11.母を探す子供
この話には流血表現などがあります。
苦手な方は注意してください。
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ある日の夜。1人の女性が買い出しの帰り道を歩いていた。
この日、女性はすぐ近くだからと心配性の旦那を家で子供の世話をさせていた。旦那が近くにいればこの後にこの女性に降りかかる災厄を防げたかもしれない。
「もう、すぐ近くに買い物だからいいって言ったのに!心配性なパパさんでしゅね~。」
そう言いながら女性は小さな命がいる大きなお腹を撫でた。女性は妊娠していた。
「子供3人の父親になんだからあの人はもう少し強くなって欲しいわ。……………あら?」
女性はかすかに聞こえる子供の泣き声に足を止めた。どうやら公園のほうにいるらしい。
「もうこんなに暗いのに。迷子かしら?あそこの公園は人通りも無いし危険なのよね。心配だから見に行った方がいいわよね。」
旦那にはまっすぐ家に帰るように言われていたが迷子かもしれない子供が心配で公園のほうに向かってしまった。
「確かこの辺から聞こえて気がするんだけど……。あ!」
女性が周りを見渡すと、丁度木の下に4か5歳くらいの男の子が泣いていた。
「ぼく、迷子なの?お父さんやお母さんは?」
子供は泣きながら
「ママがいないの!ママいなくなっちゃった!ママどこ?」
とずっと「ママ、ママ」と繰り返すばかり。
この子この近所の子供ではなさそうだけどどこから来たのかしら。でも、この状態では聞けそうにないし、とりあえず近くの交番に行った方がいいかしら。
「ぼくね、ずっとママがいなくてね、ママがいる皆が羨ましくて、だからママを探しているの。」
そうか、この子にはお母さんがいないのか…。こんなに小さいのに可哀想に…。
そう思い女性は男の子の頭を撫でた。
「でも、お父さんが心配しているよ。おばちゃんと一緒にお巡りさんの所に行こうね。」
そう言い男の子の手をつなぎ近くの交番に行こうとすると
「やだ!ママがいい!ママがいないとやだぁ!」
と余計に泣き出してしまった。
それにしても、こんなに子供が大泣きしているのに誰も来ないなんて……。
「わかった!じゃあお巡りさんの所に行くまで私がボクのママになってあげる!あ、こんなおばちゃんじゃボク嫌だよね…。」
そう言うと子供は泣き止み
「ほんとに?ほんとにママになってくれるの?ほんとに?」
この女性も幼い頃に母親を亡くしているのでこの子供の気持ちはとてもよく理解出来ていた。自分も母親が死んだことが理解できなくてよく捜し回っていた。
「ええ、少しの間だけどボクのママになってあげる!だからもう泣かないで?ね?」
「うん!もう泣かない!ありがとう!ママ!」
そう言い子供は笑顔になり女性に抱きついた。これで一安心かと思ったが……。
「ボク達のママになるんだからこいついらないよね?」
「え?どういう……………………!!!!ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
なんと抱きついていた子供は女性の腹を割き腹の中の赤ん坊を取り出した。
「あ…………ああ………私の……赤ちゃん………。……赤ちゃんが………!!!」
女性は凄まじい痛みと赤ん坊を失った喪失感で涙を流しながら「赤ちゃん、赤ちゃん」と繰り返した。
「ごめんね。ママ痛かったよね?でもボク達のママになるんだから1人くらいいいよね?」
そう言い子供は口を三日月型にしてニタァと笑った。
ボク達?どういうこと?男の子しかいないじゃない!
すると女性が倒れ込んだ地面から無数の子供の手が生え、女性をまるで地中に引きずり込む様にしてきた。
「いやぁぁぁぁぁ!!助けてぇぇぇぇ!!あなたぁぁぁぁ!」
「少し、遅かった様ですね。」
雷人は血が染みこんだ地面を見ながら呟いた。
「魂も見当たらない。しかし、喰われた様ではないですね。…………おや?これは。」
そう言い拾い上げた、いや抱き上げたのは先ほどの女性の赤ん坊だった。
「あなたは無事、いえ無事ではないですが連れて行かれなかったようですね。とりあえずあの世に連れて行きましょう。また仕事が増える………。」
怨霊や妖怪などの原因で命を落とした場合、地獄側が事故死、自殺などに調節する。そうでもしないと科学が発展した現在では少し厄介な事になるからだ。そしてその調節が尋常じゃないほど手間がかかるので雷人は溜息をついた。