失礼だなって思ったけど、復讐はしたいと思った。でも、力が足りない。するとそいつは「神と人の間にできた存在を知っているか?」ときいてきた。もちろん知っている大昔に僕の兄弟達にもいることがわかっている。
「そいつらを喰えば力は戻る。いや、それ以上の力を得られる。」
そんなのは無理だ。だって僕はここから動けないし、そいつらは大昔に人間達に滅ぼされたと聞いている。それはそうと、こいつが封印を解けば僕は自由になれるんじゃないのか?
「それは無理だ、出れたとしてもお前はすぐに消滅する。」
じゃあ、無理だよ。そいつらが生き残っていたとしてもぼくはここを出れない。するとそいつは何かをこちらにどんっと落とした。それはかなり小さい子供で目の前の奴と少し似ていた。
「それは例の一族だ。とは言ってもかなり力は弱い。しかし、これだけでもかなりの力が得られるだろう。」
よく見るとまだ気を失っているだけでまだ生きているらしい。苦しそうだが息はしていた。それにしてもこの子供が例の一族ってことは目の前のやつもそうなのか?こいつは仲間を喰えと言っているのか?
「私も神々が許せなくてね、そのためなら同じ一族でも喜んで生贄に出すよ。十分な力が取り戻せるまで私がここに運んできてやろう。まあ、最初はそいつを喰うがいい。」
そう不気味に笑った。まあ、いっかどうせくれるんだから喰ってもいいか。それに目の前のこの子供はとても美味しそうだしね。
僕は封印の結界の隙間から手を伸ばした。長い間に作ったこの隙間なら問題無いだろう。僕が子供に触れた瞬間子供が目を覚ました。
「な、なに?おかあ……!!!」
子供が叫ぶ前にそいつは子供を切りつけた。なんだこいつの子供だったのか、いつまででも親はどうしようも無いんだね。でも、遠慮なく喰べるけど。
そいつは「魂まで喰え」と言ったから遠慮なく食べた。以前に食べた人間の数倍も美味しかった。そして、力がみなぎるような感じがした。
それからそいつはたまに例の一族の生き残りや人間として転生したもの達を連れてきた。その度に僕は食べた。人間にも転生するんだねって聞いたらかなり確率は低いがあるんだって。
かなり喰ったら後は札を剥がせば封印が解けるところまできた。でもそいつは封印を解かなかった。
「封印はいつか人間に解かせろ。その時はその人間を言うことを聞かせるために名前も縛れ。そして、その身体ではなく大雷の下の娘の身体を乗っ取れ。きっとお前に合うだろう。」
だったら今そうしてよって思ったけど。無理なんだってさ。自分で探すのは面倒臭いなって言ったらさ、「大丈夫だ、心配せずとも向こうからやってくる。」って言ったんだ。それで、
「さあ。私を喰え。」
だってさ、僕が復讐するところ見なくてもいいの?って聞いたら自分はかなり力が弱いからもう長くないんだって。本当かな?まあ、ここまで力が取り戻せたし本人が望むなら食べてもいいよね?ってことでそいつのことは痛みが感じないように一瞬で殺して喰ってやった。味は…まあ、今までよりは美味しいくはなかったかな。
それから多分100年くらいかな?経ってからあいつの言うとうりに人間の子供が来た。そしたら可笑しいくらいにその子供の後に男の格好をした女が来た。そいつはすぐに僕の兄弟である大雷の娘だとすぐにわかった。
子供はみのりっていう女の子を助けて欲しいとぼくにお願いしてきた。封印のがだいたい解けていたからその時はみのりっていう子供を力を使って見てみたら今までにないほど美味しそうな魂を持っていて例の一族の生まれ変わりだとすぐにわかった。だから春っていう子供と契約をした。大雷の娘がうるさかったから春に封印が解かせて僕の神気を注いだ。あいつの言った通りボクに合いそうな器だった。そういえばあいつに教えてもらった大雷の娘の真名を言ったら驚いてたな…。
それから僕は自由の身になったから好きなようにした。美味しそうな魂を持っているやつは喰ったし、弱そうな神も喰った。他の神々にバレるかなって思ったけど案外上手く隠れていたんだ。それから高校生?になった春に会いに行って、色々な怪異を使って少しづつ大雷の娘に僕の神気を注ぎ込んだ。僕が乗っ取る直前は内蔵も神経もボロボロでよくこいつ生きていたなって感じ、まあ僕のせいだけど。みのりっていう人間はとても美味しかった。今までのよりずっとずっと。
さて、これからどうしようかな?まずはあの忌まわしい太陽神に使えているこの身体の持ち主の姉を喰うか。この体になる前は何故か喰える気がしなかったけど今はそんな気がしない。実の妹に食われるときどんな顔をするんだろう?絶望かな?悲しみかな?きっといい顔をするに決まっている。




