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妻は小説家、夫は主夫  作者: マリーミチコ
3/16

ビデオカメラの初歩的ミス

長女のダンス発表会当日。

主夫はいつも通りに早起きして、家族の朝食作り。

「あなた、朝食は和食もいいけど私も子供達もパンが好きだからパンも用意してね。ホームベーカリーがあるからパン作りはラクよ」

「ホームベーカリーの使い方が難しそうなんだけど‥」

「何言ってるの?ホームベーカリーこそ便利でパン作りが簡単にできるものはないわよ。材料入れたら機械が食パンを作ってくれるんだもの。説明書読んで勉強しなさいよ。アレンジパンもできるようになると楽しいわよ〜」

「今度やってみるよ。ところで今日は9時頃出発でいいかな?」

「そうね。まだ少し時間あるから洗濯回しておいたら?」

「実はもうやってます。あとは仕上がるの待つだけ」

「あら。なかなかやるじゃない」

「ごちそうさまでした。未央は今から早めに準備するね」

「あなた、食洗使ってないの?もしかして手洗い?」

「あぁ。まだ使い方マスターしてないから」

「時間がもったいないわよ。せっかく自動で洗ってくれるのに。今日はもう私がやるわ。あなたは洗濯物を」


僕は洗濯を干した後、出発の準備をした。

ビデオカメラの撮り方も昨日真菜と練習したからバッチリだ。


会場に着いて、未央は参加者控え室に入り、珠美はゲスト席、僕と真菜は観客席に座った。

「えっとー、未央達のスクールの出番は3番目だな」

「パパ、ビデオカメラの準備大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ。昨日、真菜が練習付き合ってくれたからね」

5歳の娘にまで心配されるとは‥


いよいよ未央達が出てくる。僕は録画ボタンを押し、録画中のランプもついてるから大丈夫だ。

コミカルな曲が流れ出し、未央達が出てきた。

「パパ、お姉ちゃんの衣装はみんなより目立ってるね」

「あ、あぁ‥そうだね。見つけやすくていいね。お姉ちゃんのダンスはキレがあって上手だね」

僕は順調にビデオをまわしていたが、画面に〝充電してください″のメッセージが出てることに気づいた。

しまった!昨日、ビデオを撮る練習をしていたから最後に充電しておくのを忘れていた。

そういえば、バッテリーが少なくなってきてる表示がさっきから出てたような‥あぁどうかあと少しもってくれ‥僕は冷や汗をかきながらだんだん手も震えてきた。

「パパ?なんで手が震えてるの?」

「ごめん。だ、大丈夫だよ‥あー!?」

画面が消えてしまい、何も映らなくなった。

「パパ?どうしたの?ビデオ、失敗したの?」

僕は珠美と未央に怒られるのを覚悟しながらとにかく未央が一生懸命踊ってる姿を目に焼き付けておいた。

未央達が最後の決めポーズをし会場は拍手喝采となった。

「パパ、お姉ちゃんかっこよかったね。ビデオのことだけど真菜が壊しちゃって撮れなかったことにしてもいいよ」

「真菜ー、それはダメだよ。パパがちゃんと充電してこなかったから悪いんだ。お姉ちゃんにはパパが謝るから」

「でもママに何言われるかわからないよ?」

娘はなんて優しい子なんだ。5歳の子に気を遣わせてしまって本当に面目ない。


ダンス発表会が終わり、会場前で珠美と未央と合流し、珠美は未央をとても褒めていた。

そして未央は学校の友達と今日のダンスを後日視聴すると言いながら達成感を味わっていた。

帰りの車の中で、僕は言い出せなかった。

そして家に着いて、みんながリビングに集まった時、僕は口を開いた。

「ごめん!未央のダンス、途中までしか撮れなかったんだ。実は昨日、撮る練習をした後、充電するのを忘れたからバッテリー切れで‥」

僕は恐る恐る珠美の顔を見ると、ものすごい形相で僕を睨んでいた。未央は目に涙を溜めて、今にも泣き出しそうだった。

「パパを怒らないであげて」

真菜が大きな声で言った。

「パパは真菜とビデオを撮る練習を何回もしたんだよ。ママに怒られないようにお姉ちゃんをちゃんと撮りたいからだって」

真菜‥優しい子だ。ありがとう。僕は泣きそうになった。

「あなた、今度から充電は忘れずに!」

珍しく珠美は怒鳴らなかった。

「未央、学校のお友達には今度、生でダンスを披露してあげたらどうかしら?」

「ママー‥わかったよ‥」

「未央、本当にごめんな。でもパパは未央のキレのあるダンス、しっかり見てたから。練習の成果が出てよかったな」

「うん、ありがとう」


次女のひと声で丸く収まったビデオカメラ騒動。僕はビデオカメラの充電という大切な過程を身に付けた。


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