21.井戸といえば…
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『え、何あのメンツ。どういう関係?』
図書室に行こうとしたら外交課の人が面白いのが見られるよって呼び止められた。そして、連れてこられたのは以前に翡翠さんと初めて会った外交課の近くにある応接室の前。扉から少し覗くとそこにいたのは雷人さんと以前に会った篁さんと着物を着た女性と何やら鎖で繋がれている長くて黒い髪で白いワンピースの女性。白いワンピースの女性はテレビや井戸から出てくるあのお化けみたいに見える。外交課の人に聞くとその人はそのお化けのようなことをした元怪異らしい。
「みのりさん、こっそり覗いているつもりのようですがバレバレですよ。そんなに気になるならこっちに来ても構いませんよ。」
そう言って雷人さんは手招きをした。私は大人しく入ることにした。だって凄く気になるよこの奇妙な人達。
「あ!みのりさんお久しぶりですね。いやー、あんな噂になってしまうなんて私もびっくりしましたよ。」
あの噂って私が雷人さんの婚約者っていうやつだよね。なんか篁さん面白いことになったぞ!って感じの顔をして目がキラキラしてるよ。
「おや、もうすでに篁殿と知り合いでしたか。篁殿はしばらくお忙しいと持ってたので会うのはずいぶん先だと思ってたのですが。」
雷人かんが篁さんをチラッと見ると篁さんは固まった。桜さんが雷人さんに事情を説明するとき篁さんと会ったこと伝えてなかった。篁さんはお仕事サボってたけど、あの小豆洗いの質問から助けて貰ったから秘密にしてたのに…。
『そ、それより雷人さんこちらの方々は?』
「井戸に関係のある方々です。着物のご婦人は皿屋敷で有名なお菊さんです。白のワンピースの方も井戸関係の方ですね。」
皿屋敷ってあの「1まーい、2まーい…………………9まーい、1枚足りなーい!」ってやつ!?地獄って怪談の有名人がいっぱいいすぎじゃない!?え、でも篁さんは?
『篁さんも井戸に関係あるんですか?もしかして井戸から化けてでてきたとか?』
篁さんは苦笑いしながら。
「まさか、化けて出るなんてしてませんよ。あの世に通う手段が井戸だっただけですよ。」
本当にここにいる人は井戸関係なんだ。でも、なんで井戸関係?
「実は未解決の井戸関係の怪異の資料が見つけたんです。その怪異は1度人間の手によって封印されたのですがどうもその封印を解いた者がいたらしくて…。」
雷人さんがとても疲れた様子で言った。この前に別の怪異を解決したばかりだもんね。
「でも、その井戸の場所がわからない。だから井戸に関係ある私達を呼んだのですね。」
「あ、それは先ほどこの女性に聞いたので大丈夫ですよ。この方はほぼ全て井戸から出てこられるらしいのです。出てこられなかった井戸から絞り出したところ場所は特定しました。篁さんとお菊さんには少し意見を聞きたかったのでお呼びしました。」
え、この白いワンピースの人そんなこと出来るの!?どうやったんだろう…
不思議に思って女の人を見ていると女の人は私のことを見てニヤッと笑った。ひー!顔は美人なのに笑い方が不気味過ぎる!
「あの、それで聞きたい事とは…。」
「その井戸の怪異はおそらく井戸の中に住んでいるモノだと考えています。そうするとどうやって解決するかが問題なんですよ。」
「確かに井戸の中に飛び込むことは無理でしょうしね。私はひものような物を使って井戸に降りてましたけど…。」
「どうにかして引きずり出したいですね。」
『あ、あの。こういうのはどうですか?』
私が意見を言うと雷人さんは少し考え込んだ。あ、ちょっとだけ眉が動いた。
「確かにそれがいいとは思うけど…。それって水神様くらいしか出来ないんじゃないかな…。」
篁さんは冷静に答えた。私の案は井戸の水をまるで間欠泉みたいにブシャーっと化け物ごと出すというもの。しかし、それではもし井戸に水がなかったり足りない場合は無理だし、雷人さんには水を操るなんて出来ない。
「いや、出来ないこともありませんよ。式神に頼む形になりますがね。もし、失敗したら直接井戸に雷をぶち込むだけです。」
雷人さんからぶち込むって言葉が聞こえたよ!?やっぱり相当疲れてるよね!篁さんやお菊さんも苦笑いしているよ!
「それで私が呼ばれたのですね。しかし、私は戦闘に不向きですよ。守り専門ですから。」
井戸がある村の跡地に雷人と彼女の式神お藤がいた。お藤は不安そうに雷人に言った。
「わかってますよ。貴女は大切な物を守るためにその力を水神から貰ったのですから。今回はその力を少し応用するだけです。」
「私に出来るでしょうか。葵様や蒼藤様のように私は器用ではないので心配です。あの子は元気ですか?」
「みのりさんはとても元気ですよ。そういえば、今度直接お礼を貴女に言いたいと言っていましたね。」
「私は恩返しをしているだけです。お礼など……。…………………!主様!人間が4人ほど井戸に向かっております!」
お藤は水神の加護を受けているので地中の水脈、空中の水からすぐに異変を察知できた。それを聞いた雷人は舌打ちをした。
「ちっ………。人間達は本当にどれだけ私の仕事を増やせば気が済むのでしょうね!貴女は先に行って人間達の保護を!」
雷人がそう言うとお藤の体は水となって井戸の方へ向かった。
青年は予想された痛みがなかったので目を開けた。すると…
「なんだこれ、水の壁?」
分厚い水の壁が青年を守るように取り囲んでいた。井戸から出てくる触手のような物は水の壁に触れられないようだ。
「よかった!間に合いました!」
お藤は青年を抱きしめた。移動している間に3人もやられてしまったのでとても不安だったのだろう。
「助かったのは1人だけですか……。まあ、全滅よりはいいですね。お藤、その青年を頼みます。私が合図をしたら予定通りにお願いしますね。」
雷人は太刀を抜き井戸から出てくるものを全て切り払っていった。その様はまるで剣舞のようだった。
「す、すげえ。なんだあれ。人間か?」
「ふむ、出てくるものは3種類程度。それぞれが違うスピードで伸ばせる長さがこれくらいとなると…。お藤!お願いします!」
「はい!」
大丈夫よ、私。主様と沢山練習したんですもの。水神様、お願いします。
すると地面が揺れ始めた。
「な、なんだ!?地震か!?」
そして大量の水が噴き出し蠢く赤黒い大きな物がでてきた。
体のあちこちには牙がびっしり生えた口のような物があった。
「なるほど、目がないので音で獲物を感知していたのですね。これは面白い。ぜひくらい地獄で働いて欲しいものでしたが…。」
化け物はその大きな体で雷人に襲いかかった。
「あなたは人を殺しすぎましたね。死を持って償いなさい。」
そう言い雷人は化け物を真っ二つに切った。辺りに化け物の血が飛び散った。そして
「ああ、まだ生きているのですか。先ほどの水で濡れているのでこんがりいきそうですね。」
雷人は雷を落とした。化け物はもう動かなかった。
「主様、私も水を使っているので雷を使う際は気をつけてください。人間もいるのですから。」
雷人は青年を見ると
「さて、その鞄の中にあるものを渡して貰いましょうか。そのノートが今回の元凶でしょう?」
青年はここに来るきっかけとなった古びたノートを渡した。
「あの、あいつらはもう…。」
「ええ、亡くなりましたね。責任を持ってあの世に連れて行くのでご安心を。さて、今起きたことは全て忘れて貰いましょうか。お藤、その青年を押さえていてください。手が滑ると頭がバグるので。」
お藤は雷人の指示通りに青年をしっかり押さえつけた。
「え?頭がバグるって?ぎゃぁぁぁぁ!」
「………ん。ここは……。俺はいったい………。」
青年は病院のベッドの上で目を覚ました。
「ああ!気がついたのね!よかった!本当によかった!」
「か、母さん!?どうして母さんが!?」
「あんた、行方不明になってたんだよ。そしたら山の中で意識不明で見つかって……!本当によかった!」
行方不明?俺になにがあったんだ……?思い出せない。
「あのね、一緒に行方不明になっていた子達はね崖の下に落ちていた車から見つかったわ。警察はあなただけ落ちる前に脱出したんじゃないかって…。」
崖の下に車?本当に思い出せない…
「あまり、母君に迷惑をかけてはいけませんよ。世界でたった1人なんですから。」
そう綺麗な女性の声が聞こえたが余りにも自分の母親が泣くので気にしなかった。




