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妻は小説家、夫は主夫  作者: マリーミチコ
10/16

運動会は大仕事

今日は幼稚園の保護者会の日だ。

秋の運動会についての内容らしい。

珠美は原稿の締切が迫っているから僕が参加することになった。



「毎年ですが、運動会は保護者の皆様にもお手伝いしていただくことになります。会場の飾り付けやテントを張ったり、お土産競争のプレゼントをラッピングしたり、BGMや踊りの曲を流したり、リレーの時のゴールテープを持っていただいたりご協力お願いします。

できれば去年やっていない方にお願いしたいのですが」


「ウチは去年、会場の飾り付けをしたのよ」

隣に座っていた結衣ちゃんのママが僕に言ってきた。

「ウチもテントを張るの手伝ったわ。パパがやったんだけどね」

海斗くんのママも言ってきた。

そういえば、ウチは去年何も担当しなかったかな。

「ねぇ、真菜ちゃんのパパは今年どう?やっといた方がいいんじゃない?来年やることになったらせっかくの最後の運動会は忙しくて子供の出番もまともに見れないかもしれないわよ」

「え‥そうなんですか‥じゃあ今年やっておこうかな」


そんなこんなで僕が担当になったのはBGMをかける係になった。


家に帰って珠美に話すと驚いていた。

「あなた、BGMをかけるのにCDプレーヤーを操作しないといけないのよ?大丈夫?」

「え?そうなのか‥でも先生も手伝ってくれるよね?」

「手伝ってはくれるけど先生も忙しいからずっとついててくれるかはわからないわよ」

「じゃあ君にやってもらおうかな?」

「何言ってるの。私はビデオ撮ったり親子競技のダンスもするのよ。真菜も親子ダンスは私の方がいいって言ってるし。だいたい何でBGM係を選んだのよ?」

「くじ引きだったから仕方ないよ‥」

「くじ運ないわね。よりによって苦手な機械操作に当たるなんて」


僕は事前に山下先生にBGMを流すやり方を特別に教えてもらうことにした。


「流す曲は順番に書いてますしCDは編集してますから簡単ですよ。プレーヤーの操作はこのボタンを押せば曲がかかります。止めるのはこのボタン。家庭用の一般的なプレーヤーと同じような感じですので難しい操作ではないですよ」

「そ、そうなんですね‥一見簡単そうですけどボタンがたくさんあって間違わないかな」

「当日は職員も近くにいますし、そんなに心配なさらなくても‥」

「そ、そうですよね」



「あなた、やり方教わってきたんでしょ?バッチリかしら?」

「まぁ‥先生は簡単だから大丈夫って言ってるけど、なんか自信ないな‥」

「ちょっとやめてよ。恥をかきたくないからちゃんとやってよね。こっちもダンスを覚えてるところだからお互い頑張りましょ」



そして幼稚園の運動会当日がやってきた。

僕は早起きをしてみんなのお弁当作りをした。

「パパー、今日は楽しみだね。真菜はリレーと借り物競争と親子ダンスに出るんだよ」

「プログラムで確認してるから知ってるよ。未央も兄弟枠の障害物競争に出るしね」

「今日はビデオ撮るの?」

「うん。ママが撮るよ。親子ダンスは未央が撮ってくれるから」

「パパは放送席にいるんだよね。頑張ってね」

あーなんか緊張してきた。お腹痛い‥


僕はもう一度プレーヤーの操作の確認をしておきたいから真菜達よりもだいぶ早くに幼稚園へ行った。


「先生、今日はよろしくお願いします。できればずっと隣にいてくださいね」

「? わかりました。早くから来られてますけどすごく張り切っているんですね」

さすがに機械音痴とは言えなかった。


真菜が登園し、珠美と未央も観客席に座った。続々と園児や保護者、おじいちゃんおばあちゃんもやって来た。


ドキドキの運動会が始まる。

入場の曲をながさないと‥CDはすでにセットされてるから‥えっとー再生ボタン再生ボタン。僕の手が震えている。

隣に座っている山下先生がすかさず再生ボタンを押してくれた。曲が無事ながれだし、園児達が入場してきた。

「大丈夫ですか?再生ボタンはコレですよ。緊張なさらなくてもいいです。今日は楽しみましょう」

先生のひと声で僕は少し緊張が解けたような気がした。


始めに園長先生のお話があるので僕は入場曲を止めた。

そのあと、園児達が体操をするのに曲をながした。

操作をするのが少し慣れてきた感じがした。

次は年中組のリレーだな。真菜が出るぞ。

僕は曲をながし、真菜のチームの走りを見ていた。放送席は前に誰も座っていないしトラックの真ん前だから、ある意味特等席だな。もうすぐ真菜の番だ。

よし、上手くバトンをもらった。

「ガンバレー!」僕は放送席から真菜を応援していた。真菜のチームは1位。僕もテンションが上がり拍手を送っていたらリレーの曲を止めるのを忘れていた。山下先生が席をはずしていたので僕はすぐに曲を止めたが、トラックを挟んだ向かいに座っている珠美が僕の方を見て苦笑いをしているのに気づいた。

危ない危ない‥リレーに見入ってしまった。


その後のプログラムは順調に曲をながしては止め、未央の障害物競争も真菜の借り物競争も上手くいった。



お昼休憩の時間。

「外で食べるお弁当おいしいわね。

あなた、まぁまぁ順調そうでよかったわね」

「まぁね‥すぐに慣れたよ」

「真菜、借り物競争で園長先生って書いた紙引いたんだ。ビックリだったよ」

「まるで借り人競争ね。未央の障害物競争見てくれてた?」

「見てたよ。未央はスポーツ得意だし上手にこなしていたね」

「ママと真菜の親子ダンスもうすぐだよ」

「ビデオは未央に任せてね。パパより上手く撮るからね」

ハハ‥


午後からのプログラムが始まる。

僕は曲目を再確認し、放送席でスタンバイしていた。

山下先生も隣に座り準備していた時、年少組の男の子が鼻血を出したから、放送席の隣の救護テントにやってきていた。そのあと年長組の女の子と男の子がお昼休憩中にはしゃいでいて、ぶつかって擦りむいて手当をしてもらいに同じく救護テントに来た。

山下先生が手当ての応援に行くことになり、少し席をはずすと言って僕は放送席で一人になった。

僕は若干不安な気持ちになった。


年中組の親子ダンスがまもなく始まるアナウンスがかかり、僕は曲を流そうとした時、焦って手が再生ボタンではなくCD取り出しボタンを押してしまった。CDが外に出てきて、慌てて入れ直しをして再生すると、最初の入場曲がかかってしまい、僕はパニックになった。急いで曲目の順番を確認して再生ボタンを押したが、ひとつ前の競技の曲を流してしまった。山下先生がすぐに駆けつけてくれて、すぐに親子ダンスの曲がかかったが観客席は少しざわついていた。


「山下先生、すみません。曲を間違えてしまいました」

「私こそ席をはずしてしまってすみません。間違えたこと気にしないでくださいね。大丈夫ですから」


僕は冷や汗をかいて喉がカラカラになった。

その後は山下先生と一緒にやり終え、運動会の閉会式を迎えた。


家に帰る途中、子供達は何も言っていなかったが、珠美は僕に「おつかれさま」とだけ言ってくれた。


僕は夕飯の支度をしている時も今日のミスを引きずっていた。

そんななか、リビングでは今日は撮ったビデオを珠美と子供達が見ていた。

クスクスと笑い声が聞こえ、僕のミスを笑っているのかと思ったが、親子ダンスで珠美が全く踊れていなかったことを子供達が笑っていた。

「私、運動神経ないのよね。唯一苦手なことは運動」


そういえば、僕は曲を流すのを間違えたことで放心状態になり、親子ダンスをまともに見ていなかった。

「君にも苦手なことがあったんだね」

僕は珠美の下手なダンスに笑ってしまった。

「私のこと笑ってるけど、あなたのこの顔!自分で見てみなさいよ。未央が撮ってくれてるわよ」

「うわーパパの顔、汗だくで真っ赤っかだね」

「未央はビデオ撮るの上手だったでしょ?親子ダンスもパパもちゃんと撮れてるんだから」

ハハ‥


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