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15.望まれなかった命

今回の話には暴言、吐血などの表現があります。

苦手な方はお控えください。

ブクマ&評価ありがとうございます!

 ここはどこだろう……。確か私は…。

 あれ?何か声が聞こえる。


「なんで子供なんて出来るのよ!これじゃあ彼に愛されないじゃない!」


「子供ぉ?そんなもの降ろしちまえ。」


「嫌い!嫌い!子供なんて大っ嫌い!」


「また女なの!?いい加減男の子が欲しいのに!」


 聞こえてくるのは耳を塞ぎたくなるような暴言の数々。何かをたたくような音。カチャンカチャンと耳障りな音。

 ああ、そうか。これはあの子供達の記憶なのね。皆、親に望まれていなかったのね。ママの顔を見ていないのね。目が覚めたらあの子達を抱きしめないと。大丈夫よって声をかけないと。


「ママ?大丈夫?悲しいの?まだ何処か痛いの?」


 目を開けると大勢の子供達がいた。ああ、こんなに親の愛情を受けなかった子がいるのね。


「ママは大丈夫よ。ずっと皆と一緒にいるからね…。」


 そう言って私は目の前にいた子を抱きしめた。その子はとても冷たかった。




木霊(こだま)さん、ご協力ありがとうございます。おかげで早く解決しそうです。」


 とある山の中で木の精霊である木霊さんに話しかける。見た目はまだ幼い子供だが私より遙かに年上だ。なんせ、この世に木という存在ができてから産まれたのだから。


「いえいえ、最近この山の空気がおかしいと思っていたので雷人様に相談して正解でした。お地蔵様もいらっしゃるので今回は子供関係ですか?」


 私のそばにいる地蔵菩薩様に話しかけた。木霊さんと地蔵菩薩様2人とも幼子の姿なので遠足の引率をしている気分です。まあ、そんなに楽しいところに行くわけではないのですが。


「そうですね。最初に雷人さんから怪異の原因が子供なんて聞いてビックリしました。私の力で何とかなればいいのですが。」


「大丈夫です。いざとなったら私が守りますよ。」


「そうそう!オイラもいるし大丈夫だよ!」


 すっと蒼藤がでてきた。樹海のような森の中で白い狼の姿を現すと本当にあの映画に出てきそうですね。


「あ、そろそろ私が見つけた洞窟です。かなり凄まじい瘴気(しょうき)なので気をつけてください。」


 木霊さんはそう言って洞窟を指さした。確かに今まで体験した瘴気より凄いですね。


「地蔵菩薩様は私の後ろにいてくださいね。木霊さんはここで待っていてください。すぐに戻ります。」


「わかりました。お二方気をつけてくださいね。」


 奥に進めば進むほ瘴気が濃くなっていく。私は多少なれていますが地蔵菩薩様が心配ですね。とりあえず気づかれないように地蔵菩薩様が受けるダメージは私に行くように術を使いましたが…。こういうときダメージ軽減とかできればいいのですが生憎私にはできないんですよね。


「地蔵菩薩様、大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫ですよ。雷人さんは大丈夫ですか?お顔が真っ青ですよ。やはり雷人さんはお優しいですね。気づいてましたよ、雷人さんが私の分まで瘴気を受けてくださっているのでしょう?」


 流石は地蔵菩薩様ですね。何でもお見通しなのですね。それにしてもこれは本当に子供の仕業ですか?いくら怪異でもこれは悪霊レベルですよ。


「お姉さん達だあれ?お姉さんも僕たちのママになってくれるの?」


 でてきたのは子供。しかし賽の河原にいる子供達や現世の子供達とは違い禍々しい空気を纏ってますね。それにしても、よく私が女だとわかりましたね。


「私はあなた方の母親にはなりません。私は死んだあなた方を逝くべき所に連れて行くために迎えに来ました。」


「そっか…。僕たちの幸せを邪魔するんだね…。じゃあ、死んじゃえ。」


 さっきよりも瘴気が濃くなりました。これは普通の人間だと即死レベルですね。私は人間ではありませんが口の中が血の味がします。


「皆、こんなこと止めよう?皆も好きでこんなことしている訳じゃないでしょう?」


「で、でも!僕たちもママが欲しかったんだよ!ママに抱きしめられて幸せになりたいんだよ!」


 流石は地蔵菩薩様。賽の河原では子供達のヒーロー的存在ですからね。瘴気が先ほどより弱くなりました。


「ま、待って!その子達を連れていかないで!その子達は悪くないの!」


 この方は被害にあった女性ですね。先日に会った赤子の母親のようです。


「いいえ連れていきます。この子供達は賽の河原で修行をして次の人生を送って貰うのです。貴女もそう思うでしょう。こんなことをしても誰も幸せになんてなりません。」


 理由がどうであれ人を襲い現世を混乱させる者ならすぐに対処しなければならない。それがたとえ子供だとしても。

 それにしても早く対処しないと私の体が持ちませんね視界がぼやけてきました。そう思ったとき、


「君たちは何も悪くない。悪いのは運命を変えられなかった目の前にいる人達だよ。その人達をやっつければ君たちは永遠にママといられるよ。」


 驚いて奥の方に目を向けるとみのりさんと同じくらいの女の子がいました。その近くにいるのは……あれは………なんですか。神気を感じるのですが禍々しさが半端じゃないです。見た目はまるでヒルのように蠢いて黒くて巨大な何か……。


「…………!!雷人さん!下がって!」


 地蔵菩薩様が言うとの同時に瘴気が立っていられないほど強くなった。口からは血が溢れ視界も暗くなってくる。地蔵菩薩様も苦しそうですが私ほどではないようですね。

 しかし、困りました。こんなに狭い空間だと私の(いかづち)は少々危険ですし。飛び道具など私は持っていません。


「親がいない、望まれていない悲しみなんてわからないからこんなことできるんだよね。そんな奴らは死んで当然でしょ?」


「死んで当然な命などありません!」


 そう聞こえ飛んできたのは光の矢。これは姉上の……。


「ちっ……。天照大神の使いか…。」


 そう言い黒い影と女の子は消えてしまいました。瘴気もかなり薄くなりましたしこれなら…。


「さあ、私達と逝きましょう。賽の河原にはあなた方と同じ幼くして亡くなった方がいますよ。」


「そうだよ。修行して、新しいお父さんやお母さんに会いにいこう?」


「………うん。あと、ママごめんね。ママの赤ちゃん殺しちゃって。」


 子供達のリーダーなのか1人が女性に抱きついた。女性は頭を撫でて


「そうね、人を殺すのは悪いことね。でも、ちゃんと償って新しいパパやママにあって次こそ幸せになってね。」


「ああ、貴女も私達と一緒に来てくださいね。貴女も死んでいるので。」


「あ、あの。あの世に逝く前に旦那や子供達を見ることはできますか?」


 そうしてあげたいができない事を伝えた。女性は残念そうに「そうですよね。」と言った。



 洞窟の外には木霊さんと姉上がいた。やはり先ほどの矢は姉上でしたか。


「雷人様大丈夫ですか?余りにも遅いんで翡翠様をお呼びしたのです。」


「雷人、大丈夫?とても顔色が悪いわ。後は私達がやるから雷人は休んでいて。地蔵菩薩様も休んでいてください。」


「姉上、先ほどはありがとうございます。助かりました。しかし、これも地獄側の仕事です。地蔵菩薩様、ありがとうございました。後は私が………………!!」


 急に口から血が溢れ体が激痛に襲われた。さっきの瘴気の影響でしょうか血がまるで墨のように黒い……。


「………!雷人!しっかりして!」


 ああ、こんなことは今まで無かったのに……。今回は油断しましたね。

今回の怪異となってしまった子供達は産まれる事のできなかった魂ですが人を襲ったと言うことで賽の河原で修行をするという設定にしました。

女性もあの後しっかり死後の裁判を受けてます。

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