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妻は小説家、夫は主夫  作者: マリーミチコ
7/16

もう家事なんてしない!?

「あなたー、今日の花火大会、私はパスするわ」

「行かないのか?子供達も楽しみにしていたのに」

「昨日、徹夜だったの。今日もまだまだかかりそうだから、悪いけど3人で行ってきて。それから私は朝ごはんいらないから濃いめのコーヒーだけ淹れといて」

「わかったよ‥でもあまり無理しないで休んだほうがいいよ」

「そんなことできるならやってるわよ!とにかくコーヒー!濃いめよ!」

うわー朝から機嫌が悪いな。


コーヒーメーカーは僕も使っているけど、濃いめとはどんなふうに操作するんだ?

説明書を探しているがなかなか見つからない。

未央が起きてきた。

「パパ、大変!真菜ったらオネショしたみたいでお布団までビショビショよ」

「えー!真菜にとにかく着替えておくように言ってくれる?お布団はあとでみるから」

「わかった」

お姉ちゃんは頼りになるな。さ、早くコーヒー淹れないと珠美がうるさい。


「パパ!真菜が濡れて気持ち悪いからシャワーしてほしいって」

「わかったけどちょっと待たせて」

「未央、お腹すいてるから早く朝ごはん食べたいよ」

あーなんかやることが重なると忙しすぎてパニックになるな。


「あなた!コーヒーまだなの?もう自分でやるわよ!」

「ごめん。やり方がわからなくて‥」

「やり方見せるから一度で覚えなさいよ。

このボタンを長押しすると抽出量が選べるのよ。簡単でしょうが!」


えっと、次は真菜のシャワーだな。

「真菜ー、こっちにおいで。シャワーしようか」

「パパ、もっと早く来てほしかった。真菜のパジャマもお布団もビショビショ」

「あとで洗濯するから大丈夫だよ」


さぁ、子供達の朝食作りをしないと。

食パンをトースターで焼くとするか。

あれ?ヒーターの部分が赤くならない‥

タイマーのつまみを回しているし〝ジー″っていうタイマーの音も鳴っているのに‥

珠美が洗面所にいるから聞いてみよう。

「珠美ー、トースターの調子が悪いんだけど壊れてるのかな?」

「は?私が昨日使った時は異常なかったわよ。あっ!あなた、コンセント抜けてるじゃない。これじゃあパンが焼けないのは当然よね!」

またやってしまった‥


朝食後、真菜の布団を干し、洗濯洗濯。

掃除機をかけたり、トイレ掃除などなど。


「ちょっとあなたー、子供達の浴衣出しといてあげてよー。あと、コーヒーおかわり!」

「わかったよ」

「パパー、真菜の髪の毛くくって。おだんごにしてね」

「えーママにしてもらって。パパおだんごできないから」

「ママ忙しいんだからパパがやってよ。主夫なんでしょ?」

「パパー折り紙買って来て。工作用の折り紙なくなったの」

「今日じゃなくてもいいよね?」

「やだ。今やりたいの。もうすぐ夏休み終わっちゃうから早く仕上げたいのよ。パパはママよりヒマなんでしょー?」


「あー!うるさいうるさい!!」


ついに僕は爆発してしまった‥普段、滅多に怒らない僕だが、この時はキレてしまったのだ。

「僕だってやりたくて主夫やってるんじゃないんだよ!確かに珠美には頭が上がらないけど、一生懸命慣れない家事をこなしてるのにいつもお前達にバカにされる。もう主夫なんてやるものか!」


僕は我に返った。珠美の方を見ると、唖然とした顔で僕を見ている。子供達も驚いたようで真菜は泣き出してしまった。

「あ、いやその‥今のは」

僕は慌てて弁明しようとしたが珠美は無言で子供達と一緒に部屋に入ってしまった。

ハンっ!ちょっとは反省してみろってんだ。

僕はソファに寝転び、ダラダラ過ごしてやろうと思った。


気づくと夕方になっていた。僕はソファで昼寝をしていたようだ。

「しまった!真菜の布団や洗濯物を取り込まないと」

庭に出てみると布団は取り込まれて洗濯物もきちんとたたんでいた。珠美がやってくれたんだな。朝まで寝ないで執筆していたのに‥


2階の部屋から珠美と未央と真菜が浴衣姿で出てきた。

「あなた、花火大会行かない?」

「え?君は行かないんじゃなかったのか?」

「せっかくの花火大会よ。やっぱりみんなで行きましょう」

「う、うん。行こうか」

「パパも浴衣着てね」


僕達は花火大会会場へと向かった。なんだか気持ち悪いくらい珠美と子供達の態度が変わった。昼間の一件がまるでなかったかのように僕達の雰囲気はいい。


花火が上がり始め、珠美と子供達もテンションが上がった。楽しいお祭りを家族で過ごせてよかった。


家に帰って子供達が寝た後、珠美とリビングでくつろいでいた。

「あなた、明日から職探ししたらいいわよ」

突然、珠美が僕に言った。

「え?どうしたんだ?自分は忙しいから僕にしばらく主夫やれって言わなかった?」

「言ったけど、あなたはイヤイヤ家事をしてるんでしょ?そんなに嫌なら今すぐ働けばいいんじゃない?」

「昼間は言い過ぎたよ、ごめん」

「私だって夫には一家の大黒柱として社会に出ていてほしいし、子供達にも働くあなたの背中を見せてあげたい。だけど家事や育児も立派な仕事よ。報酬はないにしても学べることはたくさんあるわ。それをイヤイヤやってるとか言われたくなかったわ」

「本当にごめん‥」

「まぁ私もあなたのことをバカにするような言い回しをしてきたことは悪いと思うわ。

あなたが外で働くというなら私は止めないし好きにしたらいいわよ」

「う‥うん‥僕にはどんな仕事が合ってるかな?」

「そんなこと自分で考えなさいよ。まぁパソコンが苦手なんだったらそういうの使わない仕事を考えたら?それと、仕事が決まるまでは家のことやってもらうわよ」

「わかってるよ」

「あと、子供達には謝りなさいよ。昼間、未央はパパをこき使っちゃたから怒ってるのかなとか、真菜はオネショしたことがいけなかったのかなとか言ってたし。子供は親を頼るのは当たり前よ」

「そうだね。悪いと思ってる」


こうして僕は主夫業をしながら就職活動をすることにした。


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