17.地獄の方々は個性的
ブクマ&評価ありがとうございます!
今日はお店の定休日なので私は桜さんと一緒にデパートでショッピング!あの世のデパートだけどほとんど現世のデパートとかショッピングモールと変わらないな…。
「みのりちゃん、こういうのどう?これだったら簡単に着られると思うの!」
もうすぐ夏に入るので夏服を買いに来ている。桜さん曰く地獄の夏は暑い、いやむしろ熱いらしい。なので本格的に暑くなる前に服を買いに来た。
『可愛い!巫女さんみたい!』
「それ今とても人気なんですよ!お嬢さんが言うようにそれは現世の巫女の服装をヒントにデザインされているのでとても動きやすいと思いますよ。」
そう話しかけてきたのは提灯。え!?提灯!?
『そ、そうなんですね。私、着物とか1人で着るの苦手なんですけど大丈夫ですか?』
どうついているか知らないけど名札にはお岩と書いてあるからあの有名なお岩さんなのかな?
「ええ!大丈夫ですよ。帯も結ぶ必要もないのでとても簡単ですよ。」
それから試着しながら教えて貰うことになったんだけど…。
『人の姿になれるんですね。』
お岩さんは提灯の姿から人の姿になった。やっぱりただれちゃった所は隠しているけど…。
「この姿になると顔のこれが目立ってしまうので余り人の姿にはならないんですよ。でも、こうしないと教えられませんからね。」
試着してみると予想以上に楽だったので買うことにした。もちろん自分で稼いだお金で。
『流石あの世。人間じゃないのがいっぱいいる。』
どの店舗を見ても鬼とか妖怪とかがいっぱいいる。動物も人の言葉を話して普通の人間の家族のように買い物しているし。
「まあ、人間であの世で働くなんてあまりいないわね。やっぱりさっきの口裂け女さんにはビックリした?」
『かなりビックリしました。』
先ほど化粧品売り場で見かけた口裂け女の咲さんには失礼だけどビックリしてしまった。
「あ、そうだ。帰る前に和菓子屋に寄っていいかしら?治が好きな最中が美味しいって有名な和菓子屋があるの。」
『いいですよ!それにしても桜さんと治さんってラブラブですよね。羨ましいな…。』
私なんて彼氏いない歴と年齢が一緒なんだから悲しいったらありゃしない。
「まだまだみのりちゃんには寿命は残っているしそのうちいい人は見つかると思うからそんなに心配しなくても大丈夫よ。」
いや、彼氏や結婚している人はそう言うこと言いますけど実際無理だと思うんですよ。
『和菓子屋だからなんとなく予想してたけどやっぱりか…。』
帰りに寄った和菓子屋の店主は妖怪の小豆洗いだった。予想を裏切らない流石あの世です。
「えっと、この最中を2箱ください。」
「あいよ!桜ちゃんいつもありがとねぇ。おや?そのお嬢ちゃんは桜ちゃんの娘さんかい?」
『えっちが「ええ!そうなの!可愛いでしょ?しかも師匠も気に入っているの!」………!?』
私が戸惑っていると桜さんは「そう言うことにしといて、そうすれば多分手を出されないと思うから。」と耳元で言った。
「そうかい。最近、あの雷人様が人間の娘にゾッコンだって噂が出てたんだが…。そうかい、桜ちゃんの娘さんのことだったんかい。よかったなぁお嬢ちゃん、雷人様に嫁げば将来安泰だぞ。」
『と、嫁ぐ!?いや、私と雷人さんはそう言う関係ではなくて…。』
「いやいや、そう照れんでもいいぞ。それで?どうやってあの雷人様を落としたんだい?」
いやいや、雷人さん女の人だから。え、そんなに雷人さんって男の人だと思われているの?私も間違えちゃったけどこの広い地獄で雷人さんが女の人だって知っているのどれくらいいるの?桜さんもニコニコしてないで助けて。
「小豆洗い殿、そんなに娘さんをいじめると雷人様の雷が落ちますよ。」
私がどうすればいいか困っていると助けてくれたのは平安時代の貴族みたいな格好をした男の人。え?だれ?
「おお!こりゃ篁様!お久しぶりです。いやいや、いじめておりませんよ。またいつものですかい?」
へー、この人が篁さん…。あれ?苗字が篁だっけ?名前が篁だっけ?
「ええ、お願いします。あ、それとちょっと多めにお願いできますか?部下にもおすそ分けしたいので。」
「ちょいと時間かかりますけどよろしいですかい?あ、嬢ちゃんこれで勘弁してくれ。雷人様には言わないでおくれよ。」
小豆洗いは私に饅頭を渡し、先ほど頼んだ最中も桜さんに渡して奥に行ってしまった。
『あ、あの。助けてくださりありがとうございます。えっと篁さん?』
「はい小野篁と申します。桜さん面白がるのもいいですけどこの娘さんとても困っていらっしゃってましたよ。」
あ、そうだ!桜さんずっとニコニコしているだけで助けてくれなかったんだ!
「ごめんごめん!師匠が結婚とか考えたら凄く楽しくなっちゃって。みのりちゃん、このことは師匠に内緒にして貰ってもいい?」
『えー、どうしましょう。それより、雷人さんが女の人だって知らない人のほうが多いんですか?』
「まあ、雷人様は見た目がああだから信じられないんじゃないかな?あ、君があのみのりちゃんだね?」
『そうです。よろしくお願いします。』
なんで雷人さんってあの姿なんだろう。双子のお姉さんは凄く美女って感じだからちゃんとすれば雷人さんも物凄い美人になると思うんだよね。
「可愛い子でしょ?私には息子しかいないから本当に娘になって欲しいくらい!ところで篁様はお仕事お休みですか?」
桜さんがそれを言った瞬間篁さんがギクッと目をそらした。
「いやー、あはは。お盆が近くなってくると仕事が多くなってしまって嫌になっちゃいますよねー。はは…。」
その様子だとずる休みしちゃったんですね。
『あの、雷人さんが何処にいるか知っていますか?怪異は解決したと葵さんから聞いたんですけど全然見かけないんです。外交課にもいないし…。』
「さあ、私も見かけてないな。もしかして阿鼻地獄かな?」
阿鼻地獄?どこだそれ。最初に見た等活地獄みたいな所?
「阿鼻地獄って言うのは1番罪が重い亡者が堕ちる最も厳しい地獄だよ。たしか神社や仏閣を壊したり御神体を壊したりと神や仏にまつわる物を傷つけた人間が対象かな。」
篁さんがわかりやすく教えてくれた。
『でも、なんでそんなところに雷人さんが…?』
「さあ、私にはよくわからないけどたまにそこにいるのよね。あ、流石に一人前の獄卒じゃないと危ないしかなりエグい拷問みたいだから連れて行けないよ。」
『かなりエグいとは…。』
「阿鼻地獄の次に厳しい大焦熱地獄が天国に見えるくらいだとよく聞くわね。あ、最初にみのりちゃんが見た等活地獄は1番軽い所よ。」
そんなところに雷人さん本当に何をしているの。
そうこうしているうちに小豆洗いが篁さんに頼まれた物を持ってたので会計を済ませ私達は別れた。ちょっと遅くなったから治さんに怒られそうになったけど最中で許して貰った。
【阿鼻地獄】
「た、頼む許してくれ。俺達が悪かった…。だから、もう解放してくれ……!」
雷人はとある亡者を金棒で殴っていた。華奢な体で近くにいる阿鼻地獄の鬼と同じ金棒で殴っている。
「は?そんな言葉で許されるなら地獄なんていりませんよ。あなた方の罪はとても重いのですからこの世界の寿命が尽きてもあなた方は苦しみ続けて貰いますよ。」
そう返り血を浴びながらその亡者の骨が粉々になるようにじわじわと苦しめていった。そしてその亡者が再生するとまた同じようにしていった。
「(こ、怖ー。雷人様なんかあったのか?いつもより凄いぞ。)」
そう、近くにいた他の獄卒達は思ったのだった。