第二十三部最終回 智慧!
※とある騒動が起きたときに30分くらいで書いた、現在存在している話の中で最も風刺の強い回です。
わからないと思ったら無理せず飛ばしてくださいね。
前回の衝撃の展開から三日後!
ここはお馴染み、サバンナと同じ環境になってしまった伊勢海町!
人間達と、大自然に生きる動物たちの心温まるふれあいが今始まろうとしていた!
そこに劈く銃声!
開幕、野を駆けるサーバルキャットを猟銃で派手に撃ち殺す高田浩二!
この物語の主人公である!
「やったぞ二藤! やっと当たった!!」
「珍しいね。高田の銃が当たるなんて。この動物、よっぽど運が悪かったんだろうね」
そう言って食料が大量に詰まった鞄を、乱暴に地面に投げつける二藤新人!
高田の親友の和服イケメンである!
「犬も歩けば、棒に当たるというヤツだなッ! 出る杭は打たれるとも言うッ!」
そう言ってから撃ち殺した死体に近づいて、特に意味も無くベタベタと触りまくる高田浩二!
人間と、大自然に生きる動物の心温まるふれあいが一行で完了する!
「一体、何をしているのさ高田?」
「前はこんな感じで子どものイルカを触りまくったら、激しく暴れてストレスで死んでしまったからな! 暴れられると見栄えが悪いので、殺してから触ろうという魂胆だ! ――狩猟なう、っと!」
なう、と言いつつ、今回はインスタグラムに自撮を投稿する高田!
投稿した写真に映った写真を見てから、その異常さにようやく気づく!
「なんだこの死体は……! よくよく見たら体中血まみれじゃ無いか! 俺が撃ったのは頭部だけだぞ! これは見栄えが悪い!」
「うーん。惨いなあ。誰にやられたのか、内臓が飛び出しているじゃ無いか……こりゃほっておいても勝手に死んでたろうね」
「クソッ! これじゃあオレが介錯してやったみたいじゃないか! 狩猟の写真は撮り直しだな!」
「いや……もう既に凄い数の蝿が湧いているから、写真を撮るの諦めた方がいいよ高田。こんな蝿が沸いたような写真、みっともないよ」
そう言いながら高田の最新型中華製ノートパソコンを爆発させて焚き火を始める二藤!
非常食のどん兵衛を、カップごと焚き火にぶち込む!
「おい、二藤! 水を入れないとカップ麺はできないぞ! 炎上して炭になってるじゃねえかッ! こんな非情食、食えるか!」
「……水を持って来れないのは仕方ないんだよ高田。アレを見てみなよ」
二藤が指さした先に流れているのは過怒川!
人工的に作られたはよかったが、いつの間にか汚染されていた――こんな悲惨な現状でも一応、一級の河川である!
――信じられないかも知れないが!
「ああ……あの川か!」
「最近、水質の悪さがようやく露呈したみたいでね。しかも、流れてくる水の量もいい加減ときた。川の乱暴な流れが、周囲のありとあらゆる物を巻き込んでしまっているみたいなのさ」
「確かに、川の近くにはもう何も無いな! ――あれは流木か!?」
「みたいだね。まだ樹齢が若い木みたいだ。――勿体ないなぁ」
『過怒川の
立木朽ち果て
流れ去ぬ ――【高田浩二】』
「――どうだ二藤! HAIKUを詠んだぞ!」
「あのねぇ高田……。見たままの光景をそのまま詠んでどうするのさ……学も無いのに、一丁前に文化人面するのやめなよ……」
呑気に駄弁る高田達を他所に、対岸で突如! 人間達と、葉っぱで顔を隠した不気味な二足歩行生物の争いが発生する!!
「おい二藤! 川の反対側が、なんか凄いことになっているぞ!」
「ああ。あの人間達は川を管理している連中だね。まあ、管理なんてこれっぽっちもできていないみたいだけど。専守防衛って感じだね」
「それに対して、顔を葉っぱで覆って、暴力を振るっているあの不気味な動物は何だ!?」
「あの見境の無さは、多分チンパンジーだね。何があったのか知らないけど、脳味噌が溶けてしまったんだろう。川が汚れて動物がいなくなって激怒しているみたいだけど……中にはただ楽しんでるだけの個体もいるみたいだ」
チンパンジーが川の管理者達に寄ってたかってその体を毟り取ろうとする!
「おい! いくらなんでもあれはやりすぎじゃあないか! 惨すぎるッ!」
「心配しなくていいよ高田。まともな人間は誰一人、最初からあんな場所にはいないから」
川を管理している人間が、何かをくくりつけた巨大な十字架を取り出す!
それを見て怯むチンパンジー達!
「ここからではよく見えないが……アライグマか何かの動物達を磔にしているのか?」
「チンパンジーは半端に知能があるせいで、残忍なくせに他の動物を愛でるのが大好きだからね。だから動物を盾にすれば、攻撃されないとでも思ってるんじゃ無いかな?」
「なるほど! 文字通りスケープゴートということか! ――気にせず攻撃を続けているチンパンジーもいるところを見ると……全員が全員、動物好きというわけではないみたいだが……!」
「他に攻撃する場所が無いからね。何とかして川の管理者達が逃げようとしてるけど、今は無理そうだなあ」
憤り、暴れ回るチンパンジー!
汚染した川を破壊しようとして暴れ回り、周囲の草木もまとめてなぎ倒す!
「周囲の生態系が滅茶苦茶だぞ! 本末転倒だッ! ……おい二藤! 騒乱に驚いて川から飛び出た蛙が、巻き添えでチンパンジーに踏みつぶされてるぞ!」
「環境に生殺与奪されるのは、そこで生活する生き物達の宿命だよ高田。それに意外とその蛙も有害だったりするかもよ?」
「惨いことをするものだな!」
「何言ってるのさ。チンパンジーっていうのは、残酷だからこそここまで進歩してこれたのさ」
そしてついに争いが終結! 前線に立っていた川の管理者の一人が殺害され、皮膚を剥がされ吊される!
「おい、二藤。チンパンジーの奴ら…………一番前に立っていた一人しか殺せていないようだが……!」
「まあ、人間じゃないから限界はあるよね。他の管理者達は逃げちゃったし、明日も川は流れ続けるだろう」
騒乱に巻き込まれた悲劇の動物達の死に悲しむチンパンジー達!
死んだ仲間や動物達の脳味噌を並べて体をすり潰し、それを囲んで供養の踊りを踊り始めた!
「悍ましい光景だな…………! 獣達にとって、あの儀式をすることが死んだ動物達を供養したということになるというのか!?」
「まさに獣たちのブレンズだね。それにしても川の対岸は地獄絵図だ。八百万の神々も泣いているんじゃい? ――で、高田はどうするんだい? この川を渡るのかい?」
「俺は神は信用しないからな! というか、どこに加勢すればいいのかさっぱりわからん! ここで見ているだけでもう充分だッ! 近づいたら何をされるかわからんしなッ! 対岸にいて助かったぜ!」
「…………どうだろうね? 川があってもあいつらと同じ地平に立っているのは変わらないわけだから、ここだっていつまでも安全じゃあ無いと思うよ。――高田。君の体…………さっきから焚き火の火が燃え移っているんだけど……大丈夫?」
「いつものことだから心配するなッ!!」
いつも以上に激しく燃え上がる高田を見て、吸い寄せられるように川を渡ってくるチンパンジー達!
「さすがはチンパンジー!! 火を恐れないだけのことはあるなッ!」
高田に近づいて、突如話し始めるチンパンジー!
「オ前ノ、好キナ動物ハ、何ダ!」
「ソノ名ヲ、俺タチニ、言ッテミロッ!」
「そうか……そんなに聞きたいか……そんなに見たいのか――俺の最も好きな動物を!」
「た…………高田。そこまでにした方がいい。“それ”をやったら、どったんばったん大騒ぎする間もなく――本当に何も残らないよ!」
二藤の警告を無視した高田が拳で時空に穴を開ける高田!
興味津々で穴を見つめるチンパンジー達!
「貴様らに直接見せてやろう! これから俺が召喚するのは、ヒトの“純粋な好奇心”と“善意”が作り出した、俺の大好きな動物だッ! ――本当の愛はここにあるのだッ!」
「――――――――――――――――――――――――高田!」
高田が召喚したのは――動物ですら無い、“象の足”!
〔パターン23部〕




