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悪嬢令子はめげない! 折れない! 砕けない! その1

ここはボロいアパートの脱衣所!

風呂ガラスに映るのは男と女の怪しげなシルエット!


(――私が……)


女の手には鞭! 男の口にはギャグボール!


(私が転生したかったのは……)


風呂場で振り下ろされる鞭! それを喰らって亀甲縛りで喘ぐ美青年!


(こんな世界じゃない!!!!!!!)


「ンモ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!」


この鞭を振るっているツイン縦ロールで2Pカラーのような色合いのドレスを着ている少女の名前は悪嬢令子!

彼女の『中身』は現代から中世風世界の悪役令嬢に転生した事のある女である!

処刑のギロチンが落下している途中という絶望的シチュエーションからスタートして勇気と優しさと根性で見事再起!

ありとあらゆるトラウマを打ち砕きイケメン男性ハーレムを築いて世界に平和をもたらした! ここまでは良かった!

しかし、幸せの絶頂を迎えた瞬間に再び転生!

行き着いた先がここ――伊勢海町だったのである!


(私はどうすれば良いの? 全てを失ってしまったわ……元の異世界に戻りたい……)


一番最初にいた現実の世界には戻りたくないのか? ――というツッコミはさておき!

彼女の今の住処は打ち棄てられた廃アパート! 

金なし! 食料なし! 武器もなし! 

マイナスから始まる地獄の伊勢海町生活ッ!


(駄目よ……めげてしまっては駄目……この世界でも私を慕ってくれる人はいるんだから!)


力強く鞭を振り下ろす令子!


「ンモ゛モ゛モ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オンオンオオンオン!」


嬌声を上げて涎を垂らして浴槽に倒れ込む西風美青年は、フランソワ・ピエール!

転生直後にお願いされて仕方なく令子がぶっ叩いたら――そのまま仲間になった!

そう、彼女の伊勢海町での転生先の人物こそ、心停止で死亡した伝説の若きSM嬢! 『悪嬢令子』だったのである!

ドレスを来ていて露出度低めという上級者向けの嬢で生前、お触りは厳禁だったらしい!


(たしかに悪役で嬢だけれど……これもう全然意味が違うわぁ……人を叩くなんて――辛い……もう……もう嫌ぁ……)


もちろんこの悪嬢令子に転生した『中の人』にSMの気などあるわけがない!


『おい、もっと強く叩けよ!』


『ちゃんと上から目線で物を言えや!』


『ホラ! もっとしっかり股間を踏みなさい!』


――こんな感じでドMの客達の不満が爆発し、SMの仕事はクビになってしまったのである!



「うっ……うっ……」


人を傷つけるのが余程しんどいのか。鞭を振るいながら令子は風呂場に座り込んで小さな声を上げて泣き始めた!





こうして無償の愛の奉仕という名の苦行を終えて、居間に戻る令子!

フランソワは本人が希望したため浴槽に放置されることとなった!


「あwjmふぁうぇjごえ:rgj:えlgぱjsぽがj」


「朝ご飯……私のかわりに作ってくれたのね? ありがとうアザトース……」


テーブルの上におからの入った皿を配置するこの宇宙人のような謎の物質のような奇妙な光の塊のような、結局何かよくわからない緑色の軟体生物の名はアザトース!

肌に書き込まれていた名前以外、詳細は不明――というか名前の読み方がこれで合っているのかすら、よくわからない! 

いつの間にか黙って令子に付いてきていたこの世界の新ハーレムメンバーの一員である!

デカいヘッドホンで音楽聞きながら常に寝ていて、たまに起きたかと思っても実際はボケ~~~~~っとしているだけで基本全く役に立たない!

何を言っているのかさっぱりだが、何故か令子だけこの生き物のうめき声が何となく意味のある言葉として理解できるのであった!


「dlっfsjdfじゃsjdfjdkfkじょいえふぃおい」


「大丈夫よ。私、泣いてなんかいないから!」


「dpをじゃおpをえjfj;そjふぉpdsjsふぉぱ」


「そうよね。三人の生活費、頑張って稼がなくちゃね?」


(大丈夫。SM嬢はもうお終い! 新しいお仕事はちゃんと見つけたんだから!)


食事を終えて、一人で外に出る令子!


(制服か何か……職場で貸して頂けると良いのだけれど……)


生前の『悪嬢令子』は浪費癖が凄かったようで、貯金はまさかのゼロ!

服を買う金すら無いのでドレスの格好そのままで外出する!


(それにしても……ここは不思議な世界だわ……。時空が歪んでいるというか……世界そのものが何かよくわからない物に支配されているような……何ともいえない不思議な威圧感がある……)


「おや、悪嬢さん。こんにちは、今日は新しいお仕事でしたよね?」


令子に挨拶をする若い男性!

彼の名はクリフォート!

廃アパートの前の豪邸に住んでいる現代風のカジュアルな格好をしたフンワリ系イケメンである!


「そうなんです……でも、私。自信が無くて……」


「大丈夫ですよ! ほら――みんな!」


クリフォートのかけ声と共に、建物の窓から人々が顔を出して令子を応援する!


「悪嬢さん。新しいお仕事頑張ってねー!」


「負けるなよ!」


「仕事が終わったら初出勤パーティを上げるからな!」


そう――人が変わったような令子に対して周囲の評価は割と良くなっていたのだ!


「みんな……嫌だわ……恥ずかしい。あなたにしか私、新しい仕事の話はしていないのに……」


「ええ、だから僕が皆にこっそり教えちゃいました。悪嬢さん、最近頑張っているじゃないですか。嬉しくなってつい――すみません!」


クリフォートの笑顔と人々の声援!

思わぬ人々の優しさに思わず涙が滲む令子!


「いいのよ……ありがとうクリフォートさん。 私……頑張ります!」


「頑張って――行ってらっしゃい!」


(そうよ――前の異世界で学習したことじゃない! 一生懸命やれば、必ず誰か私の事を評価してくれるはずだわ!)


そしてついに――彼女の職場が見えてきた!












『なろうファイターバトル会場』








(811ビル……あそこかぁ。台本通りでいいとはいえ――一人でアナウンスのアルバイトだなんて、あがり症の私にこなせるのかしら……)


こうして、彼女の新しい仕事が始まったのである!

悪嬢令子の運命や如何に!






その後、アナウンスをやった彼女がどうなったのかはお察しください。

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