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29.翡翠の心配事

ブクマ&評価&誤字報告ありがとうございます!

 翡翠は仕事部屋でたくさんある書類の整理をしていた。これらは妹である雷人から強引に引き受けたものである。雷人は1人で全てやろうとしていたが余りにもの多さに翡翠が奪ってきたものであった。


「翡翠、何ですか。この大量の書類は…。」


 翡翠の上司である天照大神が部屋に入ってきた。流石へ日本の最高神と言われる神なので服装がきらびやかだ。


「天照様…。妹仕事が余りにも多かったので強引に私が持ってきちゃいました。あの子いつも全部自分でやろうとするので心配で…。」


「貴女の妹…。ああ、雷人の事ですね。確かに雷人は息抜きの仕方を知らないかの様に仕事ばかりやってるようですね。まあ、私が怪異の解決を雷人に全て任せたのですが…。」


 怪異の報告は地獄だけではなく天国側にも報告が行く。その報告も雷人の仕事に入っていた。


「ところで、この資料は私の兄妹についての資料ですね?なぜこんなものが…?それにシラヒワケやエヒメも入っているところ見ると全員分ありますね…。」


 天照大神が言うようにここにはイザナギとイザナミの間に出来た神々の名前が書かれた資料が全てある。イザナギ、イザナミどちらか片方から産まれた場合は省かれている。天照大神や須佐之男命、月読命はイザナギだけから産まれたものなので省かれている。また、翡翠と雷人の父親である大雷も省かれていた。


「妹が今起きている怪異の原因がどうやらイザナギ様とイザナミ様のと関係があるかもと調べたらしいのです。全て1人で…。」


 私が雷人の部屋に行ってこれを見つけるまで一言も教えてくれなかった。あの子はいつもそう、辛くても1人で抱えてしまう。


「なんと…。そのような報告はありませんでしたが…。それで結果は?」


 私は首を横に振った。雷人が調べても手がかりが全く無かった。


「しかし、神気がイザナミ様とイザナギ様のものが混ざっているとイザナミ様から言われたそうなので関係があるのは確かなのですが…。」


 神気はその神独自のものであるが親の神気も多少混ざる。DNAに似たような物だ。

 唯一、調べていない神だとすると子供と認められなかったヒルコ様、アハシマ様、そして産まれてすぐに殺されたヒノカグツチ様くらいだった。しかし、ヒルコ様やアハシマ様は何処かへ流されたため行方がわからない。ヒノカグツチ様はもう亡くなっているし…。


「それでは兄妹達の子供というのはどうでしょう。それか貴女方の様な存在ですね。」


「天照様もご存じのように私と妹以外は全て人間達によって滅ぼされました。この日本には私と妹の様な存在はもういないのです。」


 かつて人間達は私達の力に目が眩んで全て自分達のものにしようと狩りのような物が数多くあった。私と雷人も被害者だ。今もあの時の人間達は許せない。


「すみません、辛いことを思い出させてしまいましたね。しかし、もし生き残りがいたとすれば人間達に復讐したいのは貴女もわかるでしょう?」


「そうですね…。」


「そういえば、本田みのりという人間は元気なのですか?」


「はい、毎日妹の知り合いの店で元気に働いているそうですよ。」


 普段、人間の話をしない天照様がみのりちゃんの心配をするなんて…。確かに生者があの世に長くいるのは不味いとは思いますが…。


「まだ魂が戻る兆候は現れないのですか?前例があるとしてもあれは夜の間だけでした。もう一ヶ月以上もあの世にいるのでそろそろ兆候が出る頃だと思うのですが…。」


 魂が戻る?そんなの聞いたことが無い。恐らく閻魔大王も雷人も知らない事だ。


「あの、それについて詳しく教えてください。」


 天照大神が言うには魂は体とひものようなもので繋がっている。それが切れて死となる。これは翡翠も雷人から教えて貰ったこと。今のみのりの状態は魂が体と繋がった状態であの世に来ている。その状態だと体が魂を呼び戻そうとするため本人に多少負荷がかかるらしい。そして、兆候が出始めると本人は現世の体の周りの景色が見えたりするらしい。


「しかし、みのりちゃんはそんなことは一言も言ってませんでした。」


「まあ、個人差はありますからまだ兆候が現れていないのでしょう。しかし、とても危険な事なので注意して欲しいのです。負荷の掛かりすぎで繋がりが切れ本当に死んでしまうので。」


「わかりました。妹に伝えておきます。そういえば天照様、とある土地神からいまだに人間の生贄があると報告がありました。」


 科学技術が進む現世で生贄などいまだにあるのかと報告があったとき私も驚いた。やはり土着信仰などはまだ残っているのでしょう。今年の神無月での議題は生贄問題でしょうか…。


「人間達も現実を見て欲しいですね。命を粗末にする方々の願いなど聞く気になりませんよ。中には生贄がこれ以上増えないようにと願いを叶えてしまう神もいたようですが逆効果になってしまいましたしね。」


 天照様は呆れたように呟いた。ちなみに、どんな理由であれ宗教を理由として殺生した者は地獄行きである。確か桜ちゃんを生贄に出した村人達も地獄に堕ちたはず…。


「生贄問題はいつまでたっても解決しない問題ですね…。」


 天照様はそう言い部屋を出て行った。この資料整理が終わったらみのりちゃんの所へ行こうかしら。

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