16.式神さん
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「主様~?大丈夫ですか~?」
まだ体が本調子ではないのですがたまりに貯まった書類を整理していた時、そう言い部屋に入ってきたのは式神の1人が入ってきた。現世にあるみのりさんの体を守るように言ってあるのですが…。
「大丈夫ですよ。溜め込んだ瘴気はほとんど無くなりましたし、元々回復力には自信がありますからね。それより…。」
「あの娘の体の守りは蒼藤に変わって貰ってます。もう1人は残っているから蒼藤は大人しくしていると思いますよ。」
それを聞いて少し安心しました。どうも今回みのりさんを襲った怪異は今までの物とは違うようですし。
「それにしても、イザナミ様のお孫様であり地獄で働いていらっしゃる主様が耐えられないほどの瘴気なんてただの怪異ではありませんね。」
「そうですね。しかも禍々しい空気であまりわかりませんでしたが神気も感じられました。」
「それでは邪神などの仕業ですか?」
日本には八百万の神がいるとされ様々な神がいるので全ては把握していませんがあのような神がいれば噂にはなるのでわかるはずなのですが。
「あ、それより。あの甘味処ってまだやっているかしら?」
懐中時計を開き時間を見ると
「もう少しで閉店時間ですね。あなたの足なら多分問題ないと思います。」
そう言うとすぐに
「それでは、主様お大事に!」
すぐに行ってしまいました。あ、みのりさんがそこで働いているの言い忘れてましたがまあ大丈夫でしょう。
そろそろ閉店作業しないとと思っていたら。
「すみませーん!まだ間に合いますかー?」
美人が入ってきた。はて、この美人何処かで……。
「あ!夢の中で会う美人!私の妄想の産物じゃなかった!」
そうだ!こっちにくる前にも夢で会った!
「妄想の産物って酷い言いようねぇ。私は雷人様の式神よ。それより、まだ注文できる?なかなか来られないのよぉ。」
「大丈夫だと思いますけど…。でも人気のあんみつや安倍川餅はないですよ。」
席に案内してメニューを見せてそう言った。閉店時間が近いので他のお客さんはいない。
「そうねぇ。あら?何かいい匂いがするんだけどこれは?」
今厨房で作っているのは治さんがたまに作ってくれる私のご褒美のような物。治さんの料理って凄く美味しいからスイーツもご飯も全部食べられるんだよね。私は魂だけの存在だから現実世界の体が太ってないか心配。
「えーと、私のご褒美的なおやつのプリンです。」
「?プリンなんてメニューにはないけど…。」
「最近、治さんが現世で流行っている洋菓子をお店に出したいって言っていたので知っているお菓子の作り方を教えたら試作品を私にくれるんです!」
実は現世のテレビ番組も地獄で見られるんだよね。だからしょっちゅう現世のテレビ番組を見てて、たまたま一緒に番組を見ていた治さんがパンケーキを見て「俺もこんなの作りたい」と言ったのが始まり。元々私はお菓子作りが好きだったから色々なレシピを知っていて教えたらお礼にって作った試作品をくれるようになった。お菓子のレシピ本とかあるらしいけど今まで経験とか勘でやっていた治さんにはいまいちよくわからないし、文字が読めても破滅的な料理センスの桜さんには頼めないから助かったと感謝された。
「それ、私も頼んでいいかしら?」
それを治さんに確認したところ多めに作ったからとOKを貰ったことともう少し時間がかかることを美人に伝えた。桜さんは…あれ?何処に行ったんだろう。
「所で、お嬢ちゃんのお名前はみのりちゃんね?疲れたでしょう?座りなさいな。」
そうだよね。雷人さんの式神だし私の事知っているよね。
「あの、何度か私助けてもらってますよね?」
そう言った瞬間。
「そうよ!もう貴女なんなの!自分から危険に突っ込んでいくとかあり得ないわ!こっちの苦労も知らないで!何度ヒヤヒヤしたことか!」
いやー、その節は大変お世話になりました。きっとあれですよね地獄にくる原因となったあの時もいましたよね。
「危なっかしい子だなと思っていたからわざわざ幽霊とか視えるようにして危険を自分から回避して貰おうと思ったのに逆効果……。」
「え!?急に幽霊が視えるようになったのそのせいなんですか!?てっきり死にかけたから視えるようになったのかと…。」
それとずっと気になっていることを聞いてみた。
「あ、あの。ずっと見守ってくれたって事は貴女は藤姫様ですか?」
だって私に繋がりが無かったら私が小さい頃からこんなことはしてくれないよね。それに目の前にいる人はとてもじゃないけど庶民とかには見えない階級が高い人そうだし。綺麗な着物着ているし。そんなの余計に藤姫様くらいしか思えない。何で雷人さんの式神になっているのか知らないけど…。
「藤姫ぇ?ああ、あの真面目なお藤ちゃんの事ね。違うわ私の名前は葵よ。お藤ちゃんは現世で貴女の体を守っているわ。会いたいなら今度会わせてあげましょうか?」
「え、じゃあ何で私を守ってくれたんですか?」
「ただの気まぐれよ。昔知っていた娘に似ていただけよ。」
「それでも、藤姫様は私を守ってくれてたんですね。でも何ででしょう。」
「さあね、気がついたらお藤ちゃんは主様の式神になっていたし。確かお藤ちゃんが1番新しい式神ね。」
あれ?そうなんだてっきり蒼藤が新しいのかと思ってた。
「そういえば、式神って陰陽師みたいな人が持っているイメージなんですけど何で雷人さんは式神を持っているんですか?」
雷人さんら式神がいなくても全部自分で解決とかしそうだから凄く不思議だったんだよね。
「そうねぇ。主様には全部で3人、正確には2人と1匹の式神がいるんだけど。そのうち私と蒼藤は元怪異なの。怪異って殺した人間の人数とかでかなり厳しい対処がされるの。その中でも私と蒼藤はかなり大物だったみたいで本当は永遠に転生できないように閉じ込められる予定だったんだけど、主様が能力を買ってくれて式神になる代わりに結構自由にできてるの。」
そして、式神契約には人間を襲ってはいけないこと(地獄に堕ちた亡者は拷問になるので可)、雷人さんの命令は必ず聞くことが含まれていて破れば魂は即消されるという物だった。
「と言っても主様の命令を聞くって約束はかなーり緩いのよね。主様は優しいから命令よりお願いごとに近いし、無理にお願いしなんてされたことないわ。」
「みのりちゃーん!プリンできたよー!あ!葵さん!お久しぶりです!」
桜さんがプリンを3つお盆に乗っけてきた。あれ?プリンに生クリームとかでデコレーションしてある!
「あら、桜ちゃん。相変わらず綺麗ね。それにプリンも美味しそう!本当に料理ができる旦那様と結婚してよかったわねぇ。」
そう言って葵さんはハンカチで目元を押さえた。さっきから気になるんだけどなんか葵さんの手ってちょっとゴツゴツしてない?治さんとか獄卒の鬼の方よりは細いけど…。
「もう!葵さんも師匠と同じ事言うんですか?葵さんも綺麗ですよ!初めて見たとき本当に女性の方だと思いましたし、仕草も女性的なのでたまに治や師匠に見習えって言われます。」
んんん!?桜さんなんで言った?え?それって葵さんは男性だと言いたいんですよね?目の前にいるのは明らかに美女ですよ。
「あら?みのりちゃん、もしかして私が女だと思ってくれた?嬉しいわぁ。」
「え、じゃあ本当に男の人……?」
「体はね、心は女性よ。昔はそう言うのは悪霊に取り憑かれたとか狐に取り憑かれたとか言われてよく酷いことされたわぁ。全員プチッと潰したけどね。」
そんな恐ろしいことを語尾にハートがつきそうな感じに言わなくても…。
「すみません。嫌なことを言わせてしまいましたね。」
友達にも同じように悩む子がいたからとても申し訳なくなる。その人にとっては深刻な問題なのに。
「いいえ、気にしてないわ。逆に現代はそう言うのに理解がある人が多くてとてもいいと思うの。昔はそうじゃなかったし。」
葵さんって女の私よりも凄く綺麗だし仕草も凄く品があって女性よりも女性らしいと思う。
「さ、暗い話は終わり!プリンを早く食べましょ!私甘いもの大好きなの!」
そう言ってプリンを食べながらガールズトークを楽しんだ。
あ、雷人さんが1週間近く見かけないから聞こうと思っていたのに忘れてた。
雷人さんを見かけなかった期間が1ヶ月だと長すぎたので1週間に変更しました。




