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第十八部最終回 激突!

初心者向けの突き抜けたギャグ回です。

「これだッ! うーん……これはもう見たな……」


ツタヤの返却BOXに外から手を突っ込んで、次に見る映画を吟味している男の名は高田浩二!

この物語の主人公である!


(この世界には娯楽が余りにも少なすぎる! ツタヤに置いてある映画もなろう作品をアニメ化したものばかり……参考にはなるが、いい加減飽きてきたぞ!)


高田が今まで見てきた作品は以下の通り!


『ヴォッチメン(俺だけ最強で無双できるけど特に何もしないで火星に引きこもる)』


『最強のひとり(俺)』


『無SAW VII(無SAWザファイナル3D 猟奇殺人犯の自称跡継ぎの俺がタフすぎた件)』


『コマンドー(コマンドー)』


(二藤のオススメの映画も全て見終わってフリスビーとして通行人にぶつけて割ってしまったし……一体俺はこの世界で何を娯楽にすればいいんだ!?)


「高田さん! こんなところで何をやっているんです?」


突然、ツタヤのカウンターからヤスが話し掛けてきた!


「ヤスか……今日の朝の執筆ノルマの一万五千字が終わったんでな、たまにはパーッと遊ぼうと思ったんだがロクな娯楽がなくて困っていたんだ!」


「娯楽ですか……それなら丁度良い物がここにありますよ!」


そう言ってヤスは懐からスマホを取り出す!


「これは……ヤスの手じゃないか! 爪がてかてかしていて妙に綺麗だがレシートで磨いたのか!? ついでにスマホが握られている!」


高田の洞察力に適当に感心するヤス!


「そこに気づくとは、流石の観察眼ですね高田さん! そう、このスマホのアプリケーションこそなろう界の革新! 『なろモン・(ごう)』です!」


「なろモン業……なるほど、直ぐに廃れそうな名前しているが面白そうだな! どんなアプリなんだ!?」


「簡単に説明すると電脳世界に漂うなろう小説の主人公達の情報を収集して、具現化させて戦わせることができる最新鋭のARアプリケーションなんです!」


(なろう作品の主人公を捕獲だと!? モンスター扱いじゃ無いか! 人権が全くないような気がするが……しかし最近の主人公はスライムだったり蜘蛛だったりスケルトンだったりするからそれはそれで良いのか……?)


「しかしヤス、俺はスマホを持っていないぞ!」


「このなろモン業はパソコンでも動くんですよ! とりあえず、高田さんのノートパソコンに入れてみましょう!」


「ああ、そうだな!」


ヤスから受け取ったスマホを、パソコンに真横から突っこむ高田!

スマホの液晶が割れて、パソコンの破片が飛び散り高田の体に突き刺さる!


「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


「なんということでしょう! 高田さんの血でスマホが汚れてしまいました!」


「グッ……すまないヤス……俺はひょっとすると機械オンチなのかもしれない!」


「気にしないでください! そのスマホはさっきサラリーマンを恐喝して手に入れた物なんです!」


(そうか……その手があったか!)






その時! 偶然近くを幸せそ~~~~に歩いていたのは――やっぱり悪嬢令子だった!


「jfskおdjfjはlsdfぎ」


「ええ、本当に良かったわアザトース。身分証明もできないのに雇ってもらえるところがあって……。営業用にスマートフォンまで貸してもらえたし、今月末からきちんとしたご飯を皆に食べさせてあげられるわ……」


今までの悲惨すぎた境遇から、安心したのか笑顔のまま涙を拭う令子!









「――そこまでだ!」


そこに、颯爽と現れる高田浩二! 何がどうそこまでなんだ!?


「た……高田……浩二。 ……ンッ! ……ウウッ……!」


高田の顔を見た途端にパブロフの犬の如く脊髄反射的に嘔吐しそうになる令子! 恐怖で失禁しそうになる――というか少し漏らしたかもしれない!


「俺の名は高田浩二! なろうファイターの権限でお前の持っているスマホを300000分だけ借りるぞ!」


段ボールでできた身分証明書を提示し、令子の手からスマホをいきなりぶんどる高田!


「ちょ……ちょっと!! 何を訳の分からないことを言っているの! 離して頂戴!」


令子の正論と抵抗を強引に突破し、スマホを手に入れた高田はその場から走り去る!


「お願い――誰かあの男を捕まえて! ひったくりよ!」


しかし、伊勢海町の住民は主人公である高田の行為を都合良くスルー!

なろうファイターは一般市民に対して、何をやっても許されるのである!


「嘘よ……こんなの……………………嘘よ…………」


ショックのあまり、自律神経が不安定になりその場に座り込む令子! 




会社の備品紛失により、新しく決まった仕事は後にクビとなった!

だが、心配は要らない!

今の世の中あくせく真面目に働いたところで、生活は一向に楽にならず、上司や客に虐められてメンタルがイカれて結局転生するのが最近のトレンドなのだから!







かくして、ヤスにアプリを入れてもらい、高田のなろモン業が始まる!


それから三秒後――


「よし! 早速なろうの主人公を一匹捕獲したぞヤス!」


「本当ですか!?」









「――アンタが高田浩二だねえ!?」


早い早い速い! 間髪入れずに突然現れたトラックに突然、高田が跳ね飛ばされる!

普通にダメージを受けてしまい、なぜか転生も転移もしない高田!


「GUWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


「そんな! あの高田さんが車に轢かれてダメージを受けるなんて!」


「ふふん! アタイの名は爆走蛇亜他所美ばくそうじゃあ・よそみ! なろうファイターの一人さ! 高田浩二、アンタにスポーツマンシップに則ったなろうファイトの模擬戦を挑みに来たのよさ!」


跳ね飛ばされた高田の体の上をトラックで何度も行ったり来たりしながらガテン系メインヒロイン――爆走蛇亜他所美ばくそうじゃあ・よそみは丁寧に名乗りを上げる!


「なるほど模擬戦だな!? 承知した! お互い怪我の無いように戦おうッ!」


車の下から、突然の挑戦者を快く歓迎する高田浩二!

ボキボキとその肋骨が折れる音が鳴り響く!






「おい皆聞けよ! この音は何だ!?」


「太陽フレアか?」


「いつもの空襲か?」


「車に轢かれた人間の肋骨が、その重量に耐えられなくなり、折れてしまった時に発する音か!?」


「いや、なろうファイトだああああああああああああああ!!」


なろモン業のためにスマホを片手に女子トイレや幼稚園や神社に侵入していた読者達が、どこからともなく肉に沸くウジ虫のように湧き始めた!


『皆様、お待たせしました! 解説の竹崎祐輔たけざきゆうすけです! ルールは今回限定の“なろモン業”! お互いが召喚した主人公か本体のどちらかが戦闘不能になった時点で決着となります!』


「高田さん! 早く立ってください! なろうファイト模擬戦用のシステムメッセージを流します!」



『Let's try NaromonGO. 3、2、1! レディー……ゴー!』





「ワアアアアアアアアアアアアアアア!!」


読者の歓声と共に模擬戦開始!

しかし、ヨソミはトラックに乗ったまま何故か動かない!


(何故だ……何故何も仕掛けてこない! まずは主人公を召喚するのがこのファイトのセオリーではないのか!?)


「まずは軽いジャブから行くわよ! アクセル全開なのよさッ!!」


普通にトラックで加速し突進してくるヨソミ!!


「うわあ、いたいいたい」


普通に轢かれて30メートルほど引きずられる高田浩二!!


「油断したねえ? アタイの捕まえた主人公は既に召喚済みなのよさッ! 『トラックに異世界が転生した結果』の主人公! 中型トラック『ISUZU エルフ』ッ!!」


(そんな馬鹿なッ! 物語の主人公がエルフだと!? 人間では無いのか!? そんな物はレギュレーション違反じゃないのかッ!!)


高田が珍しく勘違い!

この『ISUZU エルフ』は他作品でも脇役として大活躍!


単純な大型トラックの場合では車高が高くなりすぎる関係上、アニメ化した際に主人公に迫るシーンで画面に全体が映らないという欠点が露呈してしまうが、このISUZUは中型――要するに最適なサイズ!

今回ヨソミが搭乗している物は中型カーゴタイプで、あえて商標を消した物を使用!

こうすることで版権対策をしつつ世間一般の暴走トラックのイメージをしっかり遵守!

『ああ、なんかトラックが来た』的な雑な文章にも対応することができる無駄のないカスタムなのである!


余談だが、小型も決して悪くない!

2017年3月12日以降では、改正道路交通法が導入された関係で普通免許の運転可能車種に『車両総重量が5t未満』の車種が追加されたのである!

エルフなら平ボディタイプ、ドライバンタイプ、冷蔵冷凍バンタイプタイプ、標準ダンプタイプ、強化ダンプタイプが普通免許で運転可能!

つまり、リーズナブルなお値段でいつでもどこでもお手軽転生ができるようになったのである!!


尚、今回ヨソミがチョイスした車体カラーは最もポピュラーな白色!

没個性感を高めつつも、日常生活を優しく包む夜の闇を一瞬で貫くハイビームヘッドライトとの相乗効果による視覚的インパクトは絶大!


登場させるだけで『主人公はもう二度と現実には戻らない』という作者の強い意思表示を感じさせることができる、まさに究極の一台なのである!


かくして、再びトラックのアクセルを踏むヨソミ!

今度こそ高田を正々堂々轢き殺そうと、突進してくる!


「高田さん!」


「あまいぜ爆走蛇亜他所美……俺のなろモンは――お前の更にその上を行くッ!!」



迫るヨソミのトラックに対抗して、高田の前に主人公が召喚された!





「俺が捕獲したのは『トラックに轢かれて転生したのは俺じゃなかった件』の主人公……『電柱』だッ!」


道路のど真ん中に電柱が急設される!



電柱――電信柱(デンシン・バ・シラ)の異名を持つ主人公!

あまり能動的では無いため最近の時流の巻き込まれ型主人公、しかしその潜在能力は計り知れない!

実際は電柱が巻き込まれるのでは無く、歩行者が車と電柱の間に巻き込まれるのがお約束なので、ジャンルとしてはややアンチテンプレタイプの異世界系主人公であるといえる!

その威圧感は抜群で『見た目で誤解されるタイプの主人公』だったりする!


「よし電柱! 俺達の初バトルだ!」


「………………」


「おい! どうしたんだ! うんともすんとも言わないじゃないか!」


「………………」


何故か一言も喋らないで棒立ちする電柱に困惑する高田浩二!


(クッ……この電柱は……今時流行の無口系主人公ってやつかッ!! 落ち着け……こいつの人となりを分析しろ! 背伸びしすぎているくせに地に足がついてるところから考えると、見た目に反して割と撃たれ弱いメンタルの主人公だと考えられる! 俺とは一部相性が悪そうだが……しかし――やるしかないッ!)


「フフン! 自分の捕獲したなろモンとコミュニケーションも取れないのかい! そんなんじゃ甘いね! 行くわよトラック!」


「ああ、任せてくださいよ姐さん! ドヒャアアアアアアアア!」


ヨソミのかけ声に力強く答えて、エンジンを鳴らしてさらに加速するトラック!


『ヨソミ選手のトラックとの一心同体のコンビネーション! アクセルを踏んで高田選手に近づいていくぞ!!』


「高田さん!!!!」


思わず叫ぶヤス! 高田浩二、絶体絶命!


(クソ! こうなったらCV(キャラクターボイス):高田浩二しかないッ!)





「行け電柱! 体当たりだッ!! デーン……チュウッッッッッッッ!!」


自分で奇声を上げてから、電柱の影に咄嗟に隠れる高田!

高田に狙いを定めていたトラックは電柱に阻まれ斜めから擦ってしまう!


「痛えええええええああああああああああああ!」


電柱に擦って、痛みに耐えきれずに叫ぶトラック!


『逆転の発想! 高田浩二選手! 相手を動かすことで見事に体当たりを成功させたーーーッ!』


「「SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」」


「これはまずいのよさ! 電柱とトラックの相性がここまで悪いとはねえ! 別のなろモンを高田浩二にぶつけなければ――しまった!!」


ヨソミ、痛恨のスマホ運転!

狙ってもいないのに今度は真正面から電柱に激突するヨソミとトラック!!

白熱する読者達!


「流石あの高田だぜ! 相手を焦らせてさらに大きなリターンに繋げるとはな! 恐るべき心理戦だ!」


「いや、よく見ろよ! ヨソミは電柱にぶつかっているのに、アクセルをベタ踏みしていやがるぜ!!」


そのまま止まらないヨソミの全力アクセル!

トラックの圧倒的質量と圧力がなんと電柱をへし折り、高田を押しつぶした!!


『なんということでしょう! ヨソミ選手! 逆に全力で前進することで電柱をへし折って高田選手を潰したーーーーーッッ!!』


「これがあたいらのコンビネーションさ!」


ぐちゃぐちゃにへこんだ運転席からヨソミが叫ぶ!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


そして、倒れた電柱を踏み倒しつつ痛みのあまり悲鳴をあげることしかできないトラック!





「――――――――――――――あまいぜッ!」


「高田浩二の声!? そんな、馬鹿な――あたいらのコンビネーションを受けて無事でいられるはずが……」


ヨソミの振り返った先には――何事も無かったように立っている高田浩二の姿!

怪我があったとすれば、せいぜい全身の骨が折れていた程度である!


「実は、俺はトラックが電柱に衝突する瞬間――特に何もしないことでペシャンコに潰されて難を逃れていたのさッ! 感謝するぜ! お前らの衝突が電柱を折ってくれたおかげで、俺達の必殺技が使えるようになるんだからな!」


「高田さん! 電柱を自由に動かせる今がチャンスです!」


「よしッ! 喰らえ電柱の超必殺技を! 『大 停 電』!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」








「デーン……チュウッッッァァァァッッッッッッッッ!!」


再び気勢を上げつつ奇声を発しながら、地面から解放されて浮き足立っている電柱を、血塗(ちまみ)れになりながら恐るべきパワーで振り回す高田!

周囲の電線が巻き込まれてぶっちぎれて一斉停電――からの全力、電柱投げ!

槍のように放たれた電柱がトラックの後ろから突き刺さり運転席を貫通!

ヨソミの頭部がちぎれ飛んでフロントガラスを突き抜け、前方の壁にぶち当たり粉ッ々に弾け飛ぶ!


「なんということでしょう! 脳漿で壁が汚れてしまいました!」






『決着ゥゥゥゥゥゥ!! 勝ったのは高田浩二選手!』


「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


「「高田!」」


「「高田!」」


「「高田!」」



歓声に包まれる高田浩二!


「激戦でしたね高田さん!」


「ああ! 激しいぶつかり合いだった! しかし得た物も大きいぞ! 今の模擬戦で次回作のアイデアが湧いたんだ! 丁度良かった……こんな所に良い筆があるじゃないかッ!」


交差点のど真ん中に電柱を使って、脳漿をインク代わりに魔方陣のように作品を書き始める高田!

弘法筆を選ばずとはまさにこの事であった!







激しいぶつかり合いを書いていたつもりが、激しくぶつかるだけのお話になりました。

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