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第十部最終回 遭難!

「私…………何をやっていたのかしら? ここはどこ? アザトース? フランソワ?」


落下の衝撃で奇跡的に正気を取り戻した2Pカラーツイン縦ロールの少女の名は悪嬢令子!


彼女は墜落した航空機から脱出して周囲を見回す!

その視界に広がるのは圧倒的、凸鶏(とつとり)砂丘!


令子はそれから暫くして、飛行機の残骸の下で圧迫プレイを楽しんでいる西洋人のフランソワ・ピエールと、ベコベコに凹んだアザトース、そして副機長のゴローの三人を見つけたのであった!


「私達が置かれている状況がよく分からないのだけれど……とにかく別の飛行機とぶつかって墜落――遭難したということでいいのよね。副機長さん?」


「遭難だぜ! ちなみに俺の名はゴローっていうんだ。よろしくな!」


「は……初めまして。ゴローさん」


(この人もちょっとどこかおかしいわ……)


「ま……まあ、私達がどういう経緯で飛行機に乗っていたのかはさっぱりだけれど、アザトースもフランソワも無事でよかったわ」


「ンボバババボオオオオオオオオオオオ!」


「fじぇえjfj:いあsdjflkじゃsfjさjlfjdjlf」


「そういえば嬢ちゃん! 俺が副機長ってことは……この飛行機にはもう一人機長がいるはずだぜ?」


(何よその意味不明な推理……)





「う――うぅ……」





「この声は――もしかしてその“機長さん”じゃないかしら!?」


「声がするってことは、死んでいない可能性が高いぜ!」


もう返事をするのが面倒臭くなったのか、ゴローを無視して声の主を探す令子!


「見つけたわ……でも体の半分が血だらけじゃない……! 急いで手当てをしないと!」


「俺に任せな!」


そう言って機長の傷口に凸鶏砂丘の砂をまぶし始めるゴロー!

咄嗟に令子がそれを制止する!


「やめて!! なんて事をするの! 傷にばい菌が入ってしまうわ!」


「昔、砂場で怪我した友達にこうやって治療してやったことがあるんだが……」


「発想が幼稚園児じゃない!!」


喚く令子の声を聞いて、奇跡的に機長が意識を取り戻す!


「ぐ……あ……アナタは……私は一体……」


「いや! アンタは二体だな! 体が半分、ちぎれかかってるからな!」


「ちょっと! 重傷者に現状を知らせてどうするの! ごめんなさい機長さん! 可能な限り手当をするから、気をしっかり持ってください!」


「いいんです。私はもう駄目だ……乗客のあなたにこんなことを頼むのは何だが……私には娘と孫がいるんだ……どうかこの写真を私の家族に……愛していたと――伝えて欲しい――――ウグッ」


「機長さん……そんな……そんなの嫌よ……嫌……」


血塗れの写真を受け取り、絶命した機長の前で涙を流す令子!


「ンボオオオオオオオ……」


不安そうに喘ぎ悶えるフランソワ!


「うぃえjfjヵせjfヵjsd」


いつも通りのアザトース!


「くっ……貴重な機長が……」


ここぞとばかりにふざけるゴロー!


(駄目よ……駄目。こんな時こそ落ち着くのよ私。過去の異世界転生で鍛えた判断力を今こそ――発揮するときだわ!)


「――みんな、聞いて頂戴。少なくともここで救助が来るまで、ここから動いては駄目よ」


「ヴヴォオオオオオオオ?」


「おいおい嬢ちゃん。俺もコイツの言うことに同感だよ! このまま動かないでいたら死ぬのを待つだけだぜ? 近くの町まで移動した方がいいんじゃないのか!?」


「……どんな飛行機にも航空機録というものが必ずあるわ。予定のルートから外れたり、墜落した場合は直ぐに救助に来てくれるはずよ。落ち着いて助けが来るのを待ちましょう!」


この判断は大正解!

砂漠に遭難というシチュエーションでは、何となく自分達から救助を求めに行ってしまいそうな物だが、実際は動かない方が吉なのである!


「なるほど――アンタ結構、修羅場を潜っているようだな……俺には目で解る。嬢ちゃんの言うことにオレは従うぜ!」


「ありがとうゴローさん。問題は――物資ね。もちろんサバイバルは短期戦……何日も居るつもりは無いけれど、気温はおそらく50℃近くあるからこのままじゃ体力がつきてしまうわ……」


「ンボボボボボボオボボオオオオオオオオオオオオ!?」


「ああ、コイツの言うとおりだ。心配はいらねえよ。飛行機には確か、自前で用意するのが面倒臭いっていう理由で伊勢海町で流行っている緊急キットが搭載されていたはずだぜ! とりあえずどの機にも常備してあるはずだ――ホラ。あったぞ!」


ゴローが取り出してきたバックパックの中には以下の物が入っていた!!


①懐中電灯(乾電池が4つ入ってる)

②ガラス瓶に入っている食塩(1000錠)

③この地域の航空写真の地図

④1人につき1リットルの水

⑤大きいビニールの雨具

⑥「食用に適する砂漠の動物」という本

⑦磁石の羅針盤

⑧1人1着の軽装コート

⑨弾薬の装填されている45口径のピストル

⑩化粧用の鏡

⑪赤と白のパラシュート

⑫約2リットルのウォッカ


(この砂漠の中で全員が生存するために、よく考えて使っていかなければならないわ……。逆に、使ってはいけない品もあるみたいね……)


この試される大地――鳥取砂丘で一体何が大切なアイテムなのか、皆で考えてみよう!


――――――――――――――――――――――――――――――――


一方こちらは高田ーズ!

パイロットの津井羅籤子は脱出叶わず焼死!

つまり彼女は今回のメインヒロインだったようである!

全く別の場所――そして、同じ緊急キットの前で彼等もまた判断を下す事になったのである!









「よし! たった今、焼死した機長に話を聞いてみたんだが、どうやらこの先を進めばソ連の町にたどり着くようだ!」


「流石だね高田!」


「磁石の羅針盤もありますし、航空写真を参考にソ連に向かいましょう!」


死者の声を聞くというイタコ的ファインプレー!

こうして、高田達はまさかの『移動』を選択してしまう!

これは、この状況下で絶対にやってはいけない行動!

令子達のように、黙って救助を待つ――『待機』が大正解である!



――――――――――――――――――――――――――――――――


そして再びこちらは令子達!


令子の指示で、開かれた白いパラシュートの下で全員が軽装のコートを身につけていた!

これはいずれも降り注ぐ太陽光線を防ぐための物である!


「なあ、本当に大丈夫なんだろうな?」


「ええ、この状況下なら大切なのはまず“発見”されることよ」


赤いパラシュートを地面に広げて化粧用の鏡を握り、冷静に水平線を見つめている令子!

赤いパラシュートはわかりやすい目印!

そして、鏡の反射を使えば太陽の光は遠距離まで届く!

この二つのアイテムはいずれも捜索隊に対する有用な信号となるのである!


「それにしても、腹が減ったな……『食用に適する砂漠の動物の本』か……なあ、嬢ちゃん。コイツを参考に、何か食い物を探してくるべきなんじゃないのか?」


「それは駄目よ。この砂漠の炎天下の中、動物を捕まえるために動き回っていたら本当に体力が無くなってしまうわ」


「仕方ねえ。塩でも舐めて飢えを凌ぐか……」


そう言って瓶を開けて塩を舐めようとするゴローを令子は再び、冷静に制止する!


「待って――塩だけをなめるのも絶対にやってはいけない事よ。塩は血液の濃度があがるから過度の摂取は厳禁なの。脱水症状を促進してしまうから摂取してもロクな事がないわ」


令子の判断はどちらも大正解!

体力を奪われる砂漠において食糧の問題はつきものであるが生半可な知識でどうにかなる物では無い!

熱中症の対策等で塩分の摂取を必要とすることはあるが、水の無いこの状況で塩分“だけ”を取ると喉の渇きが止まらなくなり危機的状況に陥ることは必至である!



――――――――――――――――――――――――――――――――



一方こちらは高田ーズ!


「行く道が判明したし、とりあえず焼死した機長でも食べるか!」


「料理なら私に任せてください!」


焼死した機長が再び大活躍!

焼死したという事で調理の手間が省けるというファインプレー!

それでも半生だったので、パラシュートと軽装コートと高田の予備のノートパソコンを鏡の太陽光線で着火させ、塩1000錠を使って豪快に料理を始めるテンプレのヤス!


「『食用に適する砂漠の動物』……ラノベほどではないけれど、なかなか美味いね」


「後で俺にも食わせてくれよ二藤!」


本来であれば動物を捕まえるために無駄な体力を消耗してしまうところを、まさかの本そのものを食べるというファインプレー!!

栄養摂取に無駄がない!!



――――――――――――――――――――――――――――――――



再び再びこちらは令子達!


「なあ、嬢ちゃん。アイツ喘ぎ苦しんでるぜ……」


「ンゴァ…………バギギギギギギギギ!!」


ゴローの指さした先には気勢を上げつつ奇声を上げるフランソワ!

この暑さを令子のプレイだと勘違いして無駄に悶えて体力を消耗する為、パラシュートの余った紐で悶えることができないくらいぐるぐる巻きにされていた!


「いいのよ。フランソワにとってはいつものことだから……」


「嬢ちゃんも苦労してるんだな……。それで、あのよくわかんねえ生き物は平気なのかよ? 水を片手に普通に日光浴してるけどよォ……」


「私もよくわからないのだけれど……多分心配はいらないわ」


「俺はもう自分の分の水を飲んじまったよ。喉が渇くぜ……。ん? よく見たら荷物の中にウォッカがあるじゃねえか! これを飲めば水分の問題も完璧に解決だぜ!」


「駄目よ! アルコールなんて摂取したら喉が渇いて脱水症状になって死んでしまうわ。ウォッカは恐らく一番使ってはいけない備品よ! 唾液でも飲み込んで我慢なさい!」


「しょうがねえな。嬢ちゃんの唾液で我慢するか……」


「しょうがなくないわよ……自分のを飲むべきよ……」


――――――――――――――――――――――――――――――――


そして、再び高田ーズ!


「どうやら水が無くなってしまったみたいです!」


「心配するな! 人間の60%が水分なんだ! 水が無くてもどうにかなるッ!」


「あそこにラクダに乗っている人がいるから、ここら辺に自動販売機が無いか、聞いてみようよ」


遭難している高田達はラクダに乗ったソ連人に聞き込みを開始する!


「じつは俺達、遭難してしまって水が無くて困っているんだッ! この辺で水を売ってくれる場所を知らないか?」


「水なら近場にソ連があるからそこで買えば良い。それよりお前の持っているその瓶はウォッカか?」


「ああ! そうだ!」


「俺はソ連人だが、ウォッカが大好きでな。それをくれれば“ソ連”連れて行ってやるよ。付いてきな!」


「やはり一番大事なのはウォッカだったか!」


かくして、間違った選択を繰り返した高田一行は無事にソ連に到着したのであった!






――――――――――――――――――――――――――――――――





「大丈夫よ皆。待っていれば必ず救助が来るわ!」


皆を不安にさせないように、気丈に振る舞う令子!


(あれ? うちの航空会社って、事故が起きても平常運転を心がけていたような……)


ゴローのその不安は大的中!

伊勢海航空会社、まさかの乗客見殺し!

ちなみに令子達が砂漠でカエル漁をやっていた地元住民に救助されるのは、ここからなんと45日後の話であるッ!!

頑張れ令子! 負けるな令子! いつかきっと報われる!








コンサンスゲームが元ネタです。

備品の優先順位を無視して、焼死したパイロットの有効活用を提案したら作者は本当に怒られました。

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