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Red Zone

作者: ReKu

クソみたいな短編小説

ピピピピ!ピピピピ!ピピpバシィ!

安眠を妨げる目覚まし時計を勢い良く叩きアラームを止める。

どうやらもう起きて仕事に行く時間のようだ。

眠たい目を擦りながら体を起こす。

寒い・・・。

体を震わせながらもう一度布団に潜り込みたいのを我慢して立ち上がる。

充電していたスマホを鞄に投げ込んだ後、鞄を掴んで台所へ向かう。

台所では母さんが今日の弁当を作ってくれていた。


「おはよ」


母さんに挨拶をする。


「おはよう。ごめんな、アタシ体がだるいねん。もう一回寝るわ」


顔色の少し悪い母さんに おぅ と適当に返事をし身支度をする。

恐らく持病のメニエルだろう。

着替えながらも時折母さんが用意してくれていた緑茶を飲む。

電源を入れたままのラジオからは聞きなれた音楽が聞こえる。

土曜日のこの時間に放送される耳で聞く短編小説というヤツだ。

たまにアナウンサーが短編小説を朗読するのだがたまに冒頭部分から引き込まれる作品がある。

のんびり聞いていると危うく遅刻しそうになることだってある。

今日の作品は女性がひたすら話している内容だった。

ただ話しているだけなら独り言を呟く怪しい人物だが、電話で話している女性の横で会話を聞いている、というものだ。

この形ならなんら違和感を感じない。声しか聞こえない相手に説明口調で話をするのもいたって普通だろう。


なるほど、こういうのもあるのか・・・。


そんなことを考えながら着替え終わり時計を見る。

いつも家を出ている時間より少し遅い。

これは拙いな、と思いながらもすこしは何か腹に入れて起きだかった。

テーブルの上には弁当に入らなかったお昼のおかずが小皿の上に置いてあった。

卵焼きとチキンである。

迷わずチキンを手に取りかぶりつく。

一口、二口とかぶりついたところで、ふと気づいた。

火が完全に通っていないのか、心なしかまだ赤い部分が残っている気がしたのだ。


拙かったかな・・・。


そう思い最後まで食べるのを止めて皿に戻す。

汚い、とは思ったのだが棄てるのももったいない。

そうこうしているうちにも時間が進んでいる。

このままでは遅刻してしまう、私は慌てて家を飛び出した。


 全力で自転車を漕ぎ、最寄駅のホームに辿り着いたと同時に電車がホームに入ってくる。


普通か・・・こりゃあ一本逃したな・・・。

いつも乗っている電車は準急だ。

しかし、乗り過ごしたとはいえまだ遅刻には程遠い。

普通電車に乗り込み、電車に揺られてスマホで暇を潰す。

暇を潰していると、唐突にキリリとお腹に痛みが走る。

とはいえそんなに気にするほどではなかったのでそのまま暇を潰す。

一駅、また一駅と通過するたびに少しずつだが痛みは酷くなっていく。


チキンだな


そう確信して一人で納得したころには電車を乗り換える駅に着いていた。


ここで用を済ませておくか?・・・いや、職場の最寄についてからにしよう


土地柄あまりここの駅のトイレは使いたくはない。

よいとはいえない、むしろ悪い方だからだ。

当然どんな人がトイレを使っているかもわからない。

いや、わからないのはどこのトイレも同じではあるのだが気持ちの問題である。

悩んでいるうちに痛みが少し和らぐ。


いけるだろう


なんの根拠もなくそう判断して駅の改札をでて地下鉄へと向かう。

階段を降りていくうちに、先ほどまでよりもキツイ腹痛が襲ってきた。


アカン!


私は小走りに階段を駆け下りた。

四の五の言っていられない、地下鉄のトイレを使おう。

地下鉄の改札を抜ければすぐトイレがある、改札越しにでも見える場所だ。

視線を迷うことなく其方へと向ける。


『改装工事中 立ち入り禁止』


アカン!!


Uターンをして階段を上る。

さっきの駅で大人しくトイレに入っておけばよかったのだ。

私のお腹がグルルと唸る。

もはや走る事すら儘ならない。

先ほど出たばかりの改札を通り、トイレに向かう。

トイレに入り、個室の前に立ち左から右へと個室を見る。

もう一度確認するように右から左へと視線を流す。

まさか、と思い念を押すようにゆっくりと一つずつ個室のドアをみる。


全ての個室がレッドゾーン。

私のお腹もレッドゾーン。


再度、駅をでてどこかでトイレを借りるか?

いやダメだ、借りれる場所がすぐに思い浮かばない。

私の後ろで個室が空くのを待つ人が並ぶ。

下手に動けば、さらに待たなければならなくなる。

私は少しでも気を紛らわせるために、スマホを取り出した。

先ほど暇潰していたアプリとは違うアプリを起動させる。

なにもしないよりは腹痛を気にしなくていいだろう。

アプリが起動するとメッセージが表示された。


『アップデートがあります。更新してください』


迷わず はい を選択し更新サイトへと移動する。

だが、サイトの項目にはアンインストールかアプリを開くしか表示されていなかった。

いつもであればアプリを開く項目が更新に変わっているのだが・・・。

サイトページを下に下ろしていくとユーザーからの苦情が表示される。


『更新できません』


チッ、マンクルポ!


ずさんな運営に対する皮肉も込めて心の中で呟く。

苛立ちが膨らむと一緒に腹痛も大きくなる。

頭の中では個室のドアをノックしまくる自分の姿。

その様子はさながらハンマー状態。


漏らす恥を避ける為、常識外れの恥知らずな行為をするってこりゃもうわかんねぇな・・・。


頭の中と背筋がひやりとする。

限界か?

そう思ったとき一つの個室のドアが開く。

前の使用者が出ると同時に素早く走らず個室に入り込む。

ドアのロックをかけると、慌ててベルトを緩め、ズボンとパンツをずらし、洋式便座に座り込む。

私の腹部で唸り暴れる獣が解き放たれる。

安堵のため息をつくと個室のドアの下の方に書かれている落書きが目に入る。


『パチンコは人を駄目(ダ■メ)にする』


わざわざルビまで降ってある。

書き間違えたのかマジックで黒く塗りつぶされた部分ある。

間違えるなよ、と鼻で笑った時にふと気づいた。

この落書きはトイレの床から10cmほどのところにある。

一体どんな体勢で書いたのだろうか・・・?

そもそもコレを欠いた人間はなにが切っ掛けで、どういう気持ちでこれを書いたのだろう?

一難さればのんびりしたものである。

だが、次を待つ人が居ることを思い出し慌てて個室を出る準備をする。

ドアを開ければ、空きまちの人がやはり待っていた。

目もあわせず、顔も見ず、会釈もせずに水道へ向かう。


やはりチキンだな、怪しいと思ったら食べるのやめないとな・・・。


手を洗いながらそんなことを私は考えていた。

時間はまだ余裕がある、遅刻はしなくてすみそうだ。

自動販売機でコーヒーを買い、飲みながら私はのんびりと地下鉄へと歩いていった。


弁当のおかずが例のチキンであることなど頭には微塵も残っていなかった。

当然のことながら昼食後、獣は再び牙をむいたのだった。

ガンマ、ホーム、サイクル、コーポ


実際の出来事を小説風にしただけでごわす

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