9.ナユユと聞き耳屋
あの、お姉さん、こんなところに座り込んでどうしたんですか?
・・・聞き耳屋?どんな話でも聞いてくれる・・・なるほど。
じゃあちょっとだけ、僕の話をしてもいいですか?
僕、初頭学校の時にずっと苦手だった同級生がいたんです。
小さなことで人をバカにしたり、乱暴で、正直に言うと、こんなやついなければいいのにって思ってました。
・・・なんですけど、つい最近再会して。昔とちっとも変わらない彼が、哀れに見えました。
方向性がちょっとズレてるだけで、よく見てみたら、ひたむきで真っ直ぐなやつなのに。
環境が変わって、僕の見方が変わったのかもしれません。
それでまぁ、いろいろあって、その彼が僕に謝りに来てくれたんです、昔のこと。
そりゃ、思うことはいっぱいありますよ。今までの文句のひとつやふたつやみっつやよっつ、並べてやろうとも思いました。
でんなんか、もういいかなって。
僕は昔のまま、立ち止まってるわけにはいかないんです。彼が前に進み出したように。
それからは、時々会ってますよ。
友達付き合いなんて気持ちのいいものじゃないけど・・・僕の修行の邪魔をしにくるから、相手してあげてるだけです。
僕に追いつこうとして悔しそうに必死で練習してる顔とか、なんかかわいいんですよ。ふふ。
あ、っと。僕、もう行かなくちゃ。
知り合いの結婚式の招待状をもらって!まだしばらく先なんですけど、僕こういうの初めてだからすごく楽しみで。
これからちゃんとした服を買いに行く約束をしてるんです。・・・いいえ、親とじゃないですよ。恋人とです。
なんですか?そんな目を丸くして。
それじゃあ、また来ますね。
さよなら、お姉さん!