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第二十五部最終回 暴動!

ついに……ついに高田浩二の身に奇跡が迫る!

悪夢のような先の見えない努力がついに身を結んで作品に前代未聞レベルの大量のブクマがついたのである!

その数なんと75億! ポイント換算で15000000000PT!

圧倒的オーバーフローにサーバーダウンッ!


そして、狂喜乱舞しながら不気味に地下室の中を跳ね回っているのは高田浩二! この物語の主人公である!


「俺はついに、ついにやったんだッ!!」


かくして! きっとこの作品もこれで最終回! めでたしめでたしであるッ!


「やりましたね高田さん!」


喜ぶ騎士鎧美女のヤスターレ・フリューゲンス!


「やったね高田! ついにあってないような努力が報われたんだね!」


&、幼馴染みの和服美女である二藤新子にとうにいこ


「ところで高田さん! 次の話の準備はちゃんとできているんです?」


「大丈夫だ! 今回の話の展開には自信があるぞッ!」


ノートパソコンでなろうに次話を投稿する高田浩二!





エンターキーを押した瞬間! ズシンと鳴り響く地響き!


「高田さん! エンターを押すときに力を入れすぎだと指導したじゃないですか!」


「馬鹿いえ! ちゃんと言うことは守ったぞ! 指圧がすごくてパソコンが煎餅のように潰れたが、投稿自体はちゃんとできているッ!! この地震は俺とは無関係だッ!」


「じゃあ、一体……何が起きたんだろう?」


そこに入ってきたのは血だらけの銀竜寺翼斗である!


「高田浩二……貴様……ッ。貴様は……何ということをしでかしてくれたんだーッ!!」


銀竜寺の怒りの拳が高田の横隔膜を揺らす!


「ウグオオオオオオオオオオオオオアアアア!」


「た、高田!?―― 銀竜寺さん。暴力は別の所でやってください。僕の買ってきたプリンが高田の胃から床に零れてしまったじゃないですか!」


高田が食べたプリンの身を案じる新子にいこ


「愚か者め……高田浩二! なろう作品の執筆で起きるGは嘔吐や眩暈や脳挫傷を起こすこともあるんだぞ! なのに暢気にプリンを食っている場合かァアアアアアアアアアアアア! ――それはさておき、貴様が投稿した作品のせいで伊勢海町で大暴動が起きているんだぞ!」


「ぼ……暴動が起きたからなんだってんだッ!? ああ!? なんだってんだ!? 暴動なんて毎日どこかで起きているだろがッ!」


「どれもこれも――貴様が、作品内でヒロインを殺害したせいだ!!」


「え……ええ……高田……いくらなんでもなろうの作品でメインヒロインを殺すのはまずいよ! というか、こんな暴動が起きるくらい人気なんですか銀竜寺さん?」


「ああ……大人気だ。書籍化されていないというのに個人製作アニメが作られ抱き枕に等身大フィギュアに薄い本なども大量生産! 同人界隈で金稼ぎ用として圧倒的な人気を誇りはじめたヒロインなのだ! 既にどっかの外国人が勝手に結婚式を挙げている! メインヒロインを復活の余地無しに殺すというだけでなろうのタブーだというのに……高田浩二……貴様というヤツは!」


「……高田さ……そもそも一体どういう殺し方をしたらこんな事になるんだい?」


「えッ……どういう殺し方って……ありとあらゆる拷問をした後に下の穴から頭頂部までを木の枝で貫通させて――モズのはやにえみたいにして主人公達の前に晒してやっただけだ! 絵挿年老に描いて貰った“主人公の絶望の表情”の挿絵も挟んでいるッ!」


「な………………なんてことを…………………………」


今回ばかりは高田の暴挙に絶句する新子にいこ

――が、しかし! 逆に拗ねる高田!


「だってェッ! 俺の推しのメインヒロインは他にいるんだもーんッ!!!! サブヒロインの方が人気になって、俺としてはたまったもんじゃないんだよ! だから完膚なきまでに惨殺した! 俺は反省も後悔もしていないッ!」


「あー。よくありますよねそういうの! メインヒロインと違ってサブヒロインは(さら)われたりしないし本筋にかかわらずに好き勝手に動けるので、気がついたらそっちの方が人気になっちゃうパターンですね!」


「ええい、言っている場合か高田浩二! とにかく読者のケアをしないと、とんでもないことになるぞ!!」


「あ、そうだ高田! 実は死んでいなかったとか、別人だったとか、主人公が何かを代償に蘇らせたりとか、そういうイベントを起こせばいいんじゃないかな!」


「ヒロインの死体は主人公が遺伝子情報に基づき身元照会した直後に、敵キャラに強奪され主人公達の目の前で部分別に喰わせてしまったから今更誤魔化せんッ! というか登場人物が都合良く生き返るなんて都合が良すぎるだろ!」


「じゃあ……別の存在に生まれ変わるとか他人の体を使って復活っていうのはどう? この際性別とか種族とか変わっても仕方ないよ」


「馬鹿野郎! いきなり登場人物の性別やら設定やらがぽんぽん変わってたまるかってんだ!」


高田の熱弁に納得する新子!


「うーん……残酷すぎるけどまあ……確かにそうだよね。死んだ人間が簡単に蘇ったら、話の緊張感が無いし、意味不明な蘇り展開をしたら読者も困惑しちゃうよね……」


「しかしこのままここに居るのはまずいぞ高田浩二! これを見ろ!」


そう言って大量の手紙を取り出す銀竜寺!


「なッ! ファンレターかッ!?」


「違うぞ! これはファンによる殺害予告だ!」


「いつものやつか、それは残念だな!」


「高田は読者から殺害予告なんて、いつも当たり前のようにもらっているからね」


今更恐れる事なかれ!

ここ最近、高田はツイッターで毎日のように殺害予告をされているのである!


「言っている場合か高田浩二! 今や世界中の人間が、お前を殺そうとしているのだ! ここに居るのはまずい。とにかく脱出するぞ!」


かくして地下室の窓から地上に脱出する高田達!

――が!


「だ、駄目だ高田! 既に外ではキャラクターの葬式が始まってしまっているよ!」


「な……なんだってエエエエッッッッッ!?」


地下室から地上に出て、大声で絶句する高田!

外では葬式の真っ最中で霊柩車の準備も万端!

しかも謎の三角形を掲げながら座禅で浮遊し、電気を通した粉末式の水素水をありがたがっている白装束の怪しげな集団がいたのである!

ちなみに、掲げているイメージカラーは赤と青と黄色!


「こいつら色々混ざりすぎだろッ!!!!! こんなのが俺のファンなのかッ!?!?!?!?!?!? 頭おかしいッ!!」





「いたぞ! 高田浩二だ!」


「よくも俺の嫁を……ぶっ殺してやる!」




「やかましいッ! それはこっちの台詞だ! それはさておきお前らいつも俺の作品を読んでくれてありがとうッ死ねッ!」


感謝の言葉を述べつつ読者達に対して殺意の暴力を振るい始める高田!




「高田のヤツからノートパソコンを奪い取れ!」


「アイツの作品の次の原稿を弄ってヒロインを復活させるんだ!」



「させるかッ! 時限爆破装置発動ッ!」


高田が謎のスイッチを押すとノートパソコンが大爆発!

そう! これは万が一高田が死んでしまっても死後にその作品が公開されないようにする為の措置なのである!

伊勢海町では最近、死んだファイターの葬式でその作品が全文晒されるという案件が後を絶たなかったのである!

こうなると誰も得しない上に弔問客憤死による葬式の無限ループが発生してしまう!

なので、そうならないように死後の自作の管理は大切なのだ!




果たしてキミの書いている作品は、大人になって死後に公開されても恥ずかしくない物なのか! よく胸に手を当てて考えてみよう!






「まずいぞ高田浩二! このままではキリが無い! ここから抜け出さなくては!」


「高田! あそこに霊柩車があるから、あれを強奪してここから逃げだそうよ!」


かくして! 盗んだ霊柩車で地獄に向かって走り出す高田浩二35の朝!


「僕たち、一体これからどうすればいいんだろう……」


「ふむ……とにかく限界まで走るしかないだろうな。粗製乱造のおかげでコンテンツの寿命も大分縮んでいる。二日くらい逃げ回っていればこの暴動も沈静化するはずだ。ここから先は持久戦になるぞ高田浩二!」


「なるほどな! とりあえず、食料はしっかり積んであるし問題ないッ!」


そう言って高田が食料を確認するために霊柩車の後ろに積んである棺桶を開けると、寝ていたのは食料ではなく悪嬢令子だった!


「な……何よここ……なんで私がこんなところに入れられているわけ?」


そう! この悪嬢令子! 高田が気紛れで惨殺したヒロインにクリソツ!!

似ていたからという理由だけでファンに捕まり眠らされて棺桶にぶち込まれていたのである!

もしも霊柩車が強奪されていなければ、このままヤバい事された後人柱として火葬にされていたかも知れない!!


「令子! とにかく説明は前だッ!」


「せめて“後”か“今”にして頂戴!」


「ああ、ちょうど良かった。悪嬢さん。この前みたいにハンドルお願いね」


「また私がこれ運転するわけ!?」


かくして自然な流れで再び令子が運転を始める!

しかし直後に車が大きく揺れた!


「高田浩二! 刺客が車の屋根に張り付いたぞ! ヒロインを殺された腹いせに俺達全員を殺すつもりだ!」


「仕方ないッ! 俺が屋根に登って人道的に説得してくるッ!」


道交法に配慮してシートベルトをつけたまま天井をぶち破って車の屋根に登る高田!

そこに立っていたのは――いかにもなろう読者みたいな格好をしている変質者だった!


「我が名はミザリ・Yiイー! 高田浩二よ――ヒロインの復活か貴様の死! どちらかを選ぶが良い!」


「うるせえ死ぬのはテメエだ! 作者には作者の都合があるんだよッ!!」


「黙るがいい! 読者の意見を聞かない作者など我々には不要! 死ねッ――高田浩二35歳!」


説得に耳を貸さないミザリは包丁を取り出して高田に突進して来る!


「負けるか! ズァッ!!」


高田は包丁を蹴りで真っ二つにたたき折ると、そのままミザリの肋骨をたたき折った!


銀竜寺が間髪入れずに車の中から蘊蓄を垂れ流す!


「知っているか? ――人間の骨って言うのは蹴ると折れるんだぜ?」


SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!


「そして死ぬのは貴様だミザリ! ごく普通の正拳突きを食らって死ね!」


「よせ! 高田浩二! 必要以上に読者を殺すんじゃ無い! ブクマを貰える可能性が減ってしまうぞ! 殺すのはあらすじか一話目でブラバするヤツだけでいい!」


「チッ……仕方ない……“非殺傷普通の正拳突き!”」


高田の拳がミザリの首元に当たると、ミザリは糸の切れた人形のように力なく倒れた!


「おい高田浩二! 言ったはずだぞ! あれほど殺すなと――」


「心配はいらないぞ銀竜寺! 脊髄を痛めただけだ。一生涯全身不随になるだけだ! 死んではいないッ!」


「それのどこが非殺傷なのよ!!」






「見つけたぞ……高田浩二よ。貴様に伝えたいことがあってやってきた」


突然聞こえてくる野太い男の声!

霊柩車にダッシュで併走してきたのはハーレムメンバーの元特殊部隊員ハヤトだった!


「お前はハーレムメンバーのハヤトじゃないか!」


「ああ……有能ヒロインらしく極秘裏に諜報して得た情報をお前に伝えに来た。お前のなろう作品の最新話の展開にあの北朝鮮がついに激怒して、つい先程、水素爆弾を搭載したICBMが何発も発射されたらしい。そのうちの一つが誤射で人工衛星を破壊して既にニュースになっている。そして――残りは全部、今まさにヒ十プロジェクトに向かって飛んできている!」


「――――――――何だと!!」





高田のなろう作品で世界がヤバい!!






一方その頃こちらは㣺 説家になろうを運営しているヒ十プロジェクト本社!

ここで今まさにミサイルの対策を練っているのは負債だらけの日本を背負う二十代の若者達!


いや! こいつらもある意味で現代の作家モデルやら市場やら出版界隈やらを徹底的に破壊しているといえなくも――いや失礼、根拠もなく悪口言い過ぎだったごめんッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!


……え~とにかく! ヒ十プロジェクトの社員の平均年齢は26~28歳と結構若いのである!


「水爆を搭載したミサイルが接近中です! 係長! このままでは会社が物理的に潰れてしまいます!」


焦りながら係長に詰め寄っているのは女性社員!

ホクロがチャーミーで美人だが、決して顔の良さで採用されたわけでは無いッ!

決してッ!!


「なんということだ……今のヒ十プロジェクトで迎撃は可能か!?」


「最近は史実系の戦記物が全く売れないせいで、レーベルから“軍費”がほとんど入ってこないんです! 異世界物が主力なので異世界関連の物にしか予算を割けません!」


「だったら伝説の魔法とかに予算を割けば迎撃はできるだろう! なろうなんだから、そのくらいの魔法や伝説の武器は沢山あるはずだ!」


「異世界の物品を買うための通貨には“為替”がないんです! 要するに予算があっても日本円だから魔法は買えないんですよ!」


「キミそれはいくらなんでも無駄に設定が凝り過ぎだし不便すぎるだろう!!!!」


「と……とにかく、ヒ十プロジェクトには旧式の迎撃ミサイルがあるので打ち落とすことは可能ですが、精度と威力の関係でどうしても周囲に被害が出てしまいます! そうなってしまっては世間からの批判を免れません! 本来の意味でも会社が潰れてしまいます!」


「クソ! 一体どうすればいいんだ! どうしてこんな事に…………」


至極全うなことを言いながら頭を抱える係長に女性社員が提案する!


「問題になっている高田浩二の作品をこちらの権限で削除するか、修正してヒロインの死を無かったことにするというのはどうでしょう?」


「それは駄目だ! 俺達は登場人物の性別を必要以上に女に変えたがるクソみたいなラノベ編集者とは違う! どんな作者でも規約に違反しない限り、作品を公開し干渉されない権利を持っている! それが『㣺説家になろう』だ……! そこを曲げてしまってはヒ十プロジェクトに未来など無いッ!!」


しかし! そこで意外な天恵が降り注ぐ!


「係長……見てください! 高田浩二の作品が――」




――――――――――――――――――――――――――――――――


「た……高田さん。大変ですよ! 今車のラジオから入ってきたニュースによると……75億あった高田さんの作品のブクマが激減して3になったみたいです!!!!」


「な――なんじゃそリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッ!?」


「そうか……わかったぞ高田浩二よ! つまり――お前の作品は最初から面白くもなんともなかったのだ!」


銀竜寺の凡推理が炸裂!


「つまりこれは暗黒なろうファイターによる“工作”だったのだ! 工作でつけられたブックマークのポイントに釣られて、人気が出ていただけだったのだ! 冷静に考えれば誰も評価点を入れていなかったし、高田浩二が書いた以上、元から糞作品だったのだろう!」


「あ、あの……そもそもブックマークでポイントが入る仕様自体がちょっと――おかしくないかしら……」




――――――――――――――――――――――――――――――――




「ん? とりあえずブクマ入れてたけどこの作品ポイントが減ったし、やっぱり面白くないような気がしてきたぞ?」


「ランキングから消えたし、見るのやーめた! 多分面白くないんでしょこれ」


「あれ? ブクマが減ったら、これそんなに面白い話じゃ無い気がしてきたなあ。ストックしてたけど読みきる前に切っちゃおっと」




――――――――――――――――――――――――――――――――




「よかったね高田! 皆、数字という情報にただ引っ張られていただけだったんだ! 自分の頭で物語の面白さを理解していた訳じゃ無かったってことだね!」


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア無情ウウウウウアアアアアアアアアアアアワアワアワアワアワアワアワアワ!!!」


口から泡を吹き始める高田!


「なんか……流石にちょっと可哀想ね……。私が後で作品を読んだ上できちんとした感想とポイントを入れてあげるから、元気出して頂戴……」


かくして再び底辺に帰り咲いた高田浩二であった!


「お、おのれェ……工作をした暗黒なろうファイター共め! 必ず殺してやる! 殺してやるぞウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


高田浩二のサクセス物語はこれからである!

めでたし、めでたし!




















――――――――――――――――――――――――――――――――




そ れ は さ て お き ! 




ぶっちゃけ高田の作品が今更クソだと判明したところで飛んでくるミサイルがどうにかなる物ではない!

ミサイルはそのまま速度を上げて着弾――







――――ヒ十プロジェクトは水爆が直撃し粉々に吹き飛んだのであった!!








今回は珍しく本当の本当にめでたしめでたしッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!

作者は強欲な男なので、ポイント伸びたり宣伝されたら続きを書きます。

構想自体は大量にあるので本当にやります。


決してこんな作品書いていても人生の無駄になるだけだと思ったわけではありません。

本当です。

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