18.お婆ちゃん、私に婚約者が出来ました
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桜さん、ドンマイ…。
目の前には治さん、雷人さん、桜さんの息子の1人である楓さんに睨まれて小さくなっている桜さん。
桜さんとショッピングをした次の日。何故かその日はいつもより女性客が多く、これまた何故かその人達に睨まれるような感じがしたので閉店時間にはとても疲れてしまっていた。そこに
「おや?みのりさん、とても疲れていらっしゃいますが大丈夫ですか?」
久しぶりに雷人さんが来た。女の人だけどやっぱりイケメンだなー。
『あ!雷人さん!お久しぶりです!今までどこにいたんですか?外交課にもいないし、心配したんですよ。』
「お盆が近くなってきたので阿鼻地獄から手伝って欲しいと言われたので手伝ってたんですよ。阿鼻地獄はお盆に帰る亡者の仕分けのようなものがあるので。」
『やっぱり阿鼻地獄にいたんですね。なんで亡者の仕分けをするんですか?』
もう閉店時間を過ぎて誰もいないので雷人さんに好きな席に座って貰いお茶をだした。
「阿鼻地獄は最も罪が重い亡者が堕ちるところなので現世に帰しても大丈夫かどうか審査する必要があるんです。それより、桜を呼んで貰えますか?ちょっと話しがあるので。」
なんだろう。とりあえず奥にいるから呼んでくるか。
私が桜さんを呼びに行こうとしたとき
「母さん!俺達には妹なんていないのになんで雷人様の婚約者が俺達の妹ってなっているんだよ!」
入ってきたのは凄く治さんにそっくりな男の人。あれ?男の子って母親に似るんじゃなかったけ?じゃなくて、え?ちょっと待って。雷人さんの婚約者?なんでそんな話が………。あ!昨日のあれだ!
「ああ、私もちょうどそれを聞きに来たんですよ。」
「え?ちょっとなんの騒ぎ?あら、楓!久しぶりじゃない!元気だった?」
桜さんが治さんと一緒にでてきた。本当に仲がいいなこの夫婦。
「母さん、とぼけても無駄だよ。今日、仕事場の女の人達から雷人様の婚約者が俺の妹って噂は本当かって囲まれたんだよ!妹なんて俺達兄弟にはいないのに小豆洗いの旦那が言っていたって大騒ぎだし!その娘は母さんの隠し子じゃないかって噂になっているぞ!」
やっぱり昨日のあれかー。あの小豆洗いめ!なにが雷人さんには内緒にしといてくれだよ!私が桜さんの隠し子なんて根も葉もない噂を立てて!
そして冒頭部分に戻る。
目の前には治さん、雷人さん、楓さんに囲まれた桜さん。
桜さんは元々小柄な人だけど体が大きい(雷人さんは女性だけど身長は170㎝くらいあるし)人達に囲まれて余計に小さく見える。
「さ、桜…。お前…、俺以外のやつと子供を?いつ…?俺の愛が足りなかったのか?」
治さんが今にも泣きそうなんだけど!ちょっと桜さん!貴女が自分でやったことですよ!
「桜、こんなに良い殿方を旦那に持っているのに浮気してたのですか?今からでも衆合地獄に堕ちますか?」
桜さん、そんなに私に助けを求めないで。貴女も昨日私を助けませんでしたよね?
「えっと…これは深い訳がありまして…。」
桜さんはちらっと私を見たけど私はニコッと笑うだけ。
「それで?母さんは堂々とその隠し子を父さんの前で働かせているの?」
そしてギロッと私を睨んだ。ひえー、治さん似の顔で睨まないで!鬼の形相だよ!
「……?楓、この子は俺達とは違う時代の、しかも現代の人間だ。今は訳あってここで働いて貰っているんだ。」
あ、治さんが泣きそうな顔からキョトンとした顔になった。
「は?じゃあ他のところに隠しているのか?噂では父さんの前で堂々と働いているって話だけど。」
あー、だから今日のお客さんに女性が多かったんだ。雷人さんって予想以上にモテるんだね。
「私に隠し子がいること自体嘘よ!あのね、これはかくかくしかじかあって…。」
そして、桜さんは昨日あったこと、そうしておけば私に手を出す人はまずいないので私が安全になることを説明した。でも、実際は雷人さんのことが好きな人達に睨まれているって形になったけど…。
「やはりそうでしたか。桜の料理センスではそうそう浮気できませんしね。」
雷人さん、桜さんは料理だけ物凄く苦手なだけでそれ以外はとてもいい人ですよ。
「師匠は私の生前の記録を見れば真実がすぐにわかるじゃないですか!ひどいです!」
確かに雷人さんならすぐにその噂が嘘かどうかわかるよね。もしかしてわざと?
「しかし、その噂のせいでとても面倒なことが起きるんですよ。なので仕返しです。」
「だいたい、師匠が女なのにそんな格好をしているのがいけないんですよ!私が前にあげた着物着れば少しは女性らしくなると思うんです!」
「いいじゃないですか。このほうが動きやすいんですよ。それに今は現世でも男装とか流行っているようですし何にも問題はありません。髪型もショートカットなだけですし。」
え、そんな理由だったの!?確かに女の人の着物って帯が苦しそうだし動きにくそうだけど!そんな理由なの!?
「ああ、そろそろ面倒なのがきますね。」
え?面倒なのが来るってなにが起きるの?
そう私が思っていると…
「桜ちゃん!?俺の可愛い娘の雷が桜ちゃんの娘と結婚するってどういうこと!?桜ちゃんには娘なんていないよね!?もしかして桜ちゃんの息子と結婚なの!?」
「ち、父上!落ち着いてください!あ!雷人、父上を止めて!このままだとここを破壊しかけないわ!」
翡翠さんとイケメンなおじ様が店に入ってきた。翡翠さんに父上って呼ばれているから多分このおじ様は雷人さんと翡翠さんのお父さんなんだろうけど…。
「雷!お前が結婚とか父上は聞いてないよ!ずっと昔に結婚しないって言ってたじゃないかぁぁ!」
大切な娘が結婚するのが嫌がる親にしては度が過ぎてるよね。神様ってそんなもんなの?
「父上、落ち着いてください。もう私は4千年以上生きているんですよ。いい加減子離れしてください。」
そう言って雷人さんは実の父親の頭にチョップ。一瞬だけど頭へこんだように見えた。
よっぽど痛かったのかイケメンなおじ様は大人しくなった。
「あのですね、大雷様。これには色々と事情がありまして。」
そして桜さんはさっきと同じように翡翠さんと大雷様に説明をした。
「そうなんだ…。よかったー。ごめんよ桜ちゃん。」
「いえ!私も悪いので顔を上げてください!」
「みのりさんが私の婚約者という噂話はまだいいとして問題はみのりさんが桜の隠し子というのはなんとかしたいですね。」
『え!私が雷人さんの婚約者ってのはいいんですか!?』
「外交課の方々や閻魔大王などの知り合いは私が女だと知られていることなので何も問題ではありません。それに、婚約者であるみのりさんに手を出せばただで済まないとも噂でもあるのでかえってみのりさんが安全にここで生活できるので私は大丈夫ですよ。」
雷人さんが大丈夫でも私が大丈夫じゃないです。でも、私のために言ってくれてるんだよね。うーん、難しい。彼氏はいたことないのに婚約者(女の人だけど)が出来るって…。
私が悩んでいると一瞬だけど大雷様が私のことを睨んでいるように見えた。やっぱり嘘でも娘に婚約者(私も女だけど)が出来るのは嫌なのかな…。
寮に戻ったとき寮に住んでいる女獄卒の方々に色々と聞かれた。とりあえず私は桜さんの本当の子供ではなく養子だと上手い具合に嘘の情報を教えた。
お婆ちゃん、私に婚約者(?)が できたよ……。




