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魔物な娘と過ごす異世界生活  作者: 世見人白洲
本編.第一章 異質な兄妹
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三十一.拾い物の布は怪しいかほり

 失敗した……


 あんな気落ちした様子のアネモネは今まで見た事がない。


 気分が落ち込んでいるときは何をしても上手く行かない事が多い。ましてここは魔物と言うのが居る森だ。変態オークにアネモネ達アラクネ、ルサルカと見てきているが誰もがどこか人間臭いのであまり魔物と言われてもしっくり来ない。


 だが、森の脅威はそれだけではない。オーク君やアラクネのお姉さん方から聞いている冒険者と言う職業の人間達、野生の動物と考え出したら切りがない。


 俺は不安と焦燥の狭間で葛藤に揺れ、家の前をウロウロと何度も往復していた。体はとうに乾いている。


「あぁ……心配だ」


「兄さん、何をしているんですか?」


「アネモネッ!」


「きゃっ! に、兄さん?」


「大丈夫か? 怪我はしてないか? 変な奴に襲われなかったか?」


「や、ちょ……あんっ……だ、だめ……ひゃっ……」


「よし、大丈夫そうだ」


「何が、大丈夫そうだ。なんですか! 兄さんのハレンチ! スケベッ!」


 怪我がないか確認して額の汗を拭うと肩を怒らせたアネモネは息も絶え絶えに俺を糸で縛り上げた。


 アネモネは依然として俺の前で蜘蛛の糸を作るのを恥ずかしがる。そこで考えた出したのが元から出して糸玉にしておいたのを必要に応じて解いて使うことだ。糸玉は手ごろなサイズなので遊ぶこともできる。


 そんな便利な糸玉は量が少ない分、絶妙に調節してあるようで硬く、そしてかなり粘りがあって抜け出す事ができない。


 俺は地面に座らせられ、見下ろされる形でアネモネの折檻を受ける。


「悪かった。あまりに心配だったから」


「いつも森に入っているのにですか?」


「いや、随分と気落ちしてたみたいだから万が一を考えてだ」


「え?」


「ん?」


「私、気落ちしてました?」


「違うのか?」


「いえ、あれは……な、なんでもありません」


 顔を薄っすらと朱に染めてアネモネはツンと横を向いてしまった。では一体あの後ろ姿はなんだったのだろうか。年頃の娘は難しいな……


「とりあえず、解いて?」


「反省してますか?」


「してる。人の、それも年頃の娘の肌に軽々しく触っちゃダメだよな。もうしない」


「えっ! いえ、それはそれで……もっとしてくれてもいいんですが……じゃなくて、心の準備が……」


 アネモネは驚いたと思うともごもごと何かを言っているが声が小さくて聞き取れない。


「どうした?」


「何もっ! とりあえず、触るのは大丈夫です! ですがいきなりだと驚くので一言にしてからでお願いします! 触るのは、いいですからねっ!」


 変なところを強調している……


 そもそも普段からアネモネをべたべた触ったりはしていない。今回は心配しすぎて俺も暴走してしまっただけだ。

 多分触らないと言うのは頭を撫でたり一緒に寝たりするのをやめると言う意味にでも受け取ったのだろう。俺もそれを禁止されると寂しいので嬉しいが、そのうち「もうお義父さんとは一緒に寝ませんから」とか言われると思うと……な。


 ともあれアネモネはそれほど朝の事を気にしていないみたいなので俺も少し気が楽になった。


「わかった」


「それじゃあ解きますよ。それと……に、兄さんにプレゼントです」


 蜘蛛の糸をササッと巻き取り、自由になった体を確認しているとアネモネはプレゼントをくれると言う。


 目頭がツーンと熱くなり、思わず上を向いて押さえてしまったがすぐさま気を取り直してアネモネの手を見ると、そこには……


「布、か?」


 色は白。面積は小さくタオルと言うよりは腰蓑に近い。でも可愛い娘がくれた初のプレゼントを喜ばない人間は居ない。布をギュッと抱き締めると布からはアネモネのではない、微かに変な臭いがしたがそれよりも喜びの方が大きくて俺はこれを気にしないようにした。


「やっぱりこれが布ですか」


「知らないで持ってきたのか?」


「……はい」


「どうした?」


「あ、あの……兄さん? 怒らないで聞いてくれますか?」


「ん?」


「それ、拾い物なんです……」


「だろうな。でも気にする事じゃない。俺はアネモネがくれただけで嬉しいよ」


「兄さん……」


「ありがとな」


「はい……それで、お話があるのですが」


「それは、その背中に乗せてる繭の事か?」


 そう、アネモネが帰ってきたときから気にはなっていた。背中、と言うよりは蜘蛛の下半身の上に乗せられた大きな繭。木の皮を大量に持って来たのを繭状にしているのだろうと思っていたが家に入ってもそれを出すことはなかったのでおかしいとは思っていた。


 一体何が入っているのか想像も出来ない。


「はい……とりあえず、出しますね」


 そう言って背中の繭を地面に下ろすと糸をスルスルと解いていく。


 1/5程度が解かれたときだろうか。家の天井に開いた穴から差し込む光を反射して輝く金糸のような何かが姿を見せた。


 スルリスルリと解かれ、その糸は人間の髪だと理解した。


「アネモネ?」


「はい?」


「これ、誰?」


「わかりません」


「……元あった場所に捨てて来なさい」

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新作短編です。宜しければ読んで頂けると嬉しいです
おっさんずスティグマ―年齢の刻印―
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