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妻は小説家、夫は主夫  作者: マリーミチコ
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ホームベーカリーの羽根はお忘れなく

今日から未央も真菜も夏休みだ。夏休み中は子供達をプールに連れて行ったりお祭りに行ったり宿題をみてあげたりとやることはたくさんある。それに珠美が仕事に没頭できるように工夫しないと。


今日は珠美が前に言っていたホームベーカリーでパン作りをしようか。せっかく家にあるんだから使わないと。まず説明書を読んで勉強だ。料理は得意だがパン作りは今までやったことがなかったからな。

まずは普通の食パンから作ってみるか。

材料はあるから説明書の通りやれば簡単そうだな。

僕は材料をパンケースに入れ、メニューを選びスタートボタンを押した。出来上がるまでだいぶ時間があるけど放っておいていいから

本当にラクだな。


僕は子供達を連れて近くのプールに出かけることにした。

「パパ、さっき何作ってたの?」

「食パンだよ。明日の朝、食べるやつだよ」

「やったぁー。真菜、パン大好き」

「未央もー。ママもよく作ってくれてたね」

「プールから帰った頃に出来上がると思うよ」


プールで楽しく遊び、子供達は疲れたのか家に着くと2人とも昼寝をした。

僕はそろそろ出来上がるパンを待っていた。

〝ピーピーピー″

ホームベーカリーの蓋を開けてみた。

「あれ?出来ていない‥」

パンケースに粉やら水やらバターやら入れた材料が浮かんでいた。僕はホームベーカリーの説明書や付属品を置いている場所をもう一度見てみた。するとパンケースにはめ込むはずの羽根が残っていて、つまり羽根のつけ忘れってやつだった。僕は材料に対して申し訳なく、捨てることしかできなかった。


2階の仕事部屋から珠美の声が聞こえてきた。

「あなたー、パン作りしてくれてたのね。明日の朝、サンドイッチにしてよねー。楽しみだわー」

「うっ、うん」

僕は焦りながら考えた。食パンをもう一度作るには材料が足りない。そして考えたのは近所のパン屋に行き、食パンを買いに行くことだった。

急いでパン屋に出かけ、パン1斤を買ってきた。


子供達が昼寝から起きてきた。

「パパー、パンできたの?いい匂いがするよ」

「うっ、うん‥おいしそうだろ?明日の朝はサンドイッチだよ」

「やったぁー。早く食べたいねー」

子供達は気づいていないようだ。

「さぁ、もうすぐ夕飯だよ」


そして翌日。

「あら、おいしそうなサンドイッチね。見た目も上手に盛り付けたわね」

珠美が褒めてくれている。

「いただきまーす」

珠美はまず卵サンドを口にした。

「おいしいわねー。未央も真菜もたくさんいただきなさいねー」

「ホームベーカリーで焼いたパンもフワフワだしパパはサンドイッチも上手に作れるなんてすごいね。ハムサンドもおいしいよ」

「真菜はこのツナサンドも好き。今度ホームベーカリーでピザの生地作ってピザ作りしようね」

みんな全く気づいていないようだ。後ろめたいような気持ちだが、おいしいって言ってくれたのだからいいかな‥という気持ちで後片付けをしていた。


珠美がキッチンにやってきた。

「あなた、サンドイッチのパン、うちで焼いたパンじゃないでしょ?」

ゲッ!やっぱりバレてたのか?と僕はビクビクしながら珠美のほうを見た。

「そこの交差点の向こう側にあるパン屋さんで買ったパンでしょ?私は今までしょっちゅうあのパン屋さんで買い物してきたのよ。うちで焼くのと味の違いぐらいわかるわ!」

「ごごご、ごめん‥実は昨日、ホームベーカリーでパンケースに羽根をセットし忘れて、失敗したんだ‥子供達も楽しみにしていたしパンぐらい買ったものでもいいかなと思って‥失敗したこと、言い出せなかったんだ。ごめん‥」

「失敗したことよりも、買ってきたパンを自分が作ったかのように子供達に言うのはどうかと思うわ」

「そうだな。子供達に謝るよ」

「まぁ、今日のところはいいんじゃない?ホームベーカリーでいろいろパン作りもできるんだし、今度アレンジパン作って、あの子達を喜ばせてあげたら?」

「珠美‥ありがとう」

「それから、羽根をつけ忘れるような初歩的ミスをするなんて私はやったことないからわからないけど、あなたって相変わらずドジね」


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