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妻は小説家、夫は主夫  作者: マリーミチコ
16/16

主夫、いよいよ旅立つ

月日は過ぎて、もうすぐ4月。

僕が調理師専門学校へ入学する時が近づいてきた。

主夫生活もあと少し‥いや、入学しても家事はこれまで通りやれることはやらないと。


「今日は気持ちのいい朝ね。桜ももうすぐ開花ね」

「おはよう珠美。暖かい朝だね」

「私は今日、久々に執筆は休もうと思うの。あなたはもうすぐ入学でしょ?今日は私が家事をやるからあなたは準備したり勉強していいわよ」

「助かるよ」


僕は朝食の後片付けから珠美に家事を託した。

未央と真菜は明日から春休み。真菜の送迎も珠美がやってくれることになった。


僕は入学のパンフレットを読もうとしたその時、キッチンから珠美の大きな声が聞こえた。

「あなた!このタッパーの蓋が曲がっているんだけど、もしかしていつも食洗で洗ってるの?」

「うん。食洗で洗ってるから曲がってしまったってこと?」

「そうよ。この蓋は食洗機対応じゃないわよ。しかも私のお気に入りの柄だったのに‥それからキッチンの排水口が汚いわ。マメに掃除しないとバイ菌だらけよ」

「ごめん‥」


珠美は真菜を幼稚園に送って行った。

そして15分後に帰って来た。

「ちょっとあなた、先生から聞いたんだけど

今日は持ち帰りの荷物がたくさんあるから大きな袋を持参させて下さいってプリントを前に渡していたけど持って来てないですねって言われたわ。今からまた持って行かなくちゃいけないのよ」

「しまった!忘れてた。僕が行くよ」

「もういいわよ!旦那に行かせたって思われたくないから」

「ごめん‥」


何か今日は嫌な予感‥


珠美が幼稚園から帰って来た。

鼻歌を歌いながら洗濯物を干している。少し機嫌が良くなったのか。

しかし、鼻歌は止まった。

「あなた!」

キター!

「庭がクモの巣だらけよ。気持ち悪いわ。暖かくなってきたから気をつけないと。私がクモが嫌いなの知ってるわよね?退治してよね」

「わかった」


僕はクモ退治とクモの巣をとっている間、珠美は掃除機をかけていた。

「あなた!掃除機のダストボックスはたまに洗ってる?」

「いや‥洗ったことない。溜まったゴミはマメに捨てているけど」

「たまには洗わないと汚いわよ」


次はトイレ掃除をしている。今度は何のダメ出しかな。

とは思ったが、トイレについては何も言われなかった。僕は毎日のようにトイレ掃除をし、トイレはいつも自信たっぷりなぐらいピカピカにしているから。

「あなた、トイレットペーパーの買い置きがないわよ」

「あ、忘れてた。あとで買い物に出るよ」

「今日じゃなくていいわ。明日はいつも行くドラッグストアがトイレットペーパーの特売日だから明日にしてよね」

やっぱりトイレについてもダメ出し。


今度はアイロンやってる。でも僕は普段アイロンは子供達のハンカチぐらいしかやらないからな。今珠美は自分のブラウスをアイロンがけしてるんだな。

「あなた!アイロン台のカバーがボロボロじゃない。ほつれてヨレヨレよ。こんな状態で使っていたの?」

「うん‥新しいの買おうか?」

「そうね。アイロン台ごと買い替えなくても替えカバーだけで売っているから節約できるわよ。あなた学生になるんだから学費もいるし、節約も心がけないとね」

「そうだね‥」


未央が修了式を終えて学校から帰って来た。

「未央おかえり。1年間よく頑張ったな。1日も欠席していないし」

「うん。春休みだしもうすぐお花見にも行こうね」

「そうだな。今日のお昼ごはんはママが作ってくれてるよ」

「やった。お腹すいたー」


「あなた達、お昼食べましょ」

「オムライスだね。このふわっとした卵、上手じゃないか、珠美」

「あら、ありがとう。オムライスは私の得意料理よ。ふわふわ感はあなたより上手じゃなくって?」

クソー!今日は何かいろいろ言われるよなー。


午後になり、真菜を迎えに珠美が行った。


大荷物を持って帰って来た。

「こんなに多いならあなたに行ってもらえばよかったわ」

「気づかなくてごめん」

「パパー見てよコレ。真菜が描いた絵とか工作」

「うん。1年間でこんなにたくさんすごいねー上手じゃないか」


「さ、今からおやつ作りをするわよ。未央、真菜やるのよね?昨日言ってたでしょ?」

「うん。何作るの?」

「イチゴのムースにしましょうか」

「やったー」

「未央はイチゴのヘタをとっておいてね。あら?ゼラチンがないわ‥確かストックがまだあったはずなんだけど‥あなた知らない?」

「ゼラチン?先月のバレンタインの時、チョコプリン作ってゼラチン使ったよ」

「もしかして全部?」

「うーん、どうだったかな‥」

「ゼラチンないの?真菜、イチゴムース食べたいよ」

「仕方ないわね。あなた、買ってきてちょうだい」

「えー!わかったよ‥」


僕はスーパーへゼラチンを買いに走った。

今日はせっかく家事をしなくていい日なんだけど、いろいろ小言も言われるし結局ゆっくりできないな。


「ただいまー買ってきたよ」

「あら、あなたメールに気づかなかった?出かけてすぐにゼラチンが見つかったのよ。食品庫の奥に新しいのがあったの。すぐにメールしたんだけどね」

「電話にしてよ」

「あなたの携帯古すぎて着信音が小さい音しか出ないし気づかないと思ったからメールにしたのよ。早く新しいの買えば?」

そろそろ新しい携帯買おうかな。思い切ってスマホにしようか。


珠美と子供達はお菓子作りをし、僕の分も用意してくれた。

「おいしいね。ママはお菓子作りが上手だね」

「ありがとう。パパが学校に行くようになったら習ってきた料理やお菓子を家でも作ってもらいましょ」

「未央、楽しみー」

「真菜もー」

ハハ‥


さ、夕飯まで今度こそ自分の時間をとるぞ。

入学する時の準備物はだいたいできてるな。


「あなたー、入学する時に着ていくスーツのワイシャツ、洗濯しておいたわよ。仕事辞めてからしばらく着てなかったでしょ?洗濯し直しておいたから。アイロンもね」

「珠美、ありがとう。気が利くね」

「当たり前でしょ?あなたより私の方が主婦歴長いのよ。いろいろ気づくことは経験からよ」

「そうだね。僕なんてまだまだだよ」

「あなたの苦手なことも積み重ねよ。家電だって随分扱うの上手くなったじゃない?初めは洗濯機の使い方すらわからなかったんだし」

「ハハ‥」

「これからは自分の好きなこと、しっかり学んで立派なシェフになってね。子供達も応援してるわよ」

「ありがとう。君のような頼もしくて才能ある小説家が僕の妻で本当によかった」

「ところであなた、入学したら調理実習の時にオーブンとかの使い方大丈夫?うちのとは全然違うだろうし、まずそこからマスターしなきゃね」

「そ、そうだね‥なんかすごく緊張してきた」


「さ、夕飯よ。みんなで食べましょう」


最後までお読みいただきありがとうございました。実は私、家電を扱うのが苦手でして実際やってしまった失敗や家事を一部書きました。道夫のモデルは私のようなもんです。

あたたかみ溢れる?ファミリードラマを書きました。

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