34.戻ってきた!
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『……!!ここは…。』
周りを見渡すと小さい頃にお世話になっていた病院だった。そうだ、私あの時に意識を失って…。もしかして戻ってきたの?
「みのり!ああ、よかった!お父さんと先生に知らせなくちゃ!」
近くにはお母さんがいた。葵さんの話通り少しやつれていた。心配かけ過ぎたな…。
お母さんの後ろには綺麗な女の人がいた。もしかしてこの人が藤姫様?何で急に見えるようになったんだろう…。
「初めまして、藤と申します。雷人様の式神でございます。」
そう言い藤姫は頭を下げた。雷人さんで思い出した。
『あの、雷人さんは?雷人さんはどうなったんですか?』
「…?みのり、誰と話しているの?」
お母さんには見えてないのか…。お母さんに今まで私を守ってくれていた人達の事、そのうちの1人が行方不明になっていることを話した。
「藤姫様は今ここにいるの?」
私は頷き藤姫がお母さんの後ろに居ることを教えるとお母さんは後ろを向いて。
「娘が色々とお世話になっていたそうで…。ありがとうございます。」
そう言い深々と頭を下げた。藤姫は慌てて
「いいえ、私は貴女のお祖母様やお祖父様に恩を返しているだけです。真梨子顔を上げてください。」
多分、藤姫の言葉はお母さんに伝わっていないので私が代わりにお母さんに伝えた。お母さんはただ感謝の言葉を繰り返しているだけだった。
「主様はまだ見つかっていません。しかし、いる場所は特定できたので何人かで向かう予定です。」
『あの、私もお手伝いしたいです。』
お母さんは何を話しているんだろうとポカンとしている。ちょっとあれを試してみようかな…。
幽霊には波長みたいなのがあってその波長が自分と合ってその幽霊が見えるようになる。だから見える人が見えない人にその波長を教えるみたいな感じにすると見えない人も見えるようになるらしい。葵さんからやり方は聞いたから少しやってみよう。
頑張ってお母さんに私を経由して藤姫の波長を教えて…。これは頭が痛くなるな…。そろそろ限界と思ったとき
「みのり、この人が藤姫様?」
どうやら見えるようになったらしい。あー、疲れた。もうやらないって決めたぞ。
「はい、真梨子も見えるようになったのですね。みのり、人間の貴女が行くのは危険です。それに貴女は狙われやすいのですよ。」
それは十分承知だ。だけど私だって役に立ちたい。
『わかってます。私がいても足手まといになることくらいわかってます。だけど…』
雷人さんも救いたい。それよりも春ちゃんを救いたい気持ちのほうがもっとある。さっきの意識が朦朧としている時に思い出した。私は幼い頃に春ちゃんに会ってる。その時に春ちゃんとは大事な友達だった事も思い出した。
『私は春ちゃんを助けたい。多分、春ちゃんは自分の意思で化け物の近くに居ると思うの。だから私が行けば何とかなるかもしれない。』
春ちゃんが自分の意思で化け物側に居るのはきっと私のため。ずっと私が雷人さんに連れて行かれるって誤解しててこんなことになったんだ。
「しかし、貴女に何かあれば主様だけじゃない貴女の家族も友達も悲しむんですよ。」
私はお母さんのほうを向いた。お母さんはとても心配そうな顔をしている。
『お母さん、私ね思い出したの。春ちゃんとは小さい頃から友達だったって…。春ちゃんにとっても私にとっても1番の友達だった…。だから…。』
「いいよ、行きなさい。」
私は驚いてお母さんの顔を見た。いつも私の心配ばかりで今あの世から戻ってきた私にそんな危険なことを許す訳がないと思っていたから…。
『いいの?本当に?』
「ええ、貴女の頑固さは母親の私がよく知ってる。私が止めたとしてもみのりは絶対1人で抜け出すでしょ?」
うん、反対されても1人で行くつもりでした。流石私のお母さんです。なんでもお見通しですね。
「と言っても退院してからよ。貴女は1ヶ月以上意識が無かったんだから。」
「真梨子の言う通りです。とりあえずは体調を整えてからにしてください。閻魔大王には私から説得します。」
そう言い藤姫は消えた。そして今度は葵さんが現れた。
「まあ、間に合ったのね。よかったわ。とりあえず主様は生きているみたいだから安心して。」
式神である葵さん達には雷人さんが生きているかどうかわかるらしい。でも、雷人さんは今にも死にそうな状態であるのは変わりは無いから安心出来ない。
お母さんには葵さんは見えてないけどもう波長を合わせるのは疲れるから止めた。
「さっき藤姫様が閻魔大王とか言っていたけどみのりは会ったの?」
『会ったよ。全然こわくなかった。』
それから慌てたお父さんとお医者さんが来るまでお母さんにあの世で起きたことを話した。私に嘘だけど婚約者が出来たことにずっと笑っていた。
そして、色々な検査をして問題が無かったので私は退院した。筋力とか弱っていると思ったけどそこは葵さんの不思議な力で何とかなっていた。皆驚いていたけどね。




