36.突然見えなくなりました
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『本当にここがあの村なの?』
目の前の光景が信じられずに蒼藤に聞いた。
「そうだよ。今は土砂に埋まっているけどね。」
目の前に広がるのはあの美しい海がある村ではなかった。全てが土砂に埋もれあちこちに瓦礫が散乱している。海も黒く濁りあの頃の面影なんて全くない。
『あの島…。土砂であそこまで行けるようになってる。』
「みのり、余り無理をしないでくださいね。危険を感じたらすぐに逃げてください。」
藤姫がとても心配そうに私に言った。藤姫はずっとここに来ることを反対していた。
『ありがとう藤姫様……………ってあれ?』
藤姫の方を向いたら居なくなっていた。周りを見ると蒼藤や葵さんも居ない。桜さんと翡翠さんは後から来るから最初から居なかったけど…。
場所は動いてないよね?急に見えなくなった?
『葵さーん!藤姫様ー!蒼藤ー!何処ですかー!?』
呼んでも出てこない。どうしよう、このまま進むのは不味いよね…。桜さんと翡翠さんと合流したほうがいいのかな…。でも、ここに居るのも危険だし…。
「どうしたの?こんな所にいたら危ないよ?」
声が聞こえて振り向くと真っ白な着物を着た私と同じくらいの女の子がいた。なんとなくだけどすぐにこの世の者ではないとわかった。
『大切な友達を迎えに来たの。貴女は誰ですか?』
「私は咲。そっか、君が雷人さんが言っていたみのりちゃんだね?」
『雷人さんを知っているの!?雷人さんは無事なんですか!?』
咲さんはとても難しい顔をした。雷人さんは無事じゃないって事?
「雷人さんは私と春ちゃんって女の子を助けるために酷い怪我をしてしまって今動けないみたいなの。春ちゃんが今介抱しているよ。」
すぐに傷が治る雷人さんでも治せない酷い怪我…。もしかしてそれを察知して葵さん達はそっちに行ったのかな…。
『あの、私を雷人さん達の所に案内して貰いませんか?』
咲さんは頷いて歩き出した。
村は土砂に埋まっていたけど島はあの頃と何も変わってなかった。強いて言うならちょっと道が荒れているくらいでほとんど変わってない。
神社は酷く荒れ果てていた。石の鳥居はボロボロでヒビが入り今にも崩れそう。しめ縄もほとんど残ってない。雑草も伸び放題だし、社殿もボロボロだった。こんな所に神様が住んでいるなんて信じられない。
社殿の中に入ると所々床が抜けていた。
「ここから先は1人で行ってね。」
咲さんはそう言い提灯を私に渡して消えてしまった。この先って言ってもここで行き止まりだと思うんだけど…。
『あれ?ここの床だけちょっと違う?』
1カ所だけ床に違和感があった。少し強めに叩いてみると床がずれて石の階段が出てきた。どうやら地下に繋がっているみたい。
それにしても、隠し階段なんてホラーゲームみたい。
提灯を持って慎重に階段を降りていく。階段もボロボロで何時崩れるかわからない。
長い時間をかけてやっと下まで着いた。地下ということもあると思うけど少し肌寒い。下は洞窟の様になっていて奥まで暗闇が続いていた。この奥に雷人さんと春ちゃんが居るのか…。早く行かないと。
奥に進んでいくと生ぬるい風が吹いてきた。このまま先に進んではいけないような気がするけど今更帰ることなんて出来ない。
パキッ
何かを踏んだみたいで乾いた音が鳴った。足下を見てみると…。
『ほ、骨?動物か何かかな…』
よく見てみるとボロボロの骨がそこら中に散らばっていた。異常な光景に背筋がゾッとした。
早く行かなくちゃ!そう思いどんどん奥まで進んでいった。すると微かに生臭い匂いがした。奥に行くにつれてだんだん匂いが濃くなっているような気がする。
急に広い空間に出た。壁には蝋燭が沢山吊されていてとても空間が明るく感じた。中央には誰かが居るようだった。
『………!!雷人さん!春ちゃん!』
私は人影に向かって走って行った。




