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第二十部最終回 神殺!

今回は比較的平和な闇深回です

「そういえば高田。伊勢海町のど真ん中に『狂人』が湧いたみたいだよ。会いに行かないかい?」


「何!? 『狂人』だと! それは一体何者なんだ二藤!」


道の真ん中で鼻に割り箸を刺して逆立ちで四足歩行しているのは高田浩二!

この物語の主人公である!


「伊勢海町に定期的に出没する、好き好んで変なことやる一般人を『狂人』というのさ」


「それは……何か内因性外因性心因性の原因があるわけじゃ無いんだな? 病気や障害でそうなってしまったとかじゃなくて、自分から進んで変なことやっている奴なんだよな!?」


「そうだよ。普通に会話もできるけど、あえて変なことをやっている人達なんだ」


「それなら社会倫理的に風当たりも強くなさそうだし良しッ! 早速見に行くぞ!」


高田がチート能力を使って、走って来たタクシーを呼び止める!







※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 





しばらくして、タクシーを担いでいた高田達は狂人を早速発見する!





「――――――――――――――――――――――――!!」







「遠くからで何を言っているのかさっぱり解らんな! 囲っている群衆が邪魔だッ!」


「ネットで既に大人気。テレビ番組にも出たらしいよ」


「まるで動物園の猿だな! そしてどけッ、野次馬共!」


地面にタクシーとノートパソコンを、粉砕するほどの威力で叩きつける高田浩二!

巨大なメンコが激突したかのような風圧でマスコミごと群衆が吹っ飛んだ!

その中心で吹き飛ばされずにぶつぶつと呟き続ける狂人!


「私は救済を求める。私はこの世界を抜け出したい。転生の神よ……どうか私に異世界を与えたまえ……我を救い給え…………」


「なんだ!? この男、意外と若いじゃ無いかッ!」


「確かに、思春期から30代は“頭がおかしくなってしまう人”が多いみたいだけど、この人は高田とは違ってただのファッションキチガイってやつだね。道徳的配慮は必要ないから全力でやれるよ高田」


「よし――おいアンタ! しっかりしろ! 正気を取り戻せ!」


道路標識に向かって話す高田浩二を無視して、祈り続ける狂人!


「神よ……助けてくれ……私は救済を求める。私はこの世界を抜け出したい。転生の神よ……どうか私に異世界を与えたまえ……我を救い給え…………」


「この男、まるでこの世界が終わっているかのような言い様だな! 終わっているのは貴様だけだ! 目を覚ませッ!」


その言葉に激昂して立ち上がる狂人!


「何故気づかない!? 我々に待ち受けるのは絶望だけだ! 今日より悪い明日! 明日より悪い明後日!! 見たまえ! これを見たまえ!!」


そう言って、なんかそれっぽいグラフをスマホで見せつけてくる狂人!


「高田。これは――この伊勢海町の人口の割合みたいだね。年月日は今から8年程先になっているけれど……へー。75歳以上の高齢者の割合が全体人口の1/4になるんだね」


「なんか……それは――ヤバいな!」


「ヤバいね。65歳以上だと全体の約三分の一だね」


「――それもヤバいな!」


「ヤバいね。ちなみに2040年まで悪化し続けるみたいだね」


「――ヤバすぎるな!」


「ヤバすぎるね」


「そんな状態になったら伊勢海町はお終いだな!」


「お終いだね」







「だから終わると言っているのだ!! この国は……伊勢海町はお終いなのだ! 私は恐ろしい! 滅亡が近づいているのに、平気な顔をして何もしようとしないお前達が、恐ろしい!! 何故この終わりがわかっていて誰も何もしないのだ!! 狂っている!! 皆狂っているウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」


「そりゃあ誰も騒がないだろ! 心のどこかで皆わかりきっていることだからな! 実感が湧かないからお前のように叫んでいないと言うだけの話だ!」


頭を抱えて脅える狂人を落ち着かせる為に、肩に手を置く高田!


「アンタ! この程度の苦境、気にするな! 今危機に瀕しているのはお前だけじゃ無いんだからな! 力の無い者は直に皆等しく、終わりが来るのさ!」


「というか、わかってたからって何かできる物でも無いし。今更対策しても手遅れだし。騒いでどうにかなる物でも無いしね。気にしても仕方ない。高田なんて色んな意味で終わっているからね」


「うう……いやだいやだ。私を転生させてくれ! お願いだ! 転生させてくれ“転生の神”よ!! それだけが我が救い……! 我が救済!!」


そう言って、再び祈りを再開する狂人!





「(なあ、二藤。“転生の神”ってなんだ?)」


「(異世界転生でよく出てくる存在だよ。『主人公に特殊能力を付与して異世界に転送してくれる神様』のことさ。伊勢海町でも目撃証言があって、割とコンスタントな転移&転生方法らしいんだ。たまにいるんだよね。トラックに轢かれる勇気の無い人がさ)」


「(この男の様子から察するに、この世界には何ヶ月も出てきてないみたいだが……!)」


「(うん、そうだね。最近全く出てきていないらしくて、だからか知らないけどああいう狂人が他にもちらほら出てきているみたいだ)」


「ん? ――――――待てよ……。消えた“転生の神”か……!」


「もしかして高田。思い当たる節があるのかい?」


「ああ、あれは数ヶ月前。俺がこの世界に来るきっかけとなった話だ……」


高田の回想が始まる!




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 




「ここは――どこだ? 何だ、この真っ白な空間は!?」


突然意味不明な空間に飛ばされ、困惑している高田の目の前に、神々しい超絶美少女が現れた!

いかにもメインヒロインっぽい見た目をしているが――果たして!?


「高田浩二……覚えていますか? あなたは落雷で命を落としてしまいました。しかし、あなたが死んだのは神様である私の手違いなので――あなたにチート能力を授け、他の世界に転生させてあげましょう」








「断る! とっとと元の世界に戻して貰おうか!」


世のことわりを平然と無視して、女神に言い放つ高田!

想定外の返答に驚く女神!


「ごめんなさい……残念ながら元の世界には戻れない決まりがあるのです」


「俺は、このチキンラーメンにさっき湯を入れたばかりなんだぞ! 早く帰って卵を乗せたいんだッ! とっとと帰らせろ!」


「待ちなさい! あなたには素敵な人生を歩ませてあげましょう。無敵の能力を手に入れ、女の子達に囲まれ、圧倒的な才能で不快感の無い程度に緊張感のある戦いをすることができる世界。魅力的でしょう?」












「馬鹿野郎! 俺が転生したら――異世界テンプレが投稿できなくなるだろ!! それに俺はパソコンで執筆するデジタル派だから、女の血液なんて必要ない! もう自力で勝手に帰るからな!」


女神を無視して勝手に帰ろうとする高田!

その正拳の圧倒的威力によって、なんと時空に帰還用の穴が空く!




「どうしてこんな酷いことを! 私は逃げ場を失ったあなたのことを哀れに思っているからこそ、こうしてチャンスを与えてあげているというのに!」







「――――――――先程から、貴様。俺を騙して何がしたいッ!」


「騙すだなんて――何故、そのような酷いことを言うのです? 女神は悲しい……。悲しいです…………うっ――ううっ――」


そう言ってから嗚咽交じりに泣き始めるキュートな女神!










「貴様なら……“殺そうとした”人間の情報くらい解っているだろう! 俺がたかだか落雷に直撃した程度で、死 ぬ と で も 思 っ て い る の か ッ!」









「うっ――ううっ……うううう…………」


「……何か言ったらどうだ! 貴様は自分の事を女神と言ったな……しかしおそらく――――――――――“人にとって都合の良い神では無い”ッ!!」


「………………………………………………………………………」


女神はぴたりと泣き止んだ!

それから――何も言わずに笑顔になる!




そのまま、その口角がどんどん不自然な高さにつり上がっていく!

ついに口が四方八方に裂け! その目から涙ではなく夥しい量の青い血液が流れ始めた!




『……よく……私の正体を見抜いたな……人間を次々と転生させ……大団円――幸福の絶頂になった瞬間に現実に戻してやろうと思ったのに……。そこにしか救いのない人間が見せる絶望の表情は――実に面白いというのに……』


「おのれッ、割とマジで笑えないレベルでなんというおぞましいことを! 許せん! 貴様を今ここで成敗してくれる!」


『愚かな生き物だ……。貴様のような矮小な存在が私を斃すだと? 私の本当の姿を見せてやる……。狂気に溺れ死ぬがいい……』


血だらけの状態から泡立つような擬音と共に、女神が常軌を逸した大きさに変化する!

その姿を文章で表現するのは、面倒臭い上に余りにもおぞましいので詳しい描写はカットさせてもらう!

圧倒的な巨悪を見上げつつ、全く動じずにのんびり欠伸をする高田浩二!


「へ~。――なんだか、タコかイカみたいな見た目だな!」


『どういうことだ貴様――この私の姿を前にして人間が正気で居られるわけが……』


「やかましい! そろそろ三分経つから、さっさと死にやがれッ! ノーマルパンチ!」














『何故貴様私の言葉――――――――――――GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH』


執筆力を完全に無視した高田の本来のパワーがほんの少しだけ炸裂!

何万億年と生きた“神”が轟音と見紛う絶叫と共に絶命!

その返り血を浴びて高田のそれまで白かった外套が、青く染まった!


「折角だし、貴様のチート能力は俺が全部戴くぞ!」


そう言って神の死体を素手で解体し始める高田!





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 








「――というわけで、帰るときに間違ってやってきてしまったのがこの世界だ! アイツが結局何者だったのか、俺には見当もつかないッ! ちなみにこれが、そのとき卵を乗せ損ねて結局食べられなかったチキンラーメンだ!」


「なるほどね。高田の話を聞く限りじゃ、転生を受け入れていたらきっと死ぬほど恐ろしい目にあっていたんだろうね。理想の異世界で物語が終わった瞬間に、真っ暗な現実が戻ってくるだなんて、それは一体どんなに恐ろしいことだろう……」


「いや、どうだろうな!? もしそうなっても、そういう連中は次の異世界に行くだけなんじゃ無いか!?」


そう言ってから今度こそ、狂人の目を見つめて叫ぶ高田浩二!


「――というわけで改めてお前に言ってやる! 神はどこへ行ったのか。俺がそれを教えてやる! 俺が神を殺したのだ! この高田浩二が! ……神は死んだ。未来永劫死んだままだ! そして、神を殺したのはこの俺だ!」


高田の悦ばしき知識を聞いて、望みを絶たれた狂人が真に発狂する!!


「そんな……そんな事が……結局どう足掻いても……救いなど無いのか……ウッ……ウッフッフッフッフ――――――――ああ、面白いな~~! …………………………………………………………………………………………ワアッハッハッハッハッハッハ。イーッヒッヒッヒッヒッヒヒヒヒヒヒヒヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!! 終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わりだ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終わ終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終終!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


そこで狂人が取った最終手段――自殺!!

木の枝を拾って自らの首に突き立てようとする――――――――が、しかし!


「腕が……腕が止まってしまうウウウウウウウウウ! 何故だ何故だ! 死なせてくれエエエエエエエエエエ!!! あの世にいかせてくれエエエエエエエエエエエエエ!!」


「その異世界は俺が許さん! 最初から自殺しそうな雰囲気がしていたからな! お前の肩に衝撃を与えることで、自殺できないよう脳味噌に暗示をかけてやったのさ! その暗示は未来永劫解けない! お前の命は、他人の命と同じくらいの価値しかないが――せいぜい大切にしろ!」


「流石だね高田!」


「死なせてくれ……死なせてくれェ………………もうこんな先の見えない世界で生きていたくない!! 限界だ……助けてくれ……いやだ……生きていたくないイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


「駄~目だよ。お金と夢と希望と未来と活力が無くても、君には若さがあるんだから。この街、この国の大切な生け贄なんだから、死ぬのは許されないんだ」


「そして、そんな圧倒的な絶望から目を逸らすためにいるのが――――俺達なろうファイターだろう! なあ二藤!」


「そうだよ。安価で現実逃避できる娯楽なら僕らに任せてよ! ……って、既に聞こえてないみたいだ。僕らはもう帰ろう。高田」


「そうだな――俺達は元いた場所に帰ろう!」


「ワアアアアッ――――――――! ――――――――――――! ――――――――――――! ――――――――――――――――――――――――――――――――」



かくして! 死ぬこともできぬ狂人は完全に自分を見失い、声すら失った!

そして、そのまま伊勢海の道の片隅で、苔のように生き続けるのであった!












めでたしめでたし!

毎度毎度ド派手にやっているのに反応が返ってこない現状に対し、「街で暴れても一向にヒーローがやってこない悪役」のような虚しい気持ちになった高田がついにキレ散らかす!


次回「もうどうにもならないので異世界転移! なろうファイターになろうッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


第二十一部最終回「感想!」


なろうファイト! レディーGO!

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