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第四部最終回 律動!

「ウッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


パソコンで執筆をしながらレストランの前で往復カニ歩きをしているのはこの物語の主人公高田浩二! 

これは自らに課した訓練の一環である!

テンプレ執筆に必要なのは100%のやる気、そして0%のアイデア!

全身の筋肉を万遍なく鍛えることで長時間の執筆に耐え抜く!

そして誤字脱字を連発しながら一気にテンプレ異世界を構築するのであるッ!

かれこれこんなことを48時間以上続けているがその課程を細かく説明するとストレスになるのでここでは――省かせてもらう!


「ハァハァ……」


「高田。そろそろ休憩したらどうだい?」


高田を呼び止める和服のイケメンは二藤新人(にとうにいと)

高田浩二の唯一無二の親友である!


「二藤か……大丈夫だ。こんなことをしている間にも暗黒のなろうファイター達がいつ何時、俺の命を狙ってくるかわからないからな」


「たしかにそうだね。僕らの命を狙ってくるなんて、連中は正気じゃない!」


憤る二藤!


(流石正義のなろうファイター二藤……無関係の人間の命まで奪うなんて間違っているからな! 俺も新作の投稿を頑張らねば!)





『フフフフフ……高田浩二よ……』






(何だ? このどこからともなく聞こえてくる不気味な声は!?)


「高田、あれを見るんだ!」


そこには、レストランの前で女性を人質に取る怪しい男の姿があった!


『我が名は黒鼠竜比良(くろねずみたつひら)。暗黒なろうファイター四天王のうちの一人!』


「暗黒なろうファイター四天王だと!?」


驚愕する高田!


『おおっと! 気をつけることだ。なろうファイター共よ。余計な事をしてみろ! このウェイトレスの命は無いぞ!』


「あ……アナタは高田先生! 高田先生でしょ!? 助けてください! この人痴漢なんです!」


「君は――現役女子高生のサヨちゃん!」


高田を呼び止めるグラマラスなウェイトレス!

そう――拘束され人質となっている彼女は転生前の現実世界で教職についていた高田浩二の教え子だったのであるッ!

突如現れたメインヒロインのピンチに高田が驚愕する!


(なんと言うことだ……俺以外に異世界転移していた人間がまだ他にもいたとはッ! なんとしても彼女を助けて事情を聞かねばッ!)


「高田! ここは僕に任せてくれ! これ以上、お前達に好き勝手やられてたまるものか! 二刀流奥義『打武流・暴流筆投ダブル・ボールペンなげ』!」


二藤が両手から二本のボールペンを音速で射出ッ!

それはウェイトレスのサヨちゃんの両胸を貫通して暗黒のなろうファイターの体内に侵入!

ボールペンは肋骨で何度も跳ね返り、暗黒のなろうファイターの臓器をズタズタに引き裂いていく!


「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


――が!


『愚か者め! その男はウェイトレスにセクハラをしていただけのどこにでもいるごく普通の中年の冴えないレストランのオーナーだ! まんまと引っかかったな。私の本体は別の所にいるのだ!』


黒鼠の卑劣な策略に、心が折れた二藤が膝を付く!


「罪のない人間を攻撃の盾にするとは卑怯者め! クソ! ボールペンの先が折れて肉詰まりを起こしている……僕はもうだめだ!」


そう――筆を失うと言うことはッ!

何よりもなろうファイターにとって辛いことなのである!


『ククク……まずは一人! 後は貴様だ――高田浩二! お前との決着は別の場所で付けてやろう! 詳しい日時や場所や服装規定に関しては後日なろうのサイト経由で連絡する! 覚悟しておけッ!』


黒鼠の声がフェードアウトして小さくなっていく!


高田浩二は決意した!


「二藤! この戦い――俺が単身出向く! お前のボールペンの敵は――俺が取る!」


(しかし、なろう経由で連絡か。この前連投をしすぎてサーバーに負担をかけたせいで、アカウントを消されてしまったばかりなんだが。一体どうするつもりだ! 黒鼠!)



そして当たり前のように――何の音沙汰も無かった!






――――数日後。


高田がチート能力で愛犬の散歩をしていたときにその事件は起きた!


(なんだ――あの人だかりは?)


「おい、見ろよ。これは張り紙だぜ?」


「ああ、張り紙が壁に貼ってあるみたいだな」


「どういうことだ!? なんで紙が壁に貼ってあるんだ?」


高田が群衆をかき分けて進むと――なんと壁に張り紙が貼ってあったのである!


(群衆の言うとおりだ! 壁に張り紙が貼ってあるッ! 一体どういうことだ!?)


ついでに、紙には文字が書かれていた!


『なろうファイターバトル大会開催! なろうファイター達よ集え! 今こそ新しい頂点を決める時である! 特に来て欲しいのが高田浩二!』


(『なろうファイターバトル! なろうーよえ! こそしいをめるである! にてしいのが高田浩二!』 ??????????????? 駄目だ、漢字が難しすぎる……ルビくらい振ってくれッ! しかし、高田浩二だと……それはひょっとすると俺の名前じゃ無いか!? これは奴らのワナか! しかしどこで開催されるのか書かれていないぞ!)


「ワンワンワンワンッッッッッ!」


突然、愛犬に引っ張られる高田浩二!


「どうした! 犬よ! 狂犬病か!?」


高田が引っ張られた先に――巨大な高層ビルが二本建っている!

入り口には――


『なろうファイターバトル会場』


――と書かれた横断幕!


(この巨大な建物は『伊勢海ビル』か……しかし、まさかこんな近くに会場があったとは……)


「あっ……犬が――おい待てっ!」


そこで高田はうっかりリールを手放してしまい……愛犬はトラックに轢かれてしまった!


「なんということだ……犬よ……許してくれエエエエエエエエエ!」


名も無き愛犬の死に高田浩二は慟哭するッ!






「さておき。トラックの運転手のおっさん! 迷惑をかけたな!」


「いや、気にするな。最近中高生ばっかり轢いて、しかも手応えが無くどっかに消えちまうからイライラしていたんだ。そろそろ何でもいいからきっちり轢き殺したいと思っていたところさ! 死体の処理は俺に任せて先に進みな!」


(優しい人で助かったが……運送業のストレスは凄いんだな!)


愛犬の死体の処理を運転手に押しつける事に成功した高田浩二!


ビルの中に入ると、そこには多くの人々が屯している。

高田が足を踏み入れた瞬間、黒鼠とは違う――若い女性の声が鳴り響いた!


『ええっと……ゴホン……よく来たな、なろうファイター達よ! 今回の頂点――優勝者はたった一人。えー……ルールはフリー執筆、匿名モード! 優勝者には書籍化の権利を与えるッ!』









書籍化の単語を聞いた途端に鳴り響く数々の金属音!

そして突然、高田の頭部に日本刀が振り下ろされた!


「くっ! 危ないッ!」


咄嗟にノートパソコンでガードする高田! それが半分切れたところで刃は止まった!


「――殺り損ねたでござるか」


(なんということだ……会場の人間が一斉に銃器を抜いてお互いの頭や心臓部分に押し当てている!)


一触即発の状況に慌ててアナウンスがフォローする!


「ちょっと! 何なのよこれ! あ、えー。…………貴様ら落ち着くが良い! 《今回は暴力禁止のセーフライフルールである! 破った物は失格とする!》だ! その上、なろうアカウントは普段使っている物とは別の名義で投稿してもらう!」


その言葉を聞いた途端に鳴り響く大量の舌打ち音!

仕方なしに参加者達は武器をしまった!


(匿名&セーフライフルールか……それまで築き上げた名声は関係なし――命の危険も無しと言うことだな!)


「なるほど。執筆の関連での殺害は厳禁でござるか。殺そうとしてごめんなさいでござる」


謝る浪人風の男を、高田は寛大な心で許す!


「心配は要らない! このパソコンにはなろう投稿用の物語しか入っていなかったからな!」


『えっと――尚! 今回の題材に関する禁止事項は“異世界転移もの”と“異世界転生もの”全般であるッ!』












どよどよどよの――どよッ! どよめく会場ッ!

(※本作執筆中の時点で、追放ものはまだ流行ってませんでした)





「なんだとォ! ふざッけるんじゃあねえ! 異世界関連を禁止にしたら俺達は何も書けねえじゃねえかッ!」 


「そうよそうよ!」


「俺達に何も書くなと言うのか!」


「お前の家族と友人知人全員刺し殺すぞコラ!」


「両手足の爪と指の間の、その奥深くにまで注射針を刺すッ!」


「全身の皮膚を剥がして――真っ昼間から逆さ吊りにしてやラアア!」


『ま、待っ――待って! ちょっと本当に怖いから――少し落ち着くが良い! えっと……何々? 《私達が見たいのはいうなれば“陸に打ち上げられた魚”! 極限状態に陥ったなろうファイター達の悪あがき! ここで貴様らの本質がわかる。緊急災害時に人間の本性が出るのと同じように!》――ということだそうだ!』


「なるほどなぁ……この勝負――“話を書かん者”が勝つでぇ!」


高田浩二の真横で、ひっそりと意味深に呟く全身黄色ずくめのスーツの男!


(一体何だ!? ――この男の胸糞悪いしゃべり方はッ! とても日本語とは思えん……異世界の言葉か?)


高田の推理は的中していた! その異世界の名は大作家民国(おおさっかみんこく)

民度最低のカスみたいな国である!


「なあ、あんた……その言葉……一体どういう意味だッ!?」


「そのままの意味や。ワイの名は善光路良光(ぜんこうじよしみつ)。ジブン(お前)があの二藤の親友の高田浩二か。ワイの忠告の意味……予選が終わったときにきっと理解できるで……」


言うだけ行って高田から離れていく無責任な善光路良光!


かくして、今まさに――試合の火蓋が切って落とされようとしていた!





 一方その頃! ここはビルの外!

爆発音と銃撃と脳漿と人間の破片と悲鳴の嵐!

そこにはすでに夥しい数の死体の山が出来ていた!


(試合を見たい読者と黒鼠の傭兵共が戦争を始めたか……そして、ビルの中にいるのが銀竜寺の後釜……黒鼠に目を付けられたという高田浩二……)


高田をスコープで見つめる黒い影!


(フフフフ。私の手の平で踊る無様な男よ……ハァーッハッハ! 私の正体を知って、果たして――ヤツは正気でいられるかな?)


果たして――この謎の男の正体とは!?

謎の男の恐るべき正体! 恐るべき強敵を前に、高田は圧倒的なポイントを稼いでぶつかり合う!

高田の物語は、世間に受け入れられるのか?

次回「もうどうにもならないので異世界転移! なろうファイターになろうッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!」


第五部最終回 拒絶!

なろうファイト! レディーGO!

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