五十八.匠オークの家改造2
悲しいかな……下品なお話が後半にあります。
気分を悪くされたら申し訳ございません。
全身に走る激しい痛みに目を覚ますと俺の顔を覗き込む二つの顔があった。
一つは我が家のお姫様、アネモネ。もう一つは浴槽で寝ると言って憚らなかった物好きなルサルカの少女だ。
「二人とも、おはよう」
「お、おはようございます……兄さん」
「おはよう……なの」
何故か二人はぎこちなく返事をすると、サッと顔を逸らした。
ルサルカの少女はそうでもないのだが、アネモネはどこか気まずいと言った雰囲気を漂わせている。
何かあったのかと体を起こそうとすると、脇腹がズキリと痛んだ。
「痛っ」
ふいに訪れた痛みに思わず顔が歪む。
そんな俺の様子に、二人は唖然とした顔をこちらに向けていた。
どうしてそこまで驚くの最初はわからなかったが思い返すとアネモネの前では無様な背中を見せまいと弱音も吐いた事がなかった気がする。
ならばアネモネが驚くのはわかる。だが半魚人、お前はなんでだ?
もしかして俺を怪我もしなければ痛みも知らない化け物か何かだと思っていたのか?
……どうやらその筋が正しいみたいだ。
驚きのあまり、考えるだけに留めるつもりだったのであろう言葉が口を吐いてポツポツと漏れ出している。
その中には「本当に人間……だったの……?」と疑惑交じりで俺の種族を疑っていた事が窺える内容が含まれていた。
ルサルカの少女にはそのうちお仕置きが必要なようだ。
「大げさだな。多分、赤鬼との戦いで負ったダメージが今頃出てきただけだ」
何でもないと手を振って軽く流そうとするとアネモネはきょとんと首を傾げた。
「へっ? 覚えて……いないのですか?」
「何を?」
「い、いえ! エルダートレントさんに怪我は治して貰っていたじゃないですか。きっと床で寝たから体が痛いんですよ! そうです、絶対にそうに違いありません!」
「あ、あぁ。確かにそうかもな」
エルダートレントには確かに手と肩を治してもらっている。
あの時立ち上った光が手と肩に触れてから効果が出たから光の触れた部分しか効果はないんだろうと漠然と考えていたが、どうやら違ったみたいだ。
となれば、体が痛いのはアネモネが言うように床で寝たからだろう。
ボロボロだったが倒壊前の家ではベッドで寝ていたし、アネモネの粘性の高い糸を何重にも重ねたシーツもどきも敷いていた。
だからアネモネの言った「覚えていないのか」の意味は床で寝た事を覚えてないのか、と言いたかったのだろう。
まだ物忘れが激しくなる年齢でもないのだが……ちょっと恥ずかしいな。
それとは別で何かを忘れている気もするのだが、まだ寝起きで頭がスッキリしないのが原因なのか、靄がかかっているような気持ち悪さに思考が阻害されてしまって思い出すことが出来ないでいた。
「まだ寝ぼけてるみたいだ。ははっ……」
目が完全に覚めればそのうち思い出すだろうと一息吐いてから体を起こそうとするとアネモネが俺の体を押し留めた。
「何するんだ?」
「兄さんはお疲れでしょうから今日は一日ゆっくりされては如何でしょうか?!」
「いや、大丈――」
「そうなの、それがいいの! うんうん!」
「本当に大――」
「いいえ、兄さん。無理はいけません。さぁ、横になっていてください」
「そうなの。そのままだと骨が――むぐっ」
「ルサルカちゃんは何を言っているんでしょうねぇ?!」
「お前達、仲いいな」
大丈夫と見栄を張っているが実際のところ、体中が酷く痛む。
それほど大きな声と言う訳でもないのだが、目の前で騒ぐ二人の声ですら骨を響かせ体がジンと痺れる。
家の問題も解決した今、やる事と言えば畑の世話くらいだ。それもトマトと向日葵であり、まだ芽も出てきてない現状では水やりをしたら怠惰に過ごすのだから寝ていても一緒だろう。
……なんか、俺って駄目人間なのでは?
そんな事を頭で考えていても、
「じゃあお言葉に甘えようかな」
欲望には勝てなかった。
働きたくないわけではない。
労働は尊い。
だが俺は色々なものを捨てて森に引き篭もっていた人間だ。
今更失うものはあまりないし気にする必要も無い。潔く言ってしまえば考えるだけ無駄と言う奴だ。
ここは四方を木々に囲まれた森の中であって一日寝ていても咎めて来る相手も居ない。
外に出ろと言われてもパントマイムよろしく、透明な壁に遮られて森から出られないのはこの世界に来てすぐに経験済みなのである。
だから、唯一ゴロゴロしていると咎めてきそうなアネモネのお許しがあるならはそれを享受しない手はない。
「ご飯はお姉ちゃんが何とかするの!」
「それは貴女にも手伝ってもらいますから。そ、それじゃあ兄さん、私はご飯採りに行って来ますね?」
「あまり遠くに行くなよ?」
「はい」
「遅くならないようにな?」
「はい、わかってます」
「襲われそうになったら――」
「わかってますからっ!」
「私は行きたくないの!」
「アネモネを頼むぞ」
一人だったら心配だが、ルサルカの少女が一緒なら安心できる。
戦力として安心だと言っている訳ではない。アネモネがもしまた何かに襲われるような事があっても背負ったルサルカの少女を投げ出せば注意はそちらに向かうからだ。
そうは言ってもそんな事はアネモネは絶対にしないだろうし、そんな事態に陥らないのが一番なのだが。
ルサルカの少女は最後まで恨み言をぶつぶつと呟いて抵抗していたが、俺とアネモネの二人から圧力をかけられた上、うちはただ飯を食わすことはないと伝えると不承不承と頷いた。
「行きますよ」
二人の背中が遠ざかって行くのを見届ける。
そう言えば、折れた脚はどうしたのだろうか。
慌しく出て行ってしまったから聞けなかったがヒョコヒョコ歩きはしていなかったので寝ている間に処置したのだとは思うが……帰ってきたらその辺りの確認も取るとしよう。
「それにしても……静かだな」
二人が出かけて行くと家の中がシンと静まり返ってしまった。
この切り株の家は二人で済むには大きすぎる。
だだっ広い新居に四肢を投げ出して大の字で横になると改めてそう思う。
形状は切り株そのままなので家の中には明り取りの天窓がなく薄暗い。それに加えて物が何一つないため余計に寂しさを助長していた。
「する事もないしな……」
ここはもう俺とアネモネの城だ。家具が無いなら作ればいい。
やる事もないので家具作りでもしようかとぼんやり考えていると、家の外から何やら物音が聞こえてきた。
「すっかり忘れてた……」
思い出した……奴だ。
俺達が苦労している間ものんびりと雄大な自然を全身で享受し、あまつさえ捕まっていると言うのにまるで自分の家の如く寛いでいた……そう、奴だ。
正直に言って相手をするのは非常に気が重い。
感覚としては忘れて久しいが月曜を数時間後に控えた日曜の夜に近い。
そんなシャーネの手綱を握ることに成功した稀代の調教師であるルサルカの少女はたった今出かけたばかりだ。
となるとその手綱を握らなければならないの必然的に俺となる。
またやるのか?
あのやり取りを?
御免蒙る。
俺も中々に欲望に忠実な人間だと思うがシャーネは次元が違う。
理性と感情がドロドロに溶け合わさったあいつとの水面下の駆け引きは首元に刃を当てた状態での殴り合いだ。
態々負わなくてもいい怪我を負いたがる物好きではないので、可能なら回避したい事ではあるが……。
「嫌だなぁ……」
「んんーっ!」
「うるさいなぁ……」
「ん゛ーっ!」
家の中で背中を丸めて何とかならないかと思考を巡らせるがいい案はない。
それどころか考える事を邪魔するつもりか、外ではシャーネが騒いでいる。
「あいつを帰らせる方法を探さないと身がもたないな……」
はぁ、と深い溜息ばかりが口を吐いた。
▽
薄暗い屋内ではわからなかったが痛む体に鞭打って外に出ると太陽は高く上っていた。
思ったよりも長い事眠っていたようだ。
太陽に翳していた手を下ろし、玄関となっている洞から川の向こうに視線を伸ばせば手足を木に縛り付けられた美女が視界に入った。
ギリシャ彫刻は胸こそ丸出しだが下半身はしっかり隠している。それに反しその女は胸は隠しているが下半身は丸出しになっている。
胸にだけ純白の糸を巻き、その美貌も相まって縛られている姿であっても森の妖精、或いは地上に舞い降りた女神と言えるほどに美しいシャーネだが、猿轡の下から声にならない声を上げて騒ぐ姿はやはり人間なのだと現実を如実に突きつけてくる。残念な奴だ。
せめてもの救いはここが人の居ない森で、俺に下心がなく、更にはシャーネ自身に羞恥心と言う物が完全に欠落している事だろう。
そんなシャーネを見ていると美しいと感嘆を漏らすよりもそれ以上に哀れに思えて仕方がない。
「少しだけ、優しくしてもいいか……」
憐憫の情を目覚めさせつつ、縛り付けている木に近づいていくとシャーネはなんとも嬉しそうに目元を弛ませた。
視線から害意は感じない。むしろ一日千秋の思いで待っていた人がついに目の前に現れた。そんな目をしている。
俺がそう思いたいだけかも知れないが本当に嬉しそうな微笑みだ。
口元は猿轡で隠されているが目元だけでもその微笑は有名な絵画のように美しさがあり、柔らかく温かみがある。
落ち着いてくれてさえいれば……。一体何がシャーネの理性を忘れさせてまでその欲望を掻き立てるのだろうか。
そう思わずにはいられなかった。
シャーネが胸の内に抱える思いを窺い知る事は出来ないが、人間社会で生きる大変さやもどかしさだけは理解しているつもりだ。
しかし俺にも都合がある。それは絶対に譲れないものだ。
唸り声が五月蝿い事もあってこれは仕方のない事だと自分に言い聞かせると一縷の望みをかけて猿轡を外した。
「いい朝だな。よく眠れたか?」
「おお、無事に戻って来たか! 少し体が痛いが、悪くはないな」
会話が成立して……いる?!
しかも比較的まともな事を言っているじゃないか!
いや、待て……逸るな。
失念していたが如何にシャーネが肉食……ではなく肉欲の獣であるからと言って、朝から絶好調だとは限らないではないか。
いつ目覚めたのかは知らないが、まだ本調子でないのならこちらにとっては好都合。
シャーネとの初遭遇から起こった舌戦を終えてたった数日。人とのコミュニケーションに対する密度も量も変わっていない俺では勝てる要素は皆無だ。
しかしシャーネが温まっていない今なら勝ち目のない戦いではない。
卑怯と罵られようが相手の弱点を突くのは常識である。
ならば、攻めるなら今しかない!
様子見なんてしていたら食われる。だから虚を突いた渾身の一撃で打破を狙う!
「帰ってくれないか」
「そうだな。私も、戻らなければと考えていた」
てっきり訳のわからない事を言ってくると思って身構えていたが、俺の予想に反しシャーネとの戦いは驚くほどあっさりと決着が着いてしまった……。
絶対にやられてなるものかと気合が入っていただけに、正直を言うと拍子抜けだ。
……だが待て。ひょっとしてこれはシャーネの罠じゃないか?
あのシャーネがそんな間単に引くとは思えない。
先生にはなんて書いてあったか、思い出せ……。
俺は徐々に温まってきた自分の脳を必死に働かせた。
うーんと唸りながらも瞑目し、意識を集中する。
そうだ、確かあれは恋愛中級者用の聖書に書いてあった……
押して駄目なら引いてみる。
と言う奴だろう。
つまりこれは恋愛の手法だ。
おかしいとは思ったのだ。あれだけ雄雄しく押してきた奴がこんな簡単に引き下がるなんてありえない。
先ほどの違和感は確信めいたものへと変化している。
こいつ、誘ってやがる……ッ!
「お前……何を考えてる?」
「……すまない。愛しい旦那様でも言えない。だがこれだけは信じてくれ。一度は帰国するが、私は必ず戻ってくる!」
「戻ってくるな」
「いいや、戻ってくる!」
「やめろ。戻ってくるな」
「じゃあ私と一緒に来てくれ!」
「嫌だ」
「何故だ!」
「嫌だからだ」
「何が嫌なのだ? 私と来たら私を好きにしてもいいのだぞ? むしろ今ここでめちゃくちゃにしろっ!」
「別に好きにしたくないし興味ないから……」
どうやら藪を突いて眠れる獣を呼び出してしまったらしい……。
どこでエンジンが燃え上がるかわからない女。それがこのシャーネの怖いところだ。
余計な事をしないつもりだったのに結局してしまった……いや、そう仕向けられた。
流石は歴戦の手練れ。戦上手だ。
「頼むよ。どうしたら黙って帰ってくれるんだ?」
「力尽くで黙らせてみたらどうだ?」
「……なるほど、それはいい案だな」
家の場所が知られないように目隠しをして森の外に放り出す。
結局、それが一番の手になるのだろう。
本人も帰ると言ってくれたのだしそれで何も問題はない。
……いや、服の問題があったか。
でもそれは追い剥ぎにでもあった事にしてもらおう。
追い剥ぎなんてのが居るかわからないが。
「よし、お前の言う通りにしよう」
「本当かっ?! じゃあ早くしてくれ!」
「静かに待ってろ」
「ああ、待つさ。今まで二十四年も待ったんだ。少し待つくらいなんでもない!」
二十四年……なんの事だ?
相変わらず会話の歯車が噛み合っていない。
不可解な気持ち悪さがあるが、シャーネ相手にそれを感じるのは今更だと軽く考えていたのが間違いだった。
シャーネは目を血走らせ、鼻息を「ふん」と荒く吐いていた。
不気味だ……。
早く放り出してしまおうと近づいたときだった。俺は自分の迂闊さを呪った。
寸でのところでスウェーで回避したが、あろうことかシャーネは力いっぱいに顔を突き出し俺の唇を食いちぎろうとしてきた。
ガチン、と歯が閉じた硬質な音が響く。
避けていなかったら間違いなく俺の唇は今頃シャーネの腹の中だっただろう。
「何するんだ!」
「聞くまでもないだろう? 接吻だっ」
「は……?」
キス……? あれが……キスだと?!
冗談じゃない!
した事はないが、キスがどういうものかくらい知っている。
唇と唇を軽く接触させたバードキスやビターなディープキス。
種類はいくつかあっても歯を立てて唇を食いちぎるようなキスなんて聞いたことがない。
シャーネは本当にキスがしたかったのか?
……いいや、そんなわけがない。
シャーネだからそう感じるのではない。
例えこれが日光浴に来るアラクネのお姉さん方であれ、ルサルカの少女であれ、同じことをされたら同じように感じただろう。
そう思わせる……なんと言うか、ギラついている剥き出しの、とでも言うのだろうか。人間が忘れてしまっている危機感のみたいな何かを呼び起こさせる事をするのがシャーネは本当に上手い。
時には同じ人類ではなく、猿科の生物であって欲しいと願った事もあった。だがそれでも俺はまだ心のどこかでシャーネは人間だと思いたかったのかも知れない。
だから撤回しよう。|シャーネはかろうじてではあるが言葉を介し、二足歩行し、恐らく人間であるだろうご両親から生まれたのだろうが、人間の皮と言う毛皮を被った獣だ。
ようやく俺の中でシャーネと言う存在の歯車が噛み合った。
こいつは本当に野生に還ってしまっている。
だったらやることは多くない。獲物が罠にかかるまでじっと待つ事も時に必要だ。
だから俺はシャーネが動ける範囲ギリギリに位置取るとその場に腰を据えた。
ここからは根気の勝負になる。飯も食わせず、水も飲ませない。帰ると言いたくなるまでの睨み合いだ。
足元に突然黙って座り込んだ俺にシャーネは訝しげな声をそろりと出した。
「旦那様?」
「改めて言うけど、俺はお前の旦那じゃない。だけどここには俺しか居ないから反応はしてやる。どうした?」
「そんな下から舐めるように見られるといくら私でも……その……」
「舐めるようになんて見ていないから気にするな」
「っ! ふふっ、そうか。いや、私が悪かった。急に良い眼をするようになったじゃないか」
「お前は俺の獲物だからな」
「な、に……? も、もう一度。もう一度今の言葉を言ってくれっ」
「お前は俺の獲物だと言ったんだ」
「いいぞ、凄くいいっ!」
「そうか、よかったな。だが俺は甘やかさない主義だからそのつもりで居ろ」
「そうだ、もっとだ。もっと寄越せ!」
寄越せ……?
一体何を言っているのかわからない。
まさかだとは思うが、ひょっとして俺は何かとんでもない勘違いをしているのだろうか……?
いいや、そんな事はないはずだ。
「お前にくれてやれる物はここにはない。さっさと失せろ」
そう言うとシャーネは「ふひっ」と笑い、感極まったようにぶるりと身を震わせた。
何か、とてつもなく嫌な予感がするのだが、その予感の正体はわからない。
森の中にシャーネの仲間が潜んでいてこちらを狙っている気配もなければ赤鬼のような魔物や動物の気配も感じない。ただあるのは目の前で今にも昇天してしまいそうな程恍惚とした笑みを浮かべているシャーネだけ……
ん……?
その違和感に気がついた時、時は既に取り返しのつかないところまで来ていた。
「おい、待て。耐えろ!」
「……無理だ」
一瞬だけ真顔に戻ったシャーネはそう断った。
その瞬間、背後で流れる川のせせらぎとは異なる水音が混じって聞こえた。
「やめろおおおおお!」
「んはぁ……」
弛緩し切った声がシャーネから漏れる。
ただ、漏れているのはそれだけではなかった。
それは、
――ある者にとってそれは聖水。
――ある者にとってそれはご褒美。
――ある者にとってそれは慈雨。
しかし、俺にとっては悪夢だった。
円形に拓かれた森の一部から顔を覗かせる空。
そこから滴る自然の恵みとは違って局所的に狙いすまして降る人肌に温められた水。
ビシャビシャと音を立てて今尚俺に降り注ぐ雨はシャーネから降り注いでいた。
海に釣りに行った事のある者なら理解できるだろうが、人間の生理サイクルとは不思議なもので、人によっては本の匂いでもなるらしいが水を身近に感じると急にその気配に襲われる事がある。
広大な海を前に、男なら誰しもがやった事があるだろう。男女関係なく連れ立って行われるコミュニケーションだ。
だが人に向けてはいけない。
それは最早、マナーや倫理の問題の前に拾い食いをしてはいけない、なんて常識的な話だからだ。
それを獣であるシャーネは理解出来ていなかった。
俺の失敗だ。
獣であるならまずはトイレの躾から始めるべきだった。俺が間違っていたのだ。
反省すべき点は多い。
だがその前にこれだけは言っておかなければならないだろう。
「……最悪だ」
根気勝負だと言いながら、退場を余儀なくされた俺はまたしてもシャーネに負けた。
問答無用、勝てば官軍が自然界のルール。卑怯な手だとは言うまい。
しかし、
「私は癖になりそうだ」
そんな事を言うシャーネを絶対に許さないと心に誓いを立てると俺は涙を堪え、体を洗うためにその場を辞退した……。




