十三.オークはモテたい2
モテる。
それは男なら誰でも夢見る理想郷。
道のりは長く、遠く、そして険しい。
だが、オーク君は遣り遂げねばならない。俺達の為に。
そうと決まればまずは調査が必要だ。
「と言う事で、アラクネのお二人に来ていただきました。遠い所ありがとうございます」
「いえいえ。いいですよ」
「私達も暇してますから」
今回お越し頂いたのは前回来てくれたアラクネ族の二人。やはり、こういうのは女性に直接聞くのが一番だ。
そんな二人と太陽光を浴びながら談笑していると、少し拗ねた様子のアネモネが外に出てきた。
「兄さん? 身近に聞ける相手が居ますよね?」
「ん? だから二人に来てもらったん……ふごっ!」
「もうっ! 知りません!」
蜘蛛の足でベチッと叩いて俺を吹き飛ばすとアネモネはまた家に戻ってしまった。
親の心、子知らずとはよく言ったものだ。
アネモネの口から、私オークみたいなでっぷりとした殿方が好き。なんて言われたら俺はオークの集落を殲滅するだろう。血の涙を流しながらな。
なのでアネモネに恋愛を聞くのはまだ早い。
「大丈夫、ですか?」
「痛そうですね」
「いつもの事ですので……」
えっ。あれがいつもの事なの? と言うように驚いた顔をしたアラクネ族の二人。大体いつものことだ。あれは愛情表現。可愛いだろう?
「それはそうとして。お二人が男に求める物とは一体なんでしょうか」
「そうですね……強いて言うなら男らしさ、でしょうか。ゴツゴツした腕、逞しい体、とか」
「後は、甲斐性?」
「なるほど。甲斐性を具体的に言うと?」
「あー、でも甲斐性は違うかなぁ」
「そうなので?」
「私達は結構嫉妬深い子が多いので、追われるよりもその人しか見れないくらいメロメロにされたいと言いますか」
「あ~わかる! 私もそういうところある」
何やらレディーストークが始まってしまった。男の良し悪しからプライドを引き裂くような事までを赤裸々に語ってくれている。
胸が痛い……
軽い気持ちで聞いたのに、とても憂鬱な気分になってしまった。女性の闇を見た気がする。
「ご協力……ありがとうございました……」
「いえ~楽しかったです! またお話しましょうね!」
「そうね! 今度はあの子も連れてきたら面白いかも知れないわね!」
もうやめてください……強いだけじゃダメ、覇気がないのはダメ、目力がないのはダメ、優しいだけじゃダメ、ダメダメダメ。もうわけわからないよ……
そんな気分の落ち込んだ俺とは逆に、キャピキャピと手を振って楽しそうに帰っていくお姉さま方の背を、俺は沈んだ気分で眺めることしかできなかった。
だが収穫はあった。
俺は地中に掘ったオーク君が身を隠している穴に近づく。その中からはシクシクとすすり泣く声が。
「聞こえて、しまったか」
「ぶ、ぶひ。ぶひぃぃぃ」
「泣くなぁ! 気持ちはよくわかる。だが、あれがナマの声だ!」
「し、師匠~」
「そういうの、やめて」
「ぶひぃぃぃ~」
▽
「つまり、お前はオークを越えたオークにならなければいけないと言う事だ」
「どういう事ブひか?」
「聞けば、オークは自らが女性に寄って行くタイプのようだな?」
「そうブひ」
「それじゃダメだという事だ。追うな、追われろ。それが今回得た調査結果だ」
「え? それだけ?」
「……それだけだ」
途中から盛り上がるお姉さま方の圧に押され、俺もグロッキーになっていたから話は断片的にしか聞いていない。殆どが男へのダメだしだったので、俺達にはダメージが大きすぎた。
わかったのはお姉さま基準で言えばオークは論外どころか、同じ生物としてすら見られていない可能性がある。そのためにもオーク君には肉体の魔改造から施す必要がある。
強靭な精神は強靭な肉体に宿る。つまり、肉体改造をして自信が付けば可能性は増えると言う事。
「お前を、ジェントルオークへと強化する!特別レッスンを開始する」
「じぇ、ジェントル? オークってなんだブ?」
「言ってしまえば庶民的精神を兼ね備えた貴族だ。高貴感溢れながらもどこか人を思いやる優しさを合わせ持ち、尚且つ厳しい世界で生き延びる為のドロドロとした闇を併せ持つ」
「な、なんか格好良いブ」
「その為にはその弛んだ体を引き締める。今から十五日間、腕立て五千回、腹筋五千回、百キロ走れ。それを朝と夕方の二回二セットだ。口応えは許さん」
「ひぃぃぃぃ!」




