第十七部最終回 発掘!・後編
割と速い速度で素早く高速に舞い降りながら落下するように転落していく高田浩二達!
「穴の中は断崖絶壁のイメージがあったが、足場が入り組んでいてどちらかというとダンジョンのようだな!」
「それにしてもあんたら凄いべ! 降下用の専用道具とか一切無しに大書庫をスイスイ降りていけるなんて超人だべ!」
「まあ、僕らなろうファイターは常人とはかけ離れた強さを持っているしね」
「このくらい、お茶の子さいさいですよね!」
「あとそうだ。オッサン! その娘――昌子が昔書いた『物語』っていうのはどんな内容なんだ?」
「詳しいことはわからないんだべ……でも、その物語を書いたせいで学校でいじめられていたみたいだべ……」
「異世界テンプレ主人公の素質有りだね」
「おい二藤! 流石におい二藤!」
「二藤さん! その辺にしておきなさい!」
「昌子はぁ……自分の顔が可愛くないことを本当に気にしてたんだベ……。自分自身を作品の主人公のモデルにしたら『感想欄で読者に叩かれた』って家でぇ……泣いていたことがあったんだべ……」
「それは叩かれる前から醜かったってこと? 叩かれてそういう顔になったとかじゃなくて?」
「おい二藤! 流石におい二藤!」
「二藤さん! その辺にしておきなさい!」
あーだこーだ言いながら高田達は、あっという間に第一層を降りきった!
「この先から二層だね。二層からは『基本全く日の当たらない物語』が紙媒体で収納されているんだ。物語に思念が込められているのか何なのかさっぱりだけど、勝手に本が動いてさらに奥深くに潜っていったり地面に埋まっていったりするわけさ」
「物語が勝手に潜っていくのは不気味だな! 異世界の技術か!?」
「さっぱりだよ。どういう原理で物語がそうなっているのかは僕にも理解できない。この穴を掘った連中は人間離れしているよ。それと、ここからたまに死ぬスコッパーが出てくるらしいよ」
「何だと!?もしかして『上昇反動』とかあるのか!」
「そんなものが現実にあるわけ無いでしょ高田。漫画やアニメの見過ぎだよ」
「オラ達スコッパーがここで命を落とす理由は――あれだべ!」
中年が指さした先には高田達に高速で近づいてくる影!
それは、間違いなく異世界テンプレでは登場できないような不気味なデザインの化け物であった!
迫り来る化け物の大群をボールペンで処理する二藤!
背中から取り出した巨大なスコップでなぎ倒す中年!
二藤の隠し持っていたプリンをスリ取って一瞬で食べる高田浩二!
「すごいべ! あっという間に化け物達を掃討できたべ! あのモンスター達にスコップ意外で応戦できる人達を始めてみただ! 流石なろうファイターだべ!!」
「いや、俺達の戦闘についてこれるオッサンも凄いぞ! その巨大なスコップで戦闘をしつつ物語を掘り出すというわけだな!」
「そうだべ! 文字通りスコッパーにとっての命だべ! 頑丈じゃないと、とんでもないことになっちまうんだあ!」
「高田。『スコップ』の堅さは持ち主の“精神力”に比例しているんだ。『掘り返す物語』が色んな意味で酷すぎると掘り返す途中でスコップが折れてしまうのさ。ほら、あれを見てみなよ」
二藤が指した先には、スコップがバキバキに折れて化け物に肉体を食い荒らされたスコッパーの死体があった!
「なるほどな! スコップが折れた自衛手段の無くなった人間から命を落としていくということか……! 恐ろしい場所だ……」
「どうやら人によってスコップの本数や、強度が違うみたいですね!」
そこから定期的に化け物達を殺害しつつどんどん奥に進んでいく高田達!
あっという間に二層の最深部に到着!
「そういえばオッサンの娘の昌子が行方不明になったのは、この辺りだったな!」
「そうだね。じゃあ、とりあえず僕らはここら辺を掘り返してみようよ」
そう言ってボールペンで二層最深部の地下を掘り始める二藤!
しかし、直ぐに掘り始めたことを後悔することとなる!
「あ、この物語を見てください高田さん! 『フェレット虐待日記』です! 他にもハムスターとか赤ん坊とか一杯シリーズがあるみたいです!」
「普通に闇が深いぞッ!! そんなのわざわざなろうで書くなッ!!」
「こ……この作者は惨いな……『亀の頭を擦りつける日々』……器官形成期の終わった胎児を妊婦の腹から取り出して弾力のテストをしてるノンフィクション作品だ……。こっちの本は『イエスの真実』……。自身の宗教観を何十万字、延々と書き連ねている……頭がおかしいよ……」
「うへぇええ……いきなりスコップが折れちまいそうだぁ……」
「ええい! 俺はもっと深くを掘ってみるぞ!」
二藤に倣って、高田は最深部の更に下――三層の入り口の地面を素手で掘り返し始める!
「何々!? 『ルルイエ異本・写本完全版』……内容がなろう作品っぽくないな! こっちは……『ネクロノミコン・写本完全版』……なんかCDRとかステータス上がりそうな本だが、一気読みしても内容が難しくてよくわからん! 薄ッ気味悪いぞッ!」
そう言って掘り出した二つの本を真上――二藤のいる二層側に放り投げる高田浩二!
「高田が下から捨てたその本。表紙の言葉が見たことも無い言語だけど……高田はこれが良く読めるね~」
(言われてみれば、確かにそうだ! 何故か俺にはスラスラ読めたな……)
それから暫く高田ーズの発掘作業が続く!
掘り出す物語は曰く付きのロクでもない物ばかりである!
「おい二藤! 三層側で『大書庫採掘日誌』を見つけたぞ! 内容は相変わらずいまいち理解できんが文字が先程の二冊と同じ物だ! どうやらこの穴を作ったヤツらも頭がどうにかしていたようだな!」
「駄目だ高田。たくさん掘ったけど。二層側には『昌子さんの物語』は無いみたいだよ! 自分も高田と同じ三層側で掘ってみるよ!」
「ああ! そうしろ! 俺はもう少し奥に潜ってみる!!」
三層を深く潜っていく高田!
その途中、寝そべっている奇妙な格好をした男を見つける!!
「おい! そこに横たわっているアンタ! まだ生きているのか!?」
話し掛けられた奇妙な格好の男は、息も絶え絶え!
「わ……我が名はアルクゥート・ショカン…………。紳士の嗜みとしてスコッパーを“やっていた”…………。皆には……ショカン郷と……………慕われていた者だ…………」
「おい大丈夫か? アンタ化け物に襲われたのかッ!?」
「私にはもう時間が無い……これを……見ればわかる…………」
そう言って自分の上着を脱ぎ捨てるショカン郷!
「ゲエエエッ!」
珍しくびびる高田!
なんと! ショカン郷の皮膚が溶解しており、左右の肺が2冊のラノベに変化していた!
その呼吸と同時にラノベのページがぱらぱらとめくれる、異様な光景がそこに広がっていたのである!
「き……君達……三層の本を掘り返して“読む”のは危険だ。作品の内包している“毒素”が余りにも酷すぎる! 私の体はそのうちの一冊に毒されて……どんどん本になってきてしまっている。このレベルまで体が変化したらもう手遅れだ……。ここにあるのはどれもこれも“異常を逸した呪われた物語”ばかりなんだ……。私と一緒に潜った者達は皆、異形の姿になってしまった……」
(ということはつまり……あの二層の化け物共は三層で作品を掘り返そうと潜って変化したスコッパーだったのか!)
「高田!! 聞こえるかい? 僕も三層の作品を一個見つけたよ。これは――――――――――」
「二藤! 待てッ! 俺の声がここから聞こえるか! その本を開くんじゃあ無いッ!」
慌てて鍛え抜かれた跳躍力で二藤の場所まで上昇する高田!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
しかし時既に遅し!
二藤が三層の本を開いた瞬間、体中の穴という穴から、その心臓の鼓動に合わせてポンプのように規則正しく大量の血が流れ始めたのである!
「二藤オオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」
「二藤さん! しっかりしてください!」
「ヒィイイイイ高田さん! 二藤さんの出血が止まらねえだああ!」
「おのれッ! 一体どれだけおぞましい物語を書いたんだ! この物語の作者を殺してやるッ!」
怒りに燃える高田が、二藤の落とした本を拾い上げる!
『いせかいてんせいしてむそうする:たかだこうじ』
「って俺の作品じゃねえかッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!」
怒りに燃える高田が、二藤の顔面に本を押しつける!
「おいコラ! テメェ二藤! 最後の最期まできちんと読みやがれ!」
「や、やめてくだせえ高田さん! このままだと二藤さんが本当に死んじまうだあ!」
「なんということでしょう! 高田さんの作品で二藤さんが汚染されてしまいました!」
「やかましいわッ!! おいショカン郷――――――――ゲッ!!!!」
高田が飛び降りるように下に降りたが……“既に”ショカン郷はいない!
そこにあったのは“横たわっている人間の形に敷き詰められた”大量の本だけ!
ショカン郷のなれの果ての姿を見て鳥肌が立つ高田浩二!
(なんということだ! 全身が完全に本になってしまった! どうやら本の内容は本人が生まれてからここで死ぬまでの人生記録のようだが……丁寧にルビまで振ってくれているとはショカン卿の人間性が伺えるな―――――――――これは!!)
『13月42日。昌子と名乗る少女に出会う。物語を抱えて四層に行くという。これ以上先に進むのは危険であると警告するも、聞く耳をもたず。自分の体は既に動かず。このまま他の者達と同じように、異形と成り朽ち果てるのを待つばかりである』
「おい、オッサン! アンタの娘の行き先が解ったぞ! 昌子はここで一人のスコッパーに出会っていたんだッ! どうやら物語を自力で見つけて四層に向かったようだ!」
「よ……四層だべか! そんなぁ…………オラにはこれ以上潜れねえだぁ……」
「心配するな! ここから先は俺一人で行く! とにかく、二藤を頼んだぜ!」
「高田さん……。高田さん! …………気をつけてください! 死んだら私、許しませんからねー!」
「娘を頼んだベぇ!! 高田さん!」
「ああ、任せろ! 俺は最強だからな!!」
かくして、高田浩二は第四層に単身突入する!
――――――――――――――――――――――――――――――――
不意に、周囲の空気が変化した。
そこで高田は、自分が第四層に突入したことを直感した。
(とてつもない圧力を感じる……! 常人なら入っただけで即死していてもおかしくない! スコップはおろか読み手の心すら折るレベルの“物語の瘴気”が大気中に漂っているのか!)
高田がさらに歩を進めると今まで狭まっていた縦穴が急に広がり、大きな広間に出た。
床には水が張っており、何故か――本当に何故か、高田には理解できなかったが広間には薄らと“外の灯が差し込んで”おり空間全体がはぼんやりと青く鈍く光っていた。
(なんだあれは……オレは……幻覚を見ているのか!?)
広間の中央に座していたのは、『ウェディングドレスを着た花嫁』とそれを囲う異形の化け物達。
(あの中央に居るのが、オッサンの娘の昌子か?)
高田の位置からその花嫁の表情を伺うことはできない。
怪物達はまるで拝み、縋るように花嫁の周りに座り込んでいる。
「アンタが昌子か? 待っていろ! 今、助けるからな!」
高田が近づくと化け物達は祈りを止めた。
そのまま高田に対して敵意を顕わにしたが、慌てた様子で花嫁の方に向き直った。
ドレスを着た花嫁の姿が、突然変化した為である。
その体が大きく膨張を始め周囲の化け物達を取り込んでいき、花嫁の皮膚が伸びきったストッキングのように穴だらけになる。
その皮膚の穴の一つ一つに醜くただれた人間の顔が在る。それぞれの顔には目と歯がついておらず体の膨張に合わせて、顔の中の目、鼻、口の穴の中に新しい顔が、まるでマトリョーシカのように無限にできあがっていく。
(コイツは……この化け物はッ!!)
変化した昌子の――否、“昌子達”の全てが高田を方に顔を向けてくる。
直後に、この世の物とは思えぬ不気味な叫びが洞穴の中に鳴り響いた。
化け物は凄まじい勢いで地面を這いずり、高田に近づいてくる。
「クソッ! “手遅れ”だったか!!」
その場から飛び退いた高田の脳内に、大きな音が流れ込んでくる。
(なんだ……これは……急に目眩が――。これは……昌子の記憶か―――)
――――――――――――――――――――――――――――――――
『ついにやっただぁ! 自分の作品が……ずーっと書いてた作品が、ようやく完成したベぇ!』
『なんでだべ……。どうして皆、ヒロインを殺せだなんて言うんだべ……あんまりだべぇ…………。もう嫌だベ……。こんなお話、捨てちまうベ…………』
『おい見ろよあのブスを! 知ってるか? アイツ、自分をヒロインにした小説書いてたんだぜ! クラスメイトとして許せねえよな!』
『まじかよ……ドン引きだろ!』
『なあ見ろよこのシーン! ヒロインのオークがオークと戦ってるぜ!!』
『冗談は顔だけにしておけよマジで! お前の顔面が異世界だっつーの! ギャハハハハハハハハ!!』
『男からすればさ。女でブスとかマジで存在意義ねーよな!』
『よくわかったべ……醜い女の子は……この世に生きてちゃいけないんだべ…………。自分で書いた物語を捨てちまったオラが馬鹿だったべ……。せめて最後は……オラの物語と一緒に…………おっとう、ごめんなぁ……』
――――――――――――――――――――――――――――――――
「――なるほどな。よくわかった。最初から物語を見つけたら共に、命を絶つつもりだったんだな…………」
高田浩二の瞳が広間の光を反射し、異形と化した昌子を凜と見据える。
「――無念だったろう。確かに今のお前は醜い……。お前の持つコンプレックスが、お前をこんな姿にしたのかも知れない。だが、お前の親父さんと俺達は、アンタを助けるためにここまで命を張ったんだ。オレが認めよう――アンタにはそれだけの価値があったと。そしてアンタのその苦痛は、オレが――きっちりと―――此処で――――――――――――――終わらせてやる!!」
高田が振るった何の変哲も無い拳が、大書庫全体を揺らす程の圧倒的な衝撃をもたらした。
その破壊力は、異形の化け物と成りはてた昌子を一瞬で葬り去る。
昌子の真っ青な血が飛び散り高田の青い外套をさらに青く染める。
一瞬で吹き飛ばされ、ただの“青い染み”となった昌子の死骸の上には一冊の本が残されていた。
「この本……毒素は既に抜けているのか……」
――――――――――――――――――――――――――――――――
「高田さん! 高田さん! よかった……無事でしたか! 昌子ちゃんはどうなったんですか!?」
「高田さん。オラの娘は見つからなかったんだべ!?」
「…………………………………………手遅れだった」
男は高田の差し出した本を受け取ると、そのまま本を抱いてその場に座り込み泣き崩れた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
それから暫くして、ようやく高田達は外に出ることに成功したのであった!
久方ぶりの伊勢海町の赤い空である!
血塗れの状態で一命を取り留めた二藤新人のスマホを使って、電話をかける高田浩二!
「もしもし! 絵挿年老か? 例の可愛いヒロインの挿絵…………必要がなくなった!」
『なんじゃと! 折角完成したのに! ワシの力作を使わんと言うのか!? ふざけるんじゃないわい!』
「ああ! やっぱりメインヒロインの見た目は、読者の想像に任せてみようと思うッ! そんくらいなら別にいいんじゃないかとオレは思ってな!」
『よくないわい! 見ただけで読者のハートをひねり潰すくらいのドセクシーな一枚ができたんじゃぞ! これを挿絵に使えば――』
通話の切り方がわからないので、大書庫の大穴に二藤のスマホを放り投げる高田!
「今回はぁ……。本当にぃ……お世話になりましただ……。二藤さんは気を失ってっけどぉ。よろしくいっておいてつかあさい……。これが報酬ですだ……」
「いや…………報酬は必要ない! 今回の事件は色々と執筆の参考になったからな! オッサン――その物語を大切にな!」
高田に頭を下げて、昌子が書いた“物語”を大切そうに抱えてとぼとぼと歩き去って行く中年!
「じゃあ、二藤さんを連れて帰りましょうか。高田さん!」
「――ああそうだな! 俺は腹が減った! ラノベが食いたいぞ!」
高田浩二はその場から去ろうとして、視線を感じて振り返る!
そこには誰もいない!
なろうの深淵がいつものように、ただぽっかりと広がっていただけであった!
ちなみに二層で登場した危険な作品のいくつかはどこかのサイトに実在しています。
よかったら探してみてください。
自分もずっと探している作品があります。
どこかの架空の国の政治制度について書かれた作品で、奇妙な図形が大量に書かれていました。
まるで読まれることを想定しておらず本当にその国が存在しているかのように書かれており、凄まじいインパクトだったのにブックマークをするのを忘れてしまい、未だに見つけることができていません。
あの作品はなんだったのだろう。
心当たりのある方の、情報提供をお待ちしております。
最後に、誰がなんと言おうと、この回のメインヒロインは昌子です。




