13.お地蔵様は石じゃなかった!
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『桜さん?こっちは記録課のほうじゃないですよ?』
「だから、着いてからのお楽しみだって!」
そう会話しながら長い廊下をてくてくと歩っていた。
それにしても色々な課があるんだな…。扉を見ると拷問技術課とかお迎え課とかいかにも地獄って感じのがある。それより、お迎えって天国の人がやるんじゃないの?あ、あっちの方に図書室みたいなのもある。地獄ってどんな本があるんだろう。やっぱり拷問関係なのかな……。あれ?奥の方から子供が歩いてくる。
「おや?桜さんじゃないですか。こんにちは、配達ですか?あと、そちらのお嬢さんは本田みのりさんですね?」
とても可愛い笑顔でにこにこと話す小さい子。凄い話し方が大人びているし、赤い前掛けになんか大仏とかが着ていそうな服とか何処かで見たような……。
「あ、地蔵菩薩様!こんにちは!はい、私の所で働いているみのりちゃんです!」
「地蔵菩薩様ってことはお地蔵様!?え!可愛い!石じゃない!」
「ふふふ、皆さんよく驚かれるんですよ。」
お地蔵様は上品に笑った。顔も本当に子供みたいで凄く可愛い。それより少し気になるのは。
『あの、地蔵菩薩様。その腕に抱いているのは赤ちゃんですか?もしかして……。』
「ええ、先日にあの世に来た人間の子供です。産まれる前に死んでしまったのですね。」
そう悲しそうなでも優しい顔をしてお地蔵様は赤ちゃんをポンポンとあやすようにしていた。
「地蔵菩薩様、その子抱いてもいいですか?」
「いいですよ。私よりも桜さんの方がお母さんみたいでこの子も喜ぶでしょう。」
桜さんは手に持っていた荷物を私に「ちょっと持っててね」と言って渡して赤ちゃんを抱いた。赤ちゃんを見てみると産まれる前って言っていたけど未熟児とかじゃなくて本当によく見かける赤ちゃんだった。
「よしよし、本当のお母さんじゃなくてごめんね。次はちゃんと大人になって幸せになってね。私も祈っているからね。」
桜さんの顔はとても優しい母親の顔をしていた。
『あの、子供って死んだら賽の河原ってところにいくんですよね?この子もそっちにいくんですか?』
昔、お婆ちゃんに話して貰った地獄のことを思い出しお地蔵様に聞いてみた。結構曖昧になっているから今度さっき見かけた図書室みたいな所に行ってみよ。
「いいえ、この子は小さすぎるのですぐに次の生を受けますよ。運命はどうすることも出来ないのでこの子が幸せになることを願うことしか私達には出来ませんが。」
お地蔵様と別れ道を進むとある扉の前で止まった。
『外交課?もしかして雷人さんがいるところですか?』
「そう!外交課!普段は師匠ここにいること多いから!」
そう言い、桜さんがノックをしようとすると。ガチャッと扉が開た。でてきたのは
「あら?貴女は雷人殿のお弟子である桜さんかしら?そっちの人間の娘は……。ああ、みのりさんね。」
でてきたのは姿が女神様みたいなんだけど顔が鬼みたいに怖い女の人だった。最近は鬼とかに慣れてそんなに怖くなくなったけどたけど目の前の人は怖い顔をしている。特にキツい目に口から見える鋭い牙とか凛々しい眉毛とか……!口調は優しいけど怖い!
「あれ?鬼子母神様?どうして外交課にいるんですか?インドで何かあったんですか?」
鬼子母神様と呼ばれた女の人に軽く会釈した。前に見た鬼子母神像より怖い。閻魔大王はそんなに怖くないって思ったけど閻魔大王は特別なの?
「いいえ、怪異について雷人殿から相談がありましてね。それでこちらに。貴女たちは雷人殿に用があるのかしら?」
怪異について……?じゃあ、さっきのお地蔵様も相談されてたのかな?その怪異って……。
「みのりさんを襲ったのとは別ですが最近起きた怪異がどうやら子供関係のようなので鬼子母神様と地蔵菩薩様に相談してたんです。」
そうでてきたのは目の下にこれでもかってくらいに濃い隈が目の下にある雷人さんだった。それでも顔はカッコイイって……。
『雷人さん大丈夫ですか?凄い隈ですげど……。』
「大丈夫です。これくらい慣れてます。それよりなぜこんな所に?」
「師匠が最近忙しそうで店に来ないからみのりちゃんが心配してたんだよ。絶対に残業続きでしょ?だからはい、差し入れ持ってきたの!師匠が好きな安倍川餅!」
桜さんはさっき旦那さんが作っていた安倍川餅の入った袋を渡した。
「あの人気のすぐに売り切れるという安倍川餅をこんな時間に?まさか、貴女の手作り………。」
なんか雷人さんちょっと脅えてない?表情はあまり変わってないけど空気が……。え?桜さんが作るとそんなにやばいの?
「大丈夫です!ちゃんと旦那が作った物です!師匠に言われてから私は人前に自分で作った料理だしてませんから!」
ああ、だからいつもご飯は旦那さんがお店で出してくれるんだ。寮の部屋にはキッチン(しかもIHクッキングヒーター)があるのに何で桜さんは料理しないのかずっと不思議だったんだよね。
「貴女の料理は料理とは言いません。あれは拷問に使えるレベルの兵器です。何度貴女の料理に殺されそうになったことやら。」
そんなに酷いんだ桜さんの料理。旦那さんが料理上手な理由がわかったよ。
『あ、あのここで話すのは邪魔になると思うんで場所変えた方がいいのでは?』
なかにいる何人が雷人さんに見えないように親指をたててグッとやっていた。
「あら、いいこと言うじゃない。そうよ二人とも、貴女方の喧嘩なんて喧嘩と言うレベルじゃないって皆が言っているわよ。この前なんて抜刀までして武道場もほとんど破壊しちゃって凄かったらしいじゃない。」
それ人間同士の喧嘩じゃない。あ、雷人さんは人間じゃないか。え、でも桜さんは人間だよね?
「この前って言ってももう100年くらい前の事ですよ。いつまで経っても桜は子供のまま。いえ、私にとっては赤子も同然です。」
100年がこの前って、流石人間の私達と次元が違う。
「そりゃあ、4千年以上生きている師匠からすれば私は赤ん坊ですよ!」
4千年以上!?いや、確かに雷人さんは人間じゃないけど。
見た目は20代後半くらいなのに?それより、さっきより言い合いが激しくなって今にも喧嘩しそうだけど大丈夫なの!?逃げた方がいい?でも、1人になるなって言われているし私はどうしたら……。
「コラ!喧嘩はやめなさぁぁぁぁぁい!!!」
そう声が聞こえて矢が目の前に飛んできた。本当に目の前スレスレに。
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