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第二十二部最終回 学園!

ここは『伊勢海大学付属高等学校スクール分校中等部普通科学園』という名前の、要は学園である!


そして、今見えているこの教室は二年か三年の、B組かC組である!


「大変だ! ついに俺達の学園にもテロリストがやってきた!」


そう叫んでその授業中の教室に入ってくるのは伝説の男『男子生徒A』!

古今東西ありとあらゆる世界の学校、学園に必ず登場するレギュラー!

正しくレジェンド的な存在である!


「なんだって! 最近流行っているけど、ついにうちの学園にも来やがったか!!」


弁当を食いながら男子生徒Aに反応する『男子生徒B』!

男子生徒『A』がいる場合、Bである彼も同時に存在している可能性が高く、正しくレジェンド的な存在である!

そう、Bを飛ばしていきなりCに行くことは無いのである! Cから始まる大人ならまだしも、彼等はまだ高校生なのだから!


「今『偶然トイレに入っている』のは誰なのかしら?」


掃除をしながら今回のテロリストの対抗勢力を割り出そうとする女子生徒A!

生理周期が不安定なのか何なのか、世界観によってはたまに嫌な性格になるのが特徴的である!


「どうやら、ウチのクラスの生徒じゃないみたいだよ」


一番後ろの机の上に座っているのは『男性教師A』!

「日直、号令~」という名台詞を持っている準レギュラー的存在である!


「先生! それはどういうことですか?」


「今確認してみたけど、男子生徒も女子生徒もCからWまで全員いるね。つまり、今トイレにいる生徒はウチのクラスじゃ無いみたいだ。このクラスの生徒の名前は全員アルファベットだし、テロリストがこの教室を占拠する可能性は低いだろう。向こうからしても、時間と予算の無駄だろうし」


そう呟く男性教師Aの顔の情報が入ってこないのが気になるが、致し方なし!

その言葉に反応する生徒Aの顔もわからないのでもうわけがわからない!


「じゃあ先生どうします? 校庭に移動して『避難してる感』出すための背景やる感じですかね」


「いや、いいんじゃないかな。『学校が占拠されてる感』を出すなら誰も外に出ない方が良いだろう。ここで『偶然トイレにいた人』が活躍し終わるのを待った方が良い」


「わかりました。それまで暇だなあ……。Bどうする? 『わざと聞こえる声で噂話をする』練習でもしておこうか?」


「いやA、とりあえず俺らは『壁に張り出された中間テストの成績を見てざわつく』練習しておこうぜ」






ちなみにこの時偶然トイレに居たのは、なんと高田浩二!

この物語の主人公であった!


(この学園はおかしいぞ!! ここはトイレのはずなのに、小便器が一つもないじゃないか! これは不便すぎるッ!)


仕方なく用を足すために窓を開けてから驚愕する高田!


「何だ!? あの武装した男達は! 外の様子がおかしいぞ!? トアッ!」


高田は大声出してから、とりあえず四階から飛び降りる!

丁寧な身のこなしで着地し、両脚が複雑骨折する!


「あいててててて」


「撃て撃てェ! 殺せ殺せェ!!」


突如、武装した男達が着地硬直中の高田に対して発砲!

ノートパソコンを生贄にして、とっさにガードする高田!


(いきなり発砲してくるとは、尋常では無いな。辛うじて頭部を貫通するだけで済んだが……!)


追い詰められて仕方なく逃走する高田!

武装した男達と、高田浩二の激闘が始まる!



一方、こちらは校門から入って直ぐの所!

そこに立っていたのは悪嬢令子!


「地味子ちゃん、遅いわね……」


諸事情あって職を失ってしまい失意のどん底に落とされた彼女であったが、この世界でできた新しい友達の“長七地味子(おさななじみこ)”が『お手伝いレベルのアルバイトを紹介してくれる』ということで遠路はるばるここまでやってきたのである!


(身分証明もできないのに大丈夫なのかしら、事務仕事のお手伝いでも

させてくれれば良いのだけれど……)


「いっけなアアアアアアァァァァァいッ! 遅刻しちゃうッッッ!!」


そう叫んで落ちていたパンをくわえながら、令子に向かって武装した男達ごと走ってくる高田浩二!

高田の姿を見た瞬間に、何故か体が硬直して動かなくなる令子!


「危なああ~いッ!!」


高田はそう言ってから、令子をいきなり背負って走り始める!


かくして、令子の地獄の一日が始まる!!



「嫌!!!! 離して頂戴!! 何? 何なの!? 一体どういうことなの!?」


令子は恐怖で動けなくなっていたが諸事情あって朝食は愚か、同居人の為に三食全部抜いていたので嘔吐はしなかった!

あまりにも飢えすぎて一瞬だけ、高田のくわえているパンに目が行く令子!


「とにかく説明は今だッ! ――実は今俺は武装した男達に追われている! 奴らは危険だッ! ここから離れるぞ!!」


きちんと説明してから校舎に再び突入する高田!

辿り着いたのは男性職員用の更衣室! ロッカーの一つを開けて、二人で隠れる!


(……高田浩二の体臭がすごく独特だわ。一体何の臭いなのかしらこれ……!)




「「高田浩二はどこだ! 追え~っ! 追えええええええええ! 追えええええええええええええええええええええええええええ!!」」





(おえぇ……)


予想外の方向からの精神的追撃! 外から聞こえてくる言葉で貰いゲロをしそうになる令子!


「よし! 奴らはいなくなったな! 自己紹介をしよう! まず俺の名前をお前が決めろ!」


「え!?!?!?!?!?!?! い……意味がわからないわ……。ええと。た……高田浩二さんよね」


「よし! なら俺のことは浩二と呼べ!」


「こ……浩二さん」


「浩二と呼べ!」


「浩二……」


「よし! それでいい! お前の名前を教えろッ!」


「え……えっと……私の名前は悪嬢令子よ。できれば悪嬢さんって呼んで――」


「令子!」


「呼び捨てでもいいから悪嬢――」


「令子!」


「わかったわよもう……令子でいいわよ……」


「よし! 自己紹介も終わったし、このままここにいてもらちが明かん! 二人でここから移動するぞ令子!」


そう言って動き始める高田!

それを静止する令子!





「あの……とにかく最初に、ロッカーから出して欲しいのだけれど……」






「なるほど――その手があったか!」






かくして、ロッカーから令子だけを追い出す高田浩二!


「とりあえず、お前はこの学校の部外者なんだろ? 目立つ格好しているし、校内の人間に不審者と勘違いされるからこれを着ろッ!」


そういって高田は、ロッカーから女子生徒の制服を差し出す!


「……おかしいわね。ここって男性職員の更衣室だったような……」


「そういう趣味の男性職員なんだろ! 今時その程度の変態ならどこの学校にもいる! むしろJKみたいな高齢層を狙うなんて、男性教員からすればレアな存在だ!」


「あなたの中の教師像って、どうなっているのかしら……」


「心配するな! 借りるだけなら問題ない! 俺はこのままロッカーの中でスマホを構えているから、とにかく急いで着替えろ!」


「なにナチュラルに盗撮しようとしてるのよ。部屋の外に出てなさいよ……」


「クソッ! しょうがねえな!」



(何よこの制服……スカートの丈が短すぎるわ……)



かくして、仕方なく制服に着替えて外に出る令子!

そこに鳴り響く校内放送!


《校内の皆さん。私は伊勢海警察署の者です。現在、無差別に他者を殺害する凶悪なテロリストが西校舎の一階を徘徊している模様です。近づかないようにお願いいたします!》


「そんな……あの武装集団はテロリストなの!? 西校舎の一階って――ここじゃない!」


「そんなの当たり前だろ! このままここにいたらまずい!! とにかく急いで移動するぞ!」







「いたぞ! 撃て撃てェ!!」


二階から降りてきたばかりの武装男達に見つかり、再び令子を背負って走り出す高田浩二!

そのまま猛ダッシュして、次に二人が隠れたのは図書室である!


「ここにいれば、一先ず安心だろう!!」


「ね……ねぇ……このままここに隠れて、伊勢海警察が来るのを待つわけには行かないのかしら?」


「こんな状況下でそんなことをやってどうする! 自殺行為だ!!」


激昂して本棚を叩く高田浩二!

中から医学書のラノベが転がり落ちる!


「お、落ち着いて頂戴! 言っている意味がいまいちわからないわよ……。あら……この本、ラノベの新刊ね……」


「何!? 令子! お前もラノベが好きなのか!?」


「……ごめんなさい浩二。今、そんなことを話している場合じゃ無いわよね」


「何!? 令子! お前もラノベが好きなのか!?」


「あの――――――――――――」


「何!? 令子! お前もラノベが好きなのか!?」


「………………ええ。まあね。よく放課後、図書室でラノベを読んでいたものよ。…………昔は学校なんて嫌で嫌で仕方なかったのに……距離が空いてしまうと懐かしさを感じてしまうものね……。ラノベって常に人気で、返却してくれる人が余りいないのが困りものなのよね……」


そう言って何とか話を切り上げようと、ラノベを拾い上げて元の場所に戻そうとする令子!


「令子! この中に知っている話はないのか!?」


「よ……読んだことのないお話ばっかりね。私が昔読んでいたお話の続きはどうなったのかしら?」


「お前――最近の異世界ブームを知らないのか!? 世代が古いぞッ!」


「――だって! 昔のお話の方が個性があって面白いのだもの、仕方ないわ! 何なのよこれ! よく見たらこの棚、異世界の『い』から始まる話しかないじゃない!」


ラノベを二人で片付けながら、しょうもない口論を始める令子と高田!

そこで、図書室に入ってくる怪しい影!






「生徒会長! 探しましたよ!!」


令子に近寄ってくるこの人物の名前は『謎の男子生徒X』!

『The 寝具』という名の布団屋の息子!

どうやら、冒頭で登場したクラスの一員のようである! ……?


「(私が生徒会長って……誰かと勘違いしているのかしら?)」


「(口裏を合わせろ! この非常時に怪しまれるようなことはすると面倒だッ!)」



「あ、いえ。生徒会長が部外者なのはわかっているので大丈夫です。この学校では、部外者でも見た目が生徒会長っぽければ生徒会長になれるので」


「えっと……浩二。一体どういうことなのかしら……」


「要はビジュアル重視ってことだな!」


そう、余りにも制服を着こなしすぎていたので、どこからどう見ても今の令子の見た目は生徒会長となっていたのである!


「生徒会長はツイン縦ロールですし、もっと高飛車に話せばこの学校の理事長の娘にだってなれちゃいますよ」


「おかしいわよそれ……どう見ても偏見で決めてるじゃない!」


「令子もよく読んでいるからわかるだろッ!! 生徒会長っていうのはな。ミニスカで一ページ目を“コマぶち抜き”で飾るのが基本なんだよ! それで立ち読みする勇気ある者達を引きつけるもんなんだッ!!」


「容姿端麗で成績優秀、運動神経抜群の三種の神器ってやつですね」


「あの、あなたたち……。それって、ラノベじゃないような気がするのだけど……」






「ほう? ラノベじゃなかったら何だというのだあーん!?」


「僕も気になります! 一体何なんですか!?」


「そ……それは…………。そのぅ……うう……」


何故か赤面して口ごもる令子!

そこで突然、怪しげな計器を取り出す謎の男子生徒X!


「失礼。どうやら……今この瞬間、この場所は学校の中で最も危険な場所のようです。急いで二人とも安全なところに避難したほうがよいです。僕に着いてきてください」


「ああ、わかった!」


そう言って真っ先に図書室を出て行く高田浩二!!


「わかってないじゃない!」




――――――――――――――――――――――――――――――――




「……それにしても、この学園。常に屋上が開放されているというのは珍しいわね」


「パシリ達の要望で、焼きそばパンの自販機もありますからね。授業をサボるのは基本中の基本ですので屋上は二四時間開放となっているんです」


「授業をサボるだなんて……普通は家に電話されちゃうわよ……」


「学園として設備も充実しています。“誰も使わない空き部室”も大量にありますし、どこの顧問も受け持っていない女性職員が大量に居ます。夕方になるとほとんど全ての教室に“一人で佇む女の子”が設置されます。プールは屋内屋外共に覗きやすいようになっていますし、毎日転校生が来るようになってます。半分くらいの確率で外人とかクォーターとかです。後、バレンタインの日はほぼ必ず平日になります。巨大な学食もありますが、何故かほとんどの生徒が購買部で戦争を行うのでもてあましている感が凄いです」


「何よそれこわいわ」


「何言ってるんだ! どこの学園も今時そんなもんだろ!」


「どの世界の学園のお話よ……」


「一先ず、ここに避難しましょう」


そう言って三人が入ったのは家庭科室!


「なるほどな! 令子のイベント用の失敗料理で鍋を爆発させることで奴らを殺傷し、窮地を脱するという訳か!」


「アンタは私に、一体どういうキャラを求めているのよ!」


「馬鹿野郎ッ! その見た目と口調で、料理が美味くてたまるかッ!」


「そ……そんなこと言われたって……お料理を失敗するなんて逆に難しいわよ……」


「むむ? 生徒会長。どうやら、呑気に料理をしている女子生徒がいるようですよ」


「こんな状況で本当に呑気ね…………。とにかく急いで料理を止めて、隠れて貰わないと!」


そう言って家庭科室の女子生徒二人組に近づく令子!





「先輩。卒業前にお時間を下さってありがとうございます! 私、明日の告白に――命をかけてるんです!」


「いいのよ後輩ちゃん♪ 私が最後に、秘伝のレシピを伝授してあげるわ♪」







「で、令子! お前あの女子生徒の、一生に一度の思い出のケーキ作りを止めるのか!?」


「うぐっ…………」





「止めるのかッ!?!?!?!?!?!?」


「うう…………流れ的に止めちゃ行けないのはわかってるわよ! 私だって一応乙女なんだから!」


「乙女じゃ無くて落ち目だろッ!」


「何でそんなことをアンタが知ってるのよ! 事実だけど余計なお世話よ!」


そこに再び鳴り響く校内放送!

今度は若い生徒の声であった!


《え~本日16:00より、避難訓練の本番を行います》










「………………は?」


「何を呆れているんだ令子! お前、地震くらい知っているだろう!?」


「あの、そういうことが言いたいわけじゃなくて私――」


「あ~そうでした生徒会長。今日は避難訓練の本番です。今年は地震発生部の部費が潤ったらしいんで、それの余波でしょう。ここの隣の教室が、地震発生部の部室だったと思います」


そして16:00になり、予定通りに地面が揺れ始める!


「チッ! 嫌な揺れ方しやがる! せめて横揺れにしてもらうように交渉にいくぞッ!」


「あの……お願いだから、ちょっと待って頂戴! 私、もう既にこの状況に追いつけなくなりつつあるわ……」


「何言ってるんだ令子! 今時、超常現象を起こすオカルトな部活なんてどこの学園にもあるだろうが!! 超能力者を集めるミステリーサークルだったり、宇宙人を召喚するミステリーサークルだったり、洋館で殺人事件を起こすミステリーサークルだったり色々あるだろ!」


「そうですね。希に、他の部活に勝負を挑んで養分にされてます」


「全部ミステリーサークルじゃない!! そもそも、そんな変な名前の部活――私聞いたことないわよ!」


「何を言ってるんだ! たった今聞いたろうがッ!!」


そう叫んで、高田浩二はその拳で家庭科室の壁に大穴を開ける!

その穴を通って隣の部室に入る高田浩二!


「ちょっと―――――浩二! 一体何やってるのよ!」


「風通しが良いのは、我が学園の校風なんですよ。生徒会長」






「おいお前らッ! 今すぐ部活動を停止しろ! 縦揺れは校則違反だッ! マジで心臓に悪い!!」


高田の先には、地震発生装置を守るように取り囲む部員達の姿!


「やかましいぜ! この高速で震えている地震発生装置を、校則程度で拘束できるとでも思ってんのか? このまま揺らし続けてテメエの心筋を梗塞させてやるぜ! 今まで部費が削られすぎて自費でまかなっていた先輩の恨みを晴らす!」


「自費でやっているからなんだッ! 部費が降りた途端に、無慈悲なことをするんじゃなあないッ!」


「自費で部活の運営してただなんて……貧しいところだけは、親近感湧くわね……」


「マイナーな部活動の宿命ですよ。生徒会長」




(なんとなくだけどわかってきたわ……ここにいる全員、思考と行動がかなりおかしいけれど、この学園は創作のお約束が通じるんだわ! なら、私にはあるはず――とっておきの策が!)








「「ま……待ちなさいっ!! 生徒会長権限において、地震発生部の部活動を停止しますわよっ!」」






そう叫んでからキリッとした表情で、格好いいポーズを取る令子!

























「そんな物凄い権限が、生徒会にあるわけがねえだろッ!」


「生徒会長……一体どうなさったんですか?」


「うわあ、何だよあの恥ずかしいポーズ……」


「見ちゃ居られねえよ……痛すぎるぜ…………」


どん引きする高田浩二と男子生徒Xと地震発生部員達!


(なんでこの流れで、“これ”が通用しないのよっ!!!!)


恥ずかしさの余りポーズを決めたまま動けなくなり、涙目で顔真っ赤になってぷるぷる震える令子!

そんなこんなで呑気しているうちに、地震発生部の地震により、壁の穴の向こうの家庭科室から火が発生!




騒然とする放課後の放火後の家庭科室!




「生徒会長、すみません。自分は諸事情あって、火が弱点なので今日は早退させていただきます」


もっともな理由をつけて、教室から出て行く謎の男子生徒X!


「何を意味不明なことを言っているのよ!」


「馬鹿野郎ッ! 火に巻かれたら人間は死ぬだろ! お前はそんなこともわからないのか令子ッ!!!!!!!!」


「ええ? あ…………あれ? 言われてみれば確かにそうよね?」


状況に呑まれ続けて、平静を失いつつある令子!






「先輩。火が強くて家庭科で作ったケーキが焦げちゃいますよ~」


「大丈夫♪ このくらい焦げたって平気よ♪ アンタの愛は燃え続けるんだから♪」





「アンタ達はアンタ達で何呑気な事を言っているのよ! このままじゃケーキは愚か、自分達まで全部焦げちゃうわよ!!」


穴から家庭科室に飛び込んで、死に物狂いで女子生徒二人を救出する令子!

そこに鳴り響く校内放送!



《火事です! 火事です! 落ち着いて机の下に隠れてください!》




「アナウンスやってるあなたが落ち着きなさいよ!!!! とにかく、急いで鎮火しないと……!」


「俺に任せろッ!」


そう言ってチャックを開けようとする高田浩二を無視して、消火器で家庭科室の鎮火を試みる令子!


(駄目だわ……火の回りが早くて天井まで火が上がってしまっている……。これは初期消火の範疇を超えてしまっているわ! いけない! まだ家庭科室の中に人がいるじゃない――!)


覚悟を決める令子!


「……浩二。ここにいる皆を連れて、ここから逃げて頂戴!」


「まるでラノベの主人公みたいだな令子! ああ! ここにいる連中は俺に任せろッ!」







そう言って一人で駆け出す高田!


「アンタいい加減わかりなさいよ!」


かくして、人命を救うために一人で再び令子は炎の中に飛び込んだ!









そこで、令子は家庭科室の窓から外を校庭を眺める一人の少女に気づく。

少女の髪はまるで幻想のように揺らいでおり、人形のように白く美しい素肌は光を反射してとても眩しい。

その美しい少女は、令子の方をじっと見つめて呟いた。






「ねえ……あなた。この学園は好きかしら……?」





――――――何かが始まる予感。

そう……これが運命的な二人の少女の出会いだった。









「あの、ごめんなさいね。それ、今の状況下でやっていい良い台詞とシチュエーションじゃ無いと思うの……。お願いだから冷静になって頂戴!」


「私は……誰よりも冷静……あなたと違って、火に巻かれても取り乱していないわ。……心頭滅却すれば、火もまた涼しい…………」


「え……ええそうね。そうなんだけど――そうなのよね……。確かにそうなんだけど――。…………確かにそうだわ……。どうしよう……。もしかして、これひょっとすると、私がおかしいんじゃないかしら……?」


そこに突如乱入してくる武装男達!


「警察だ! 先程から逃げ回っているそこのツインテールの女……さてはテロリストの共犯者だな! 現行犯の容疑で逮捕する!」


「――え? ――は? ――――――え?」


もうどうしようもなくなって、炎の中、ただただ呆けるだけの令子!












かくして! メインヒロインである長七地味子(おさななじみこ)を殺害していた凶悪なテロリスト――高田浩二は、どさくさに紛れてまんまと学園を脱出!

悪嬢令子は何も理解できぬまま、高田をずーっと探していた男達――警察に『共犯者』として逮捕され、投獄されることとなるのであった!




めでたしめでたし!













テンプレートというものがあり、お約束というものがあります。

そういった要素と一緒に、作中屈指の常識人である悪嬢令子を入れてみたら真っ当な学園物ができるのでは無いかと思いました。

しかし、授業すら成立せず登場人物が好き勝手に動いてしまった結果、お話の鍋が爆発しました。



悪嬢令子はありとあらゆる“常識の範囲内の危機”に対応することができる――他作品ならば主人公を張れるような(実際、悪役令嬢としての転生実績のある)才女なのですが、伊勢海町を取り巻く狂気が常軌を逸しているため、どう足掻いても翻弄され続ける宿命を持っています。








よく読めばわかると思いますが、謎の男子生徒Xもこの学園の部外者です。

下手すると、地球の部外者です。



予め言っておくと次回は全話中最も風刺色の強い回なので、よくわからないなと思ったら無理に読まなくて大丈夫です。

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